プロだって間違う

個人が自分の判断で投資することの問題点について考えてみましょう。

株式にしてもFXにしても、自分で今後の相場動向などを考え、「これだ!」と思うものに投資をしていきます。つまり自分なりに、何らかの相場見通しを考えるわけですが、なぜそれが正しいと自信を持って言えるのか、それが私には不思議でなりません。

たとえば、国内株式市場に上場されている銘柄の数は、2017年10月2日時点で3566銘柄もあります。仮に銘柄に投資できたとしても、上場全銘柄数は3566銘柄もありますから、投資できる銘柄数はその0.28%でしかありません。そのわずか0.28%の中で、将来有望な銘柄を探さなければならない、ということなのです。

たったの0.28%でも、調べに調べ尽くして銘柄を選んでいる個人は、果たしてどのくらいいるでしょうか。多くの人は、直近の業績推移を見て、チャートで株価の位置を確認したら、あとは「エイヤ!」で買っているだけだと思います。

でも、株式投資の銘柄選びは、そんなに簡単なものではありません。

個人がインターネットなどで入手できる企業業績は、せいぜい過去3期程度のものであり、将来予想についても来期見通し程度ですが、プロの投資家は過去期程度の業績は分析していますし、将来の業績見通しも来期だけでなく、3期、5期先まで予想しています。

しかも、企業経営者や財務担当者に直接インタビューを行い、さまざまな観点から企業動向を分析しています。

それだけの努力を積み重ねても、思ったように株価が上がらないこともあるのですから、株式の銘柄選びがいかに難しいか、おわかりいただけると思います。

個人が景気や株価の将来予測をしても、絶対といってよいほど当たりません。当たったとしても、それはただのまぐれです。

仕事で成果を上げるべき時に、当たるかどうかもわからない分析に時間を費やすのではなく、もっと大事なことに時間を使ったほうがよいのではないでしょうか。

特に40代はキャリアにとっても、最後の頑張り時です。50代になったら自分の今後が見えてきてしまいます。今は仕事に努力して、資産運用は別のものでやるというのが賢い考え方だと思います。

そういう前提のもと、個人が資産運用で何をするべきかを考えるのが、本当に正しい長期的な資産形成につながるのです。
 

(画像=Webサイトより ※クリックするとAmazonに飛びます)

中野晴啓(なかのはるひろ)
セゾン投信代表取締役社長。1987年明治大学商学部卒業、クレディセゾン入社。2006年セゾン投信を設立。07年4月より現職。「R&Iファンド大賞」最優秀ファンド賞を4年連続受賞。公益財団法人セゾン文化財団理事、一般社団法人投信協会理事。著書に『預金バカ』『退職金バカ』(講談社)、『投資信託はこの9本から選びなさい』(ダイヤモンド社)他多数。

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