50代以降は「2人に1人はがんになる」と言われる昨今、自身の末期がん闘病生活をリアルタイムで配信する患者が増えている。余命宣告を受け、命の綱渡りを続けながら表現活動をする人々のモチベーションや本音に迫った。
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最初の夫が白血病で他界、その後自身もがんに
末期がんになったらすべてを諦め、静かに余生を送る――ひと昔前までは、誰もがそんな死生観を受け入れていた。
しかし昨今、余命宣告を受けたにもかかわらず自身の病状や日々の生活、治療内容などについて精力的に動画配信を続ける「末期がん配信者」が増えてきた。凄絶な闘病生活が映し出され、途中で亡くなってしまう例も少なくない。当事者たちは、どんな思いで発信しているのか。
さくらさんとAさん。Aさんは余命10か月宣告後、今年で2年目
さくらさんと夫のAさんは、夫婦ともにがんを患っている。
最初に発症したのはさくらさん。26歳の時、最初の夫が白血病を発症し、3年間にわたる看病の末に見送った後にAさんと再婚。
ようやく普通の生活を送れると思った矢先に卵巣がんが発覚した。周囲に同じ病気で悩む人もおらず、孤独を感じたことがYouTubeを始めるきっかけになった。
「とにかく同じ病気の人と話がしたくて。がんサバイバー(闘病者)の集まりに参加したこともありましたね」
今度は夫のAさんもがんを発症
卵巣と子宮の全摘出手術後、定期的に抗がん剤治療を行っているが、現在は肺がんも発症し、併発疾患のため、仕事はドクターストップがかかっている。
週の半分は自宅ソファの上で過ごす生活だが、「不安になることも多々あるけれど、動画の編集をしていると現実逃避できるし、生配信のために準備したり、視聴者さんとコミュニケーションを取ることで生活にハリが出る。結局自己満足なのかもしれませんが(笑)」と話す。
ところが’20年の秋、今度は夫のAさんもがんを発症。しかも、皮膚がんの悪性黒色腫が脊髄内に発症するという希少がんで、翌年には腫瘍が増大し、車椅子生活に。そんなAさんもまた、余命10か月の宣告を受けてからYouTubeでの発信を始めた。
「強い思いがあるわけではないんです。妻がやっていたからということと、私のがんは非常に珍しい症例なので、日常を発信し続けることに資料的な価値も含めて意味があるのではないかというだけです」
それでも生活に変化はある。
「以前のようにグチグチと悪いことを考える時間がかなり減りました。妻と同じく、現実逃避なのでしょうけどね」