人は年齢を重ねるほど、意識しても変われないもの

おおしま:どこまでいっても他人を変えることはできない。これは分かっていても、親に対して「受け止めてもらいたい」「褒めてもらいたい」「分かってもらいたい」と期待する気持ちになったりもします。距離が近いからこそ思ってしまうことだと思いますが、こうした気持ちを抱くたびに、自分もいい大人になのに……と恥ずかしく感じるときもあります。

「結婚は?子どもは?」親がしつこく聞く本当の理由。怒る前に伝えたい“ひと言”
(画像=『女子SPA!』より引用)

林:親子は距離が近い分、「変わってほしい」という期待をしがちなんですよね。だから僕は、意識して子どもには関わりすぎないようにしています。 僕には30代の娘がいるんですが、再婚した妻の子どもで、僕は中学生頃から子育てに参加しています。中学生頃からの関係なので、そんなに子育てには参加していないはずなのに、それでもいまだに自分が娘をコントロールしてしまいそうになるときがあります。 本当はこうしてほしい、本当はこうあってほしいと思いますが、相手も大人ですから意に介さないことは当然断られます。その度に、相手は変わらないし、変えたいなんて思うことが間違いだなって立ち返ります。

おおしま:たしかに、「自分が変わると他人が変わる」とも言いますしね。まだまだ私はそこに感情が入って上手くできない時はありますが。

林:そもそも、人は年齢を重ねるほど、意識しても変われないものです。思うんですが、相手の行為や態度に問題があるなら指摘する意味もあるとは思いますが、そもそも親よりもパートナーや深い友人の方が、そういう大切な指摘はするべきなのではと思います。 親子ってすごく密接した関係と思いがちですが、実は死ぬまで一緒ではありません。だからこそ、一生一緒にいる可能性の高いパートナーとか、一生の友達との関係を気にしたほうが良いと思います。

親は“自分の子育てが正しかったか”を確認したい

おおしま:ここまで、親子関係の心地よいカタチについて考えてきましたが、林さんの達観した感じに、自分がまだまだ幼いなと痛感します。でも、気持ちは未消化でも感謝を行為で示すというのは、今後も意識していけたらと思います。

「結婚は?子どもは?」親がしつこく聞く本当の理由。怒る前に伝えたい“ひと言”
(画像=『女子SPA!』より引用)

林:行為でひとつ気をつけてほしい話があるのですが、よく「親孝行のために旅行に連れて行く」とかを頑張る方もいると思います。それも素晴らしいのですが、僕自身はそういう特別なイベントを企画するよりも、親側の気持ちを代弁すると、もっとしてほしいことがあるなって思います。

それは、「親はいつだって安心したい」という気持ちを満たしてあげることです。親がよく子どもに対して「いい人はいないの? 結婚はどうなの?」みたいなハラスメントをしがちですが、親側の心理を言うと、“自分の子育てが正しかったか”を確認して安心したいんです。 親としては、子どもが今幸せか常に不安がある。だから自分の中での普通の幸せのカタチ、つまり結婚して子どもを持つみたいなものを、求めてしまうんです。

だから「私は今幸せだよ」ということを、子から親に伝えてほしいんです。「仕事が楽しいから幸せ」「結婚は考えてないけど幸せ」でもいいんです。これが行為よりもなによりも、親が安心して喜ぶ親孝行です。

おおしま:よく親は子どもが幸せなだけで満足とかって言いますが、そういう心理があるんですね。ちょうど親の誕生日が近いので、ご飯をご馳走しようか何かプレゼントを渡そうかって、妹と少し前に話していたばっかりです。

林:それももちろん良いですよ。でも、子どもの考える最適解は親の思う最適解じゃないことも多いですからね。それよりも今幸せだよーってメッセージを送ってくれた方がいいです。僕自身は、最近娘が自宅で在宅勤務をしているんですが、何よりもホッとします。ちゃんと働いているんだーって。こういうことで良いんです。

「結婚は?子どもは?」親がしつこく聞く本当の理由。怒る前に伝えたい“ひと言”
(画像=『女子SPA!』より引用)

【第1回記事】⇒友達づくりの上手な人が“やらないこと”とは。バーのマスターに聞いて納得 【第2回記事】⇒結婚や出産で、女友達とギクシャク!男女で違う「友達と疎遠になる理由」

【林伸次さん】 渋谷のワインバー「BAR BOSSA(バールボッサ)」店主。中古レコード店、ブラジル料理店、ショット・バーで働いた後、1997年「BAR BOSSA」をオープン。バーを経営する傍ら著作家としても活躍し、cakes「ワイングラスの向こう側」など多数の連載をもつ。著書に『恋はいつもなにげなく始まってなにげなく終わる。』(幻冬舎)など。

<取材・文/おおしまりえ 写真/林紘輝> おおしまりえ 水商売やプロ雀士、素人モデルなどで、のべ1万人以上の男性を接客。現在は雑食系恋愛ジャーナリストとして年間100本以上恋愛コラムを執筆中。Twitter:@utena0518

提供・女子SPA!



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