【BARのマスターに聞く!第3回】
こんにちは、コラムニストのおおしまりえです。大人になって、自立したり家庭を持ったりすると、「実の親との関係」も変わっていきますよね。
昔から関係良好な人であれば悩むことはありませんが、近年は“毒親”という言葉もよく聞かれるように、親子関係に大なり小なりの歪みを感じている人も少なくありません。自分の親を“毒”とまでは言いたくないけれど、年齢を重ねると大きくなる居心地の悪さ。適度な距離感で関係を改善していくにはどうしたら良いのでしょう。
今回取材した、渋谷のワインバー「BAR BOSSA(バールボッサ)」の店主・林伸次さん
前回記事に続き、渋谷のワインバー「BAR BOSSA(バールボッサ)」の店主であり、作家活動もされているマスターの林伸次さんに取材。“バーのマスターに人生相談”しながら答えを探ってみました。
【第1回記事】⇒友達づくりの上手な人が“やらないこと”とは。バーのマスターに聞いて納得 【第2回記事】⇒結婚や出産で、女友達とギクシャク!男女で違う「友達と疎遠になる理由」
親ともし同級生だったら友達になれたか?
おおしま:私自身がそうなのですが、大人になって自分が確立されていくと「ウチの親って変だったよな」という違和感がどんどん大きくなっていくんです。時には「なんであの時、あんな事されたんだろう」って、ちょっと思い出しイライラ、モヤモヤすることもあります。 根に持ちすぎかもしれませんが、自分の年齢と共に親への気持ちが良くも悪くもアップデートされるのって、自然なことなのでしょうか。
林:そうですね、自然なことだと思います。あと、親との付き合いで僕自身の考えを言うと「親子関係は基本的に上手くいかない」と思っています。
前提として、親子関係は仲良くならなくていいんですよ。たまたま血が繋がっているだけで、仲良くなれるかは別問題。多くの人が、親ともし同級生だったら絶対友達になってないタイプだって思ってるはずです。 ただ、大人になったとき「あの時こんなにお金をかけてくれたんだなーありがとう」っていうくらい、感謝できたらいいと思っています。「生んでくれてありがとう! あなたの子で良かった」と心から思えないからといって、苦しむ必要はないと思います。
おおしま:それを聞いて安心しました。私は親への感謝と消化不良の気持ちが混在している状態なので。時間をかけてでも良い関係を築きたいから、自分の気持ちを1つずつ消化していこうって個人的には決めているんですけど、やっぱり親と向き合い直すと、フラットに考えられない時も多くて……。
「親をちょっとだけ安心させる」という親孝行
筆者・おおしまりえ
林:無理して感謝をしたり、親孝行をしたりする必要もないと思います。ただ僕としては「親を安心させる」という親孝行は、大人になったらちょっと意識できるといいなと思っています。 例えば僕の場合、出版をしたら親にはこんな本を出したよって連絡をしますし、メディアに出たときも連絡します。これって「自分の子どもが東京でお店を出して、本も出してるんだ!」っていう情報を伝えて、安心してもらうためにやっています。
以前知人の有名シェフから聞いた話なんですけど、彼のお店は年に1回だけテレビ出演をするそうです。人気店なのでメディアに出なくても経営は回りますし、テレビ出演は準備の手間や時間もかかります。それでも出るのはなぜかというと、スタッフの親御さんに「ウチの子はテレビに出るような有名店で働いているんだ、よかった!」と、安心してもらうためだそうです。親御さんを安心させるって大事だなって思って、僕も意識的にやっています。
おおしま:なるほど! 私は以前、ある仕事で親のよく知る芸能人へ取材したのでそのことを親に伝えたんですが、全くリアクションをされませんでした。自分に興味がないのかなと思って、それ以来仕事の話は伝えていなかったのですが、でもその一報で安心はさせられたのかもしれないですね。精神的な感謝のボールを投げるって、まさに大人の対応って感じです。