奈良公園界隈は、常にたくさんの観光客でにぎわっています。しかし観光客が意外と足を向けないのが、大仏さんの背後にある地域。北の方へ向かっていくと、「般若寺」という小さなお寺があります。今回は秋になると一面のコスモスに埋め尽くされる、通称「コスモス寺」をご紹介します。
コスモス寺「般若寺」とは
「般若寺」は、奈良公園から少し外れた場所にポツンとある、知る人ぞ知るお寺です。奈良では古い建物自体珍しくないのかもしれませんが、こちらのお寺もかなりの古刹です。735年の天平時代、平城京の鬼門封じとして聖武天皇の命により創建。「般若寺」と名付けられました。
鬼門封じの役目ということは、京都でいう比叡山延暦寺のようなものでしょうか。そのために、ぽつんと離れた場所に建っているのかもしれません。
現代の本堂は、江戸時代に再建されたもの
かつて学僧が千人いたということから、創建当時はかなりの広さがあったと思われます。平安時代に一度戦乱の焼き討ちにあい焼失し、その後少しずつ再建されていったようです。現代の本堂は戦国時代以後の建物で、江戸時代に再建。般若寺の中では一番新しいといえます。ご本尊は「文殊菩薩騎獅像」で、獅子に乗っかっている珍しい仏さまです。
般若寺のシンボル的存在「十三重石宝塔」
写真は「十三重石宝塔」と呼ばれている卒塔婆です。鎌倉時代のもので、般若寺を紹介する写真には必ず載っている有名な塔です。ちなみに般若寺にある仏像類や境内の建物は、本堂を除き、すべて鎌倉時代の重要文化財というすごさ。コスモスシーズン以外でも、じゅうぶん見学する価値ありのお寺です。
国宝に指定されている「楼門」
こちらの楼門は国宝に指定されています。楼門の遺構としては、日本最古のものだそうです。反り返った屋根のラインが元気そうに見える、独特の形をしています。
境内を埋め尽くすコスモス
般若寺の境内はとても小さいのですが、時期になると境内中でコスモスが咲いているので、お寺そのものが本当にコスモスで埋め尽くされているような印象を受けます。敷地に足を踏み入れたとたん、その迫力に圧倒されます。古びた石や木の色と、鮮やかな花の色が絶妙な風情をかもしだしています。
例年10月から11月半ばくらいまでが見ごろの季節で、約15万本のコスモスが出迎えてくれます。
境内に咲くコスモスは、約30種類。ですから、よく見るとなかなか珍しいものも。「これコスモス?」と思うくらい普段見ないような変わったコスモスもあります。