十分な食事が取れていなかったり、孤食を強いられている子どもたちのため――そんな思いから始まった「子ども食堂」が急速に増えている。食堂を通じて子どもの環境は変わったのか? 実態を探った。

【前編】⇒「子ども食堂」は貧困対策のためだけにある?運営者に聞いたリアル

こども財団で食堂運営を支援、全小学校区で開設した明石市

「子ども食堂」で子どもの環境は変わった?明石市の例は
(画像=『女子SPA!』より引用)

明石市の子ども食堂の1つ「コージー」では月に1回、子どもと一緒に食事を作ってみんなで食べる会を催している。4月30日は15人の子どもが参加

 近年、子ども食堂の支援に力を入れる自治体が増えている。食堂関係者らがつくる地域ネットワーク組織と自治体が密に連携して子ども支援に取り組むケースも増えている。

 そんななか、注目を浴びているのが、子ども優先の町づくりで9年連続人口増を達成している兵庫県明石市の取り組みだ。‘18年に市主導で「あかしこども財団」を設立。市と食堂運営者らの間に立って子ども支援を専門に行う中間組織を設置したのだ。明石市統括理事の佐野洋子氏が話す。

「行政が子ども支援を目的とした財団を設立するのは珍しいケース。手続きの厳格性が問われる行政から、子ども支援活動を財団に委託することで、食堂運営者への助成事業にも柔軟に対応できるようになりました。財団には民間団体からの寄付を得られるメリットもある。食堂の立ち上げから支援する態勢づくりを進めた結果、’18年には全28小学校区への食堂開設を実現し、この5月には46箇所目の子ども食堂がオープンする予定です」

 全小学校区に子ども食堂を開設している自治体は稀だ。明石市は十分な数の食堂を地域交流と「気づきの拠点」にしているという。

「子ども食堂に来た少女が『家にいる妹にお菓子を持って帰っていい?』と聞いてきたことをきっかけに、地域や専門機関と連携して子どもとその家庭の支援に動く――そういう細かなサインを拾って支援に繋げるのです」(佐野氏)

家庭にも良い影響が

「子ども食堂」で子どもの環境は変わった?明石市の例は
(画像=『女子SPA!』より引用)

市内で月に1回、小学校の家庭科室を利用して開かれる調理体験型子ども食堂「コージー」の運営者は「明石市だから立ち上げからしてスムーズだった」と話す。

「こども財団が食堂の会場選びや交渉、ボランティアスタッフの研修、チラシ作成などの支援をしてくれた。特に助かったのは、コロナ対策のための資料や資材の提供を受けられたこと。ほかの自治体では助成金をもらう際に細かい支出表の提出などが求められますが、明石市では稼働実績を報告するだけで財団から助成金がおりる。だから、私たちは事務作業に煩わされず、子ども支援に専念できる」

 実際、子ども食堂コージーを覗いてみると、15人の子どもに対してほぼ同数のボランティアスタッフがつきっきりで対応していた。時に孫子ほど年の離れたペアで包丁を握りながら料理し、全員で机を囲んで食事を取るのがこの食堂のお約束なのだ。

「ウチは祖父も祖母もいなくて、里帰りもない。そのせいか、子どもは年配のボランティアさんを『おじいちゃん』と慕って、毎回参加を楽しみにしている」

 小学生の息子を迎えにきた母親はそう話しながら、「息子は家でも皿洗いを手伝ってくれるようになった」と付け加えた。食堂を起点にした子ども支援は着実に家庭にも良い影響をもたらしているようだ。