銀行ができたころから現在に至るまで銀行員はさまざまな「困ったお客様」に遭遇しています。時代が変わっても変わらない「困ったお客様」もいれば時代の変化で新たに登場した「困ったお客様」などさまざまです。しかし、そのようなお客様には共通点があります。そこで元銀行員の体験談をもとに3つの「困ったお客様のエピソード」を紹介します。

1. 電話口で銀行員が名前を尋ねても名乗らないお客様

(写真=PIXTA)

電話口で名前を尋ねると怒り出すケースも

現役銀行員時代に最も多く悩まされたケースは、「電話口で名前を尋ねても名乗らないお客様」です。中には「俺だけど〇〇さんいる?」などと話す人もいます。いったい誰なのかよく分からずこちらから名前を尋ねると「俺がだれだか分からないのか!」と突然怒り出して困ったことは一度ではありません。このようなお客様は銀行との取引が長い人に多いような気がします。

銀行員が電話をかけてきたお客様に名前を尋ねる理由

銀行員がお客様に名前を尋ねるのには理由があります。銀行にはさまざまな業務に携わる担当者がいるため、そのすべてがお客様を知っているわけではありません。また、銀行員は頻繁に転勤して担当業務もよく変わるので確実に担当者につなぐためにはお客様のお名前を聞くことが必要です。もう一つ取引内容などの具体的な話題については、顧客情報保護の観点から住所氏名などの本人確認を行います。

その点を理解してもらえないお客様は、銀行から困ったお客様認定される可能性が高いでしょう。

2. 無理な要求をするお客様

(写真=PIXTA)

銀行に無理な要求をするお客様も非常に困ります。ここでは2つの例を挙げます。

ケース1.アポなしで多額の現金引き出しを求めるお客様

1つ目は「アポなしで銀行窓口に来店され多額の現金の引き出しを求めるお客様」です。現金取引が多かった時代でも突然窓口で「数千万円の現金を引き出したい」との要望に困るケースは多々ありました。そのような人は、昨今、銀行員からさらに煙たがられる存在となっています。その背景として銀行のIT化で現金の取り扱いが大幅に減り店舗に多額の現金を置かない方針に変わったことが挙げられます。

それを知らないお客様が「すぐには現金を用意できない」という行員の言葉に怒ってトラブルになることも少なくありません。もちろんお客様の預金なので引き出すことは自由なのですが、事前に連絡してくれない場合、銀行にとっては非常に困ったお客様となる可能性があります。この事態を避けるためにも多額の現金を引き出す場合はあらかじめ銀行に連絡することが望ましいです。

必要な金額と窓口に行く日を伝えてから銀行窓口に行くとスムーズに現金を受け取ることができます。

ケース2.閉店後に「貸金庫を開けろ」と怒り心頭のお得意様

貸金庫の利用時間終了後に「貸金庫を開けてほしい」と依頼してくるお得意様に遭遇して大きなトラブルになったこともあります。規則を説明して断ると「お得意様の言うことが聞けないのか!」と怒られました。しかし、貸金庫を含めた銀行の営業時間は変えられません。なぜなら銀行の営業時間は銀行業法で定められているからです。

結局そのときは支店長が出ていく騒ぎとなり法律や銀行の規則についてお得意様に説明することで収まりました。その後支店長が私に「銀行には困ったお得意様もいると知っておきなさい」という言葉が今も忘れられません。