老後のための資産運用の手段としてiDeCoが注目されています。しかし原則として60歳まで引き出せないなどのデメリットから、利用する価値があるのかどうか迷っている人も多いと思います。そこで今回は、iDeCoではどのぐらい利回りが期待できるのか をご紹介します。

iDeCoとは?

ideco 利回り 平均
(画像=YukaHashimoto /stock.adobe.com)

iDeCo(イデコ)とは、個人型確定拠出年金とも呼ばれることからもわかるように、年金制度の一種です。国民年金や厚生年金保険などすべての国民が加入しなければならない「公的年金」に対し、iDeCoは自分で加入するかどうかを選べる「私的年金」です。

iDeCoの大きな特徴

iDeCoでは、加入者が毎月一定額のお金を積み立て(掛金を拠出するといいます)、iDeCoのために用意された定期預金・保険・投資信託といった金融商品を自分で運用します。そして60歳以降に年金または一時金で資産を受け取ります。

加入するかどうかから、実際の運用、そして受け取り方法の決定まですべて自分で決めるので自己責任の色が強い年金制度です。しかしそれでも利用する人が多いのは、次に説明する3つの税制優遇があるからでしょう。

iDeCoの3つの税制優遇

iDeCoで受けられる税制優遇には以下の3種類があります。

所得控除 拠出した掛金が全額「所得控除」の対象になり、
所得税、住民税が軽減される
運用益非課税 運用で得た定期預金の利子、投資信託の運用益が「非課税」になる
年金受取時 年金を受け取る時「退職所得控除」「公的年金等控除」の対象になる

○ iDeCoでは、掛金、運用益、そして給付を受け取るときに、税制上の優遇措置が講じられています。
出典:国民年金基金連合会 『iDeCoってなに?』

3つの税制優遇がすべて受けられるのはiDeCoだけ

税制優遇が受けられる制度は、iDeCoの他にもいくつかあります。老後資金のための制度としては、個人年金保険やつみたてNISAなどが有名です。

しかし、個人年金保険で受けられる控除は所得控除(個人年金保険料控除、上限あり)のみですし、つみたてNISAの主なメリットは運用益が非課税になることだけです。

3つの税制優遇が受けられるのは、iDeCoならではのメリットといえるでしょう。

iDeCoの平均利回りはどのくらい?

ideco 利回り 平均
(画像=naka /stock.adobe.com)

「利回り」とは?

利回りとは、投資元本に対する収益の割合のことです。一般的に1年間の「年利回り」のことを単に「利回り」と呼ぶことが多く、次の式で表されます。

利回り(%)=(分配金 + 譲渡損益)÷投資元本×100

投資信託などで運用すると利回りは年ごとに変わってきます。それらを平均して1年あたりどのぐらいの割合ずつ増えているのかを表すのが「平均利回り」です。

例えばある投資信託の5年間の平均利回りが3%とするとこの5年間は3%ずつ資産が増えているということです。

iDeCoは平均利回り3~5%の商品が多い

では、iDeCoの平均利回りが実際どのくらいなのかを見てみましょう。

下の図は、iDeCoで運用可能な商品のうち「発売されて5年以上経っている394商品」の過去5年にわたって掛金を積み立てた場合の「1年平均リターン」の分布です。

ideco 利回り 平均
(画像=fuelle編集部作成)

平均利回りが3~5%の商品が最も多くなっています。また今回調査したiDeCoの運用商品394本における過去5年間の平均は4.03%という結果でした。

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iDeCoの利回りに期待できる理由

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(画像=One /stock.adobe.com)

iDeCoには税制優遇がありますが、実はそれが利回りに期待できる理由にもなっています。なぜなのかを解説します。

iDeCoの利回りに期待できる理由1.分配金が非課税なので複利の恩恵も

投資の利益の一つとなる分配金が出ると、普通はその利益に対し20.315%(復興特別所得税を含む)の税金がかかります。しかしiDeCoで運用するとその税金がかからず、分配金をそのまま受け取ることができます。

単年で考えてもこの20.315%の税金がなくなるのは大きなことです。またiDeCoの場合、分配金は自動的に再投資されるため、老後の資金形成を目的とした長期間にわたる投資ではさらに効果が上がります。

例えば「100万円の資産に5年間毎年5%の分配金が出る場合」を考えてみましょう。普通に投資した場合(20.315%の税金がかかる場合)と、iDeCoで非課税運用した場合、差は以下の表のように広がっていきます。

1年後 2年後 3年後 4年後 5年後
運用益に課税
(20.315%)
103万
9,843円
108万
1,273円
112万
4,354円
116万
9,151円
121万
5,732円
運用益非課税 105万円 110万
2,500円
115万
7,625円
121万
5,506円
127万
6,28円
差額 1万
157円
2万
1,227円
3万
3,271円
4万
6,355円
6万
548円
どちらも投資信託で得た分配金にさらに分配金がつき、利益が雪だるま式に増えています。これが「複利効果」です。さらに2つを比較してみると運用益非課税の効果が年を経るごとに大きくなっているのが分かります。
松岡紀史(ライツワードFP事務所代表)

このように運用益が非課税というiDeCoの特徴は運用利回りアップに直結します。

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iDeCoの利回りに期待できる理由2.所得控除で実質利回りが上がる

運用益が非課税になる効果は比較的誰にも分かりやすいのですが、「所得控除の効果」は会社員の方には分かりづらいかもしれません。

例えばiDeCoで掛金を毎月2万円(年額24万円)拠出した場合、その人の所得税が10%、住民税が10%とすると、年間4万8,000円(24万円×20%)税金が軽減されます。

税金が軽減されるということは、この場合は4万8,000円手取りが増えるということです。言い換えれば24万円をiDeCoに拠出することで4万8,000円の利益が出たことになります。これは、利回りにすると20%(=4万8,000円÷24万円×100)相当です。

iDeCoの所得控除というメリットは、iDeCoの商品自体の運用成績を上げることはありません。しかし、手取りが増えることで実質的な利回りを上げる効果があります。

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iDeCoで2,000万円貯める!シミュレーションしてみよう

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(画像=Liza5450 /stock.adobe.com)

iDeCoを利用した場合、実際どれぐらいの資産が作れるのか気になりますよね。そこでここからは、毎月の積立額をそれぞれ次の金額でシミュレーションします。

・1万円
・2万円
・2万3,000円 ※他に企業年金のない会社員の最大積立可能額

利回りと投資期間によって最終的にどれぐらいの資産が形成できるのか、それぞれを表にしました。

iDeCoで2,000万円貯めるなら「2万3,000円を30年5%で運用」

老後資金の目安としてよく「2,000万円貯めよう」といわれますが、表を見ると会社員であれば「2万3,000円を30年5%で運用」できてようやく2,000万円に近い資産が貯まることが分かります。

毎月1万円ずつ積み立てた場合

10年 15年 20年 25年 30年
1% 約126万円 約194万円 約266万円 約341万円 約420万円
3% 約140万円 約227万円 約328万円 約446万円 約583万円
5% 約155万円 約267万円 約411万円 約596万円 約832万円

毎月2万円ずつ積み立てた場合

10年 15年 20年 25年 30年
1% 約252万円 約388万円 約531万円 約681万円 約839万円
3% 約279万円 約454万円 約657万円 約892万円 約1,165万円
5% 約311万円 約535万円 約822万円 約1,191万円 約1,665万円

毎月2万3,000円ずつ積み立てた場合

10年 15年 20年 25年 30年
1% 約290万円 約446万円 約611万円 約784万円 約965万円
3% 約321万円 約522万円 約755万円 約1,026万円 約1,340万円
5% 約357万円 約615万円 約945万円 約1,370万円 約1,914万円

ただしこれらは、iDeCoだけで2,000万円を貯めることを想定した場合です。実際の老後資金は、退職金や他の貯金とあわせて準備することになるでしょう。

iDeCoでどのぐらい資産を準備したいかが決まれば、上の表は「何歳からいくらずつ積み立てればいいのか」の目安となります。

iDeCoで1,000万円貯めるなら「2万円以上を25年3%の運用」

1,000万円を目標にするとどうでしょう。例えば今35歳の人がiDeCoを始めるケースを考えてみましょう。

iDeCoの過去5年間の運用利回りは平均約4%だったと前述しましたが、少し控えめに3%を目標にしたと仮定します。今35歳なので60歳まで25年あります。

「利回り3%、25年の運用」で1,000万円の資産を形成するには、上の表から毎月2万円より多い金額を積み立てれば目標に近づくことが分かりますね。

このように、

  • 目標金額
  • 利回り
  • 老後までの年数
  • 毎月の積み立て金額

をチェックしながら、iDeCoをどう活用するか老後までの計画を考えてみてください。

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iDeCoは人によって掛金の上限が違う

iDeCoでは、国民年金の加入区分や会社の制度によって拠出できる掛金の上限が異なります。

次の表で 自分の掛け金の上限を確認しましょう。

<iDeCo(イデコ)の掛金の拠出限度額>

国民年金の加入区分 対象者 掛金の上限額
第1号被保険者 自営業者、フリーター 月額6万8,000円
第2号被保険者 会社に企業年金がない会社員 月額2万3,000円
企業型確定拠出年金のみに
加入している会社員
月額2万円
確定給付企業年金のみ、
または確定給付企業年金と
企業型確定拠出年金の両方に
加入している会社員
月額1万2,000円
公務員
第3号被保険者 専業主婦(夫) 月額2万3,000円

企業年金がない会社員でも月額2万3,000円拠出することができます。企業年金がないこれらの会社員は、他の会社員の方より退職金が少ない、もしくはまったくないことが考えられます。こういう人こそ iDeCoを利用し、老後資金の準備をしましょう。

iDeCoのデメリットは?

iDeCoを利用すると普通に投資するより税金面でお得であり、確かに効率よく資産を増やすことができます。しかし一方で注意点もあります。ここでは、 加入前に知っておきたいiDeCoのデメリットをご紹介します。

ideco 利回り 平均
(画像=fuelle編集部作成)

iDeCoのデメリット1. 手数料が利回りを下げる要因になる

iDeCoに申し込むと、加入時に2,829円、運用時に運営機関に171円などの共通の手数料を取られる上、加入する金融機関に支払う手数料(口座管理手数料)が発生します。この 金融機関ごとの手数料は2021年4月時点で0円から458円と、かなり差があります。

これらの手数料は預けているお金から差し引かれるので、毎年利益が手数料分だけ少なくなることを意味します。

毎年300円程度の手数料がかかる場合、例えば定期預金などにばかりに掛金を拠出して利益が300円を下回れば、利回りはマイナスになってしまうことに注意しましょう。

出典:国民年金基金連合会 『iDeCo手数料について』

iDeCoのデメリット2. 60歳まで引き出せない

iDeCoの大きなデメリットの一つに、原則として60歳まで資金を引き出せないことがあります。もし突然の怪我や病気で仕事ができなくなった場合でも、それまで積み立ててきたお金は60歳まで使えないことは覚えておきましょう。

一方で、この60歳まで引き出せないという特徴は、無駄遣いすることなく確実に老後に資金が回るというメリットと捉えることもできます。
松岡紀史(ファイナンシャルプランナー)

iDeCoの運用で覚えておきたい!「スイッチングとリバランス」、「配分変更」

(画像=takasu/stock.adobe.com)

iDeCoでは最初にどの商品をどの割合で購入するか決めますが、時間が経つと自分が運用している商品の割合や種類を変更したくなることもあるでしょう。

iDeCoで運用商品を変更する方法には、「スイッチング」と「リバランス」があります。

iDeCoのスイッチングとリバランス

  • スイッチング……資産の商品構成などを変更すること
  • リバランス……資産配分割合を元に戻すこと

iDeCoは毎月一定額を長期的にじっくりと積み立てて運用していくものなので、頻繁な売買は必要ありませんが、ここではスイッチングを使ったリバランスを紹介します。

スイッチングとは、これまで積み立ててきた資産の商品構成などを変更することです。

iDeCoを投資信託など損益が出る商品で運用していると、次第に掛金の配分と資産残高の配分が違ってきます。例えば商品A30%、商品B30%、商品C40%の構成で保有していたものが、商品Bの値段が下がり、商品A50%、商品B10%、商品C40%になったとします。

ideco 利回り 平均
(画像=fuelle編集部作成)
この場合、そのままにしておいてもいいですが、スイッチングをして資産配分割合を元の割合に戻すことで、商品Bが値上がりした時により大きなリターンが期待できるようになります。この資産配分割合を元に戻すことを「リバランス」といいます。
このリバランスは頻繁に行う必要はなく、1~2年に1回などと時期を決めて行うことで、リターンを安定させることができます。
松岡紀史(ファイナンシャルプランナー)

iDeCoの配分変更は年齢に応じて

既に保有している資産の配分を変更するスイッチングに対し、毎月の掛金で購入する運用商品の種類や配分割合を変更することを「配分変更」といいます。

一般的に「若い頃はリスク商品」を、「高齢になればなるほどリスクの少ない保険や預金を買うこと」が勧められます。これは、若い時には資産運用で一時的に損失が出ていても後々運用成績が回復するかもしれないことや、たとえ損失が確定してもまだ収入でカバーできる可能性があるからです。

iDeCoも運用の一種ですので、運用期間が長くとれない50代を超えたあたりからは、リスクの高い商品ではなく徐々に安全資産に配分を変更していきましょう。
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iDeCoを売るタイミングはいつが最適?

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(画像=taka /stock.adobe.com)

投資で難しいのは、買うタイミングよりも売るタイミングといわれます。高い時に買ったとしても、さらに高くなった時に売れば利益が出ます。逆に安い時に買っていたとしても、さらに下がった時に売れば損をします。

ここではやってはいけない売り方と、売るタイミングの決め方をご紹介します。

iDeCoは暴落時に慌てて売るのはNG

iDeCoは長期的にコツコツと積み立てながら運用していく制度ですが、難しいのは「いつ投資信託を売却するか」です。中でも投資初心者の人は、商品が暴落した時に慌てて売ってしまいがちです。

商品の値が一時的に下がってしまったとしても、そのまま保有していればまた回復するかもしれません。また、商品の値が下がっている時というのは同じ掛金でもその商品をより多く買える時期ということでもあります。

iDeCoではこうした価格が下がった時でも、「今は商品が安く買えている」と考え、慌てて売ることなく価格が回復するまで待つという心構えが大切です。
松岡紀史(ファイナンシャルプランナー)

iDeCoの運用では目標利回りや目標金額を持とう

投資初心者の人がやってしまうもう一つの失敗は、運用が十分うまく行っても「もっと値上がりするかも」となかなか売れないことです。そうしているうちに価格が下がり、売るタイミングを逃してしまうのです。

売るタイミングを逃さないためには、「老後足りない金額は800万円だから、iDeCoの資産が800万円になったら売ろう」や「全体で運用利率が4%を超えたら売ろう」というように、目標を決めておきましょう。

お得なiDeCo。効果的に利用して

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(画像=miya227 /stock.adobe.com)

iDeCoには他の制度にはない大きな税制優遇が3つあります。今回は特に運用益が非課税になることと、掛金が所得控除になることが利回りにどのように影響するのかと、結果としてiDeCoでは高い利回りが期待できることをご紹介しました。

今回ご紹介したリバランスや、売る時の目標設定などを参考に、iDeCoをさらに効果的に利用してみてください。

iDeCoの利回りの平均は? Q&Aでもチェック

Q

A
iDeCoの利回りの平均はどのくらい?
過去5年間の平均は4.03%でした。もっとも多かったのは平均利回りが3~5%の商品でした。

Q

A
iDeCoの利回りはなぜ有利になるといわれているの?
運用益が非課税で複利効果がアップすることが大きな理由です。投資で利益が出ると普通はその利益に対し20.315%の税金がかかりますが、iDeCoではその税金がかからず、運用で得た利益をそのまま受け取ることができます。

Q

A
iDeCoってどんな制度?
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iDeCoで積み立てた資産はいつ受け取れる?
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Q

A
iDeCoにはどんな税制優遇があるの?
iDeCoで受けられる税制優遇はおもに3種類あります。所得が控除される、運用益が非課税になる、年金受取時の「退職所得控除」「公的年金等控除」です。3つの税制優遇がすべて受けられるのはiDeCoならではのメリットです。

松岡紀史
筑波大学経営・政策科学研究科でファイナンスを学ぶ。20代の時1年間滞在したオーストラリアで、収入は少ないながら楽しく暮らす現地の人の生活に感銘を受け、日本にも同様の生活スタイルを広めたいという想いから、 帰国後AFPを取得しライツワードFP事務所を設立。家計改善と生活の質の両立を目指し、無理のない節約やお金のかからない趣味の提案などを行っている。
筑波大学経営・政策科学研究科でファイナンスを学ぶ。20代の時1年間滞在したオーストラリアで、収入は少ないながら楽しく暮らす現地の人の生活に感銘を受け、日本にも同様の生活スタイルを広めたいという想いから、 帰国後AFPを取得しライツワードFP事務所を設立。家計改善と生活の質の両立を目指し、無理のない節約やお金のかからない趣味の提案などを行っている。

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