「かけるオイル」市場がブレイクしている。といっても原油市場のことではない。近年、オリーブオイルやアマニ油、ごま油など美容と健康に良いとされる食用油をサラダやラーメン、TKG(卵かけご飯)等にちょい足し感覚で「かけるオイル」が拡大しているのだ。業界大手の日清オイリオグループ(以下、日清オイリオ) <2602> によると「かけるオイル」は家庭用食用油全体の20%を占めるまでに成長したという。ちなみに、同社の株価は3月の安値から2割以上も上昇している。

それにしても、「かけるオイル」のブレイクはその美容・健康効果もさることながら、速水もこみちさんや嵐の二宮和也さん、関西ジャニーズJr.の西畑大吾さんの存在を抜きに語ることはできない。今回は一過性のブームにとどまらず、私たちのライフスタイルそのものを大きく変える可能性を秘めた「かけるオイル」人気の秘密を探ってみよう。

二宮和也と西畑大吾の「かけあい」CMが大当たり

かけるオイルをはじめよう。おいしい魔法をかけよう……そんなキャッチコピーを展開しているのが日清オイリオの「かけるオイル」Webサイトだ。同サイトではテレビCMでも起用している二宮和也さんと西畑大吾さんが登場、「鮮度のオイルシリーズ」としてオリーブオイル、アマニ油、ごま油、マカダミアナッツオイルの4種類を紹介している。二宮さんと西畑さんが会話を「かけあい」ながら、様々な料理にオイルをかけるCMをご存知の人も多いことだろう。

オリーブオイル等の「鮮度のオイルシリーズ」は老化などを防ぐ抗酸化作用をはじめ美容と健康に優れた効果があるとされている。ただ、オイルの難点は劣化しやすいことと液ダレでベタベタすることであるが、日清オイリオは酸化ブロック製法などで開封後も新鮮さを保てるように工夫し、液ダレしないようにピタッと注げる「新しい注ぎ口」も開発することでこの問題を解決している。

しかし、どんなに優れた商品であっても必ずヒットするとは限らない。すなわち「誰をCMに起用するか?」でその商品がヒットするか、成否を決定づけるような側面もある。ヒット商品を生み、業績を伸ばし、株価も上昇する企業というのは例外なく優れた「CM戦略」「ブランド戦略」を有しているものなのだ。その意味において、二宮さんや西畑さんのさわやかで健康的なイメージは日清オイリオの「鮮度のオイルシリーズ」のヒットを大きく後押ししたと言えるだろう。

「かけるオイル」の市場規模は350億円に

ところで、「家庭用食用油」「かけるオイル」と聞くと身近すぎて地味なイメージを抱く人もいるかもしれない。実は筆者もその一人だった。だが、iPhoneなどのヒット商品に比べ派手さはないものの、「かけるオイル」の市場規模は着実に拡大している。

5月21日、日清オイリオは2018年3月期の決算説明会で「かけるオイル」市場は2017年度で約350億円まで拡大していることを明らかにした。2013年度から年率換算で11%伸長しており、すでに家庭用食用油市場の20%を占めているという。さらに同社は2020年に「かけるオイル」の市場規模は400億円近くに成長する見通しも示している。つまり、一過性のブームにとどまらず、私たちの食生活により広く浸透することが想定されているのだ。

日清オイリオの中期経営計画においても「かけるオイル」の販売拡大と市場活性化は、油脂部門の高付加価値化の柱と位置づけられている。今後同社がどのようなCM戦略、ブランド戦略を打ち出してくるか気になるところだ。