電車や街中で「就活スーツ」に身を包み、真新しいビジネスバッグを持った就活生らしき若者を多く見かける。2019年卒学生の就職活動も本格化したようだ。3月1日に会社の説明会が解禁され、6月1日からは各社の面接選考が始まる。リクルートキャリアによると4月1日時点での就職内定率は19.9%と昨年同時期よりも5.4ポイント高いとか。就活生にゴールデンウイークなど関係ないのだろう。

ところで、先日大手新聞社が実施した初任給に関するアンケート調査によると、第1位はフィル・カンパニー <3267> でその金額はなんと「40万円」だという。並みいる大企業をおさえて「初任給ランキング」のTOPに立ったフィル・カンパニーとはどんな会社なのだろうか。詳しく見てみよう。

新入社員の平均年収の「2倍」

バブル世代の筆者の就職活動は、インターネットがない時代であった。大学に求職票を見に行ったり、ゼミの先輩や友人から情報をもらうのが精一杯で、就職情報を手に入れるのは大変だった。スマホもない時代で、情報どころか地図だって簡単には手に入らない。就職活動が夏だったので慣れないスーツで大汗をかきながらオフィス街を迷いまくったものである。

それに比べ、ミレニアル世代の就職活動はどうだろう。パソコンやスマホの普及により、就活生の情報収集は格段に高まった。その会社の事業内容や年収はもちろんのこと、ネット上での情報交換も活発でブラック度合いなどもたちどころに分かる。就職先を「知名度だけ」で判断するのでなく、その会社の実態をかなり把握したうえで就活ができるのはうらやましい限りだ。

フィル・カンパニーの知名度は決して高くはないが、前述の「初任給ランキング」が報じられたことで、注目度が高まっているのではないだろうか。2018年度の初任給は40万円で、2位の35万円をブッチギリでリードしている。固定残業代込みということだが、単純計算で年収480万円だ。報道によると、アンケートに回答した会社の初任給の平均は「約21万5000円」ということなので、新入社員の平均年収の「2倍」になる計算だ。

フィル・カンパニーが創造する「空中店舗」ってなんだ?

フィル・カンパニーは、2005年設立の若い会社で、2016年11月には東証マザーズ市場にIPOを果たしている。東証マザーズ市場はベンチャー企業などの若い会社でも上場しやすいように開設されたマーケットで、「将来の成長期待」から個人投資家の人気も高い。

フィル・カンパニーは、「空中店舗」という駐車場の上部の空きスペースをうまく活用したビルを、土地のオーナーに提案・設計するのを事業の柱としている。ニッチな領域ではあるが、その独創的ともいえる「空中店舗」で急成長している企業なのだ。

「空中店舗」とは現有のコインパーキングなど駐車場の上のスペースに店舗やオフィスのテナントを建てて「有効活用」するというもの。フィル・パークの「空中店舗」はデザイン的にもなかなか美しく、近未来のSF映画を観ているようでもある。

たとえば、上記の写真は2009年竣工の「フィル・パーク表参道」である。筆者も実際に見たことがあるのだが、コインパーキングの上に美容院などのフロアを併設したそのビルは「表参道」にふさわしいスタイリッシュなデザインだ。

フィル・カンパニーはこうした施行例を100件以上も有しており、そのほとんどをWebサイトで見ることが可能だ。デザイナーのセンスが光るビルであるが、特徴的なのは外観だけではない。駐車場収入を残しつつ、テナント収入も得られることで「利回り」が向上し、投資回収が早いというメリットもある。土地のオーナーに対し、提案・設計・施行・テナント誘致まで一貫して請け負うことでフィル・カンパニーは順調に業績を拡大しているのだ。