新型コロナウイルス感染拡大の影響により、原油先物市場で史上初となる事態が起こりました。原油価格がマイナスとなったのです。つまり、お金を払って原油を買い取ってもらうことを意味します。なぜこのような事態になったのでしょうか?そもそも、原油価格はどのように決められているのでしょうか?その理由と仕組みについて解説します。

原油価格が一時マイナスとなった

4月20日のニューヨーク商業取引所で、原油先物(WTI)の5月物が一時、1バレル=−40.32ドルの値をつけました。前代未聞のマイナス価格です。最終的には、前日から56ドル下落した、−37.63ドルで取引が終了しました。なぜ、このような価格急落が起こったのでしょうか?

理由として考えられるのは、供給過多となって需給バランスが崩れたためです。原油価格は需要と供給によって決まります。新型コロナウイルス感染拡大によって、欧米の主要都市は封鎖されました。車の移動が激減し、飛行機もほとんど飛ばなくなりました。ガソリンや重油など石油由来の燃料が使われにくくなり、原油の需要が極端に減少したのです。

使い道のなくなった原油は、貯めるしかありません。通常であれば、原油価格が下落すると、安くなったことを機に需要が伸びるはずです。しかし、今回の下落は新型コロナウイルス感染拡大に起因したもので、価格には直接関係がありませんでした。価格以前に、そもそも原油を使わなくなったのです。そして価格は下落を続け、ついにマイナスになってしまいました。

先物取引の仕組み「限月」「現物受け渡し」「反対売買」

一般消費者向けに販売されているモノの価格がマイナスになることは通常ありません。原油価格がここまで落ちてしまった理由は、需給バランスの崩れに加え、先物取引の仕組みにもあります。

先物取引とは、ある商品について、将来の決められた日に、取引時点で決めた価格、数量で売買することを約束する取引のことです。

先物取引には取引満了月があり、その月のことを「限月」といいます。「限月」にある決済日までに必ず決済を完了しなければなりません。原油先物(WTI)の場合、5月限の取引最終日が4月21日でした。この日までに5月に買う原油の量と価格が決まるということです。

原油は、「現物受け渡し(現受け)」によって決済されます。原油そのものを受け渡して取引が完了する方法です。受け取る側は、原油を保管する施設を準備しなければなりません。

原油が必要なくなった場合、「反対売買」を行うことで持ち高を解消する必要があります。「反対売買」とは、買った商品を売りに出す、もしくは売った商品を買い戻すということです。

先物取引の決済方法には、現受けの他に「差金決済取引」があります。こちらはお金のやりとりだけで完結するので、上記のような問題は基本的に発生しません。日経平均先物などがこの方式を採用しています。ところが原油先物を買う投資家は、5月の決済において原油を受け取らなければなりません。この状況を解消するためには反対売買をする必要があるのです。