年末調整のシーズンですね。書類の中に入っている「給与所得者の扶養控除等の(異動)申告」。最近は共働きの夫婦が増えましたが、子どもの名前は夫側と妻側のどちらに書きますか?

「何となく夫の方に」「年収が高い方に」という方が多いかもしれませんが、夫婦の収入によっては、あえて給与の低い方の扶養に入れることで、1人分の住民税が浮く可能性があるのです。 

どちらの扶養にするのがお得なのか、知らないと損するかもしれない、子どもの「扶養」について説明します。

そもそも扶養とは何か?  

(写真=stockfour/Shutterstock.com)

そもそも扶養とは何でしょうか。

よく「扶養に入る」とか「扶養から外れる」とか言いますね。

「扶養」とは、自力で生活できない人の生活を援助する仕組みのこと。具体的には、誰かを自分の「扶養」に入れていると、自分自身の税負担が軽くなったり、扶養に入っている人は健康保険料を支払わなくても健康保険の給付を受けられたりすることができます。

扶養にはおおまかに2種類あり、税制上の「扶養」、健康保険の「扶養」となっています。

税制上の扶養とは?

税制上の扶養とは、パートナーや子どもを自分の扶養に入れていると、その人の所得税や住民税が軽減される制度のこと。この制度を「扶養控除」(ふようこうじょ)と言います。

税制面で家族を扶養に入れる手続きは、年末調整の時に渡される「◯◯年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」に扶養親族の名前等を記入するだけです。

ちなみに配偶者は、「配偶者控除」「配偶者特別控除」という別の制度の適用対象になるため、扶養控除の対象ではありません。

健康保険の扶養とは?

健康保険の扶養とは、家族を自分の扶養に入れていると、その家族も健康保険を使うことができる制度です。

扶養に入れば、保険料を支払わずに健康保険証をもらえたり、健康診断や予防接種などの補助を受ける対象になれます(実際には所属の健康保険組合の規定によります)。

扶養に入るには、収入の条件(年間収入130万円未満など)などの認定基準がありますので勤務先に確認してください。

子どもについては、親が共働きで、夫婦それぞれが勤務先の健康保険に加入している場合は「世帯主」の被扶養者になるのが一般的なルールとなっています。世帯主とは、基本的には「収入の多い方」のことをいいます。そのため、扶養の手続きには、家族の収入状況(給与明細票など)と家族関係の状況(住民票など)の書類を勤務先に提出します。

ただ、大企業などで家族手当や医療補助などが充実していて、そちらに入れたい場合もあるかもしれません。その場合、収入が低い方でも扶養にできることもあるので、勤務先の担当者にダメもとで相談してみましょう。

ちなみに、自営業の人などが加入する国民健康保険には扶養の制度がありませんので、家族の人数分の保険料を払う必要があります。

ですからもし、夫が自営業で妻が会社勤め、という場合、子どもは妻の健康保険の被扶養者としたほうがおトクになります。ただし、夫の所得の方が多ければ、子どもは夫とともに国民健康保険に加入するのが一般的です。

子どもと扶養、所得税への影響について

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もし、家族の誰かを税制上の扶養に入れると、先ほど記載した「扶養控除」を使うことができ、その結果、自分の「課税所得」が低くなり、支払う所得税・住民税額が安くなっていきます。

対象となる人が多ければ多いほど、納税者の負担が軽くなるのですが、では産まれたばかりの子どもを扶養控除の対象に入れることができるかというと、答えはNOです。

その理由は次の通り。

扶養控除の対象者とは?

所得税法では、扶養控除の対象になる「控除対象扶養親族」は、その年12月31日現在の年齢が16歳以上で、次の4つの要件のすべてに当てはまる人としています。

  1. 配偶者以外の親族(=6親等内の血族及び3親等内の姻族)または都道府県知事から養育を委託された児童(いわゆる里子)や市町村長から養護を委託された老人であること
  2. 納税者と生計を一にしていること
  3. 年間の合計所得金額が38万円以下であること (給与のみの場合は給与収入が103万円以下)
  4. 事業専従者でないこと このように、現在の所得税法では、16歳未満の子供は扶養控除の対象者とすることができません。

    「扶養親族」のうち、16歳未満の子どもは「年少扶養親族」と呼ばれています。

    平成22年度税制改正により、児童手当(いわゆる子供手当)が導入された代わりに、「年少扶養親族」は、所得税、住民税とも「扶養控除」の対象者から外されました。

    子どもが中学校を卒業するまでは、税金面の優遇ではなく、現金を給付されるということです。

    子どもと扶養、住民税への影響について

(写真=Mc Satori/Shutterstock.com)

実は、上記の「扶養控除」とは全く別の制度として、住民税には「非課税限度額」という制度があります。

ただこれは裏ワザ的なものです。条件が合えば、住民税が節税できるかもしれません。

繰り返しますが、扶養控除とは別ものですので、混同しないように注意してください(できるだけ分かりやすく書きたいと思います)。