家族
2019/01/09

親族に伝えず母親の「成年後見人」になって起きたトラブル

(写真=kazoka/Shutterstock.com)
(写真=kazoka/Shutterstock.com)
「母親の所有するアパートを売却処分して、現在入所している特別養護老人ホームの費用に充てていいだろうか?」−−。母親の成年後見人になっているというAさんからこんな相談を受けた。既に後見人になって2年経過しているという。

Aさんが母親の財産を管理する立場であり、代理人として売買契約を結ぶことも認められている。Aさんに何もためらう理由はないのだが、将来的に相続人になり得る人たちの了承は必要ないのか、という疑問を抱いたのである。Aさんの疑問、危惧は当然のことで、他の相続人にしてみれば、「勝手に売却した」と後で言われ、トラブルに発展することを恐れたのだろう。

成年後見制度とは

2000年(平成12年)に登場した「成年後見制度」は、今ではすっかり市民権を得て、多くの人が利用するようになった。ただ一方で、後見人となった人が勝手に財産を使い込む事件も発生している。今回は、相続問題の依頼を受けた際に、実際に発生した「成年後見制度」のトラブルをご紹介する。

私はAさんの兄弟3人に「内容証明」を送ることにした。その内容は、「現在Aさんが母親『成年後見人』として、財産の管理を行っているが、この度母親所有のアパートを売却するつもりである。売却益は母親が入所する特別養護老人ホームの費用に充てたい。本来であれば、Aさんの判断で売買契約を結ぶことができるが、母親の財産を著しく減少させることになるので、将来の遺産分割等を考えて、貴殿に異議があるか否かをお尋ねしたい」というものだった。

数日後Aさんの兄(故人)の長女(Aさんの姪)から私に電話が入った。それは、「成年後見人とは、どういうことか。私はまったく聞いていない」というものであった。アパートの売却について了承を取る取らない以前の問題だ。

その後も2人の方から同じような内容の電話があった。Aさんに尋ねたところ、「兄弟は遠隔地に住んでいるが、私と母は同じ市内に住んでいるため、ずっと身の回りの世話をしていた。その流れで、自分が成年後見人になったほうがいいと判断した。他の兄弟には言っていない」とのことであった。

その後は、Aさんが他の兄弟に説明を行い、特別養護老人ホームの費用を捻出するために、とりあえず売却することに同意してもらった。

問題はその後である。それから1年後、母親が亡くなり、兄弟が集まって遺産の分割について話し合うことになったが、ここでも「なぜ無断で成年後見人になったのか?」が話の俎上に上った。しかも、Aさんが後見人だった時のお金の使い方も問題になったのである。

母親が入所していた特別養護老人ホームに通うために、Aさんはタクシーを利用していたが、明らかにそれ以外の日でも、タクシーを頻繁に使っていたという指摘があった。また、こまごました費用についても、母親のために使っているとは言い難いとの指摘もあった。

結局、Aさん以外の人たちが、不要と判断した費用については、Aさんの受け取るべき遺産から差し引かれることになった。この点はAさんも、(渋々ながら)納得して、「遺産分割協議書」が作成されるに至ったのである。ここまで母親が亡くなって6カ月、相続人が集まる回数は、3回を数えた。
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