2016年中に亡くなられた方で、相続税課税の対象になったのはわずか8.1%であることが国税庁の調査によってわかっています。

この数字を聞いて「うちは資産家じゃないから、相続の問題はない」と思っているとしたら、ちょっと待って。相続税がかからないような家こそ、問題は起きているのです。

遺産5,000万円以下が遺産分割調停事件の8割を占める

実際、遺産分割で揉めるケースのほとんどが資産家ではありません。

裁判所ウェブサイトによると、2016年度の遺産分割調停事件のうち、76%が遺産5,000万円以下の案件となっています。

相続税には「基礎控除」といって、資産が多くない場合は税金がかからなくなる仕組みがあります。相続税が課されない範囲は「3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数」という式によって計算できます。

例えば、5人家族の父親が亡くなり、遺産を妻と兄弟3人で相続すると、基礎控除は「3,000万円+600万円×4人=5,400万円」となり、5,400万円以下の遺産は、相続税の対象になりません。

相続人の数にもよりますが、相続税がかからないのに遺産の分割で問題が起きているケースがかなりあることがわかります。

資産家じゃないのに揉めるケースとは?

資産家ではないのになぜ揉めるのでしょうか。最も多いのが、遺産がマイホーム(家と土地)だけというケースです。

例えば、父親の亡くなった後、マイホームに母と長男一家が引き続き住み、家と土地は母と長男の名義にすると、長女、次男に分ける遺産はありません。もしあなたが長女だったとしたら、この遺産分割に納得するでしょうか?母親の面倒を見てくれている長男に感謝しながらも、兄弟なのに不公平だと感じるかもしれません。

マイホームは動かすことができず、分割することもできないので相続で問題が起きやすいのです。