世の中の物事には、対極となる2つの考え方があるものです。分断され二極化しつつある世界を、自分らしく生きていく方法はあるのでしょうか。

『Third Way(サードウェイ) 第3の道のつくり方』(山口絵理子著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)より、相反する物事をかけ合わせて新しい道を作り出す考え方を紹介します。

サードウェイという新しい道

例えば、男・女、組織・個人、家庭・仕事など、世の中のほとんどの物事には2つの軸が存在していると言われます。

その結果、どちらでもない選択肢を探そうとすると、足して2で割る妥協点であったり、どちらかを捨てたりなどといった諦めの方向になりがちです。しかし、本著では、選択肢は本当にそれだけなのだろうかと問題提起しています。

なぜ世の中はこうも、二つに分断されているんだろう。一方のポジティブは、もう一方のネガティブを生み出さなければいけないのだろうか?(3ページより引用)

自分は第3の道“サードウェイ”を歩んでいくと、著者は語っています。本著でいうところのサードウェイとは、「相反する二軸をかけ合わせて新しい道を創造する」という意味。コーヒーやワインの世界でいうサードウエーブとは違い、生きるうえや仕事をするうえでの思想であると言います。

著者は、大学卒業後に単身バングラデシュに渡り、2006年に株式会社マザーハウスを設立。現在、バングラデシュ、ネパール、インドなどにおいて自社工場や提携工場を持っています。

ジュートやレザーなどの素材をもとに、バッグやストール、ジュエリーなどのデザインと生産を手掛け、日本国内だけでなく、台湾、香港などへも販路を展開しており、そのビジネスモデルは、多くのメディアで紹介されてきました。

まったく異なる世界観であるAとBのいいところを組み合わせて、新しいものを作り出すという考え方。もしかすると、個人でたとえるとしたら近年進みつつある複業や副業にも通じる考え方なのかもしれません。

社会性とビジネスの成立とは

会社の経営だけではなく、ブランドのプロダクトデザインも担っている著者。先進国と途上国を行き来してブランドを成長させてきた道のりは、簡単ではなかったことがうかがえます。

でも、社会貢献がしたいという思いだけではビジネスはできない。日本では約200人、グローバルでは約600人のスタッフがマザーハウスで働いている。給料を払い、彼らの家族をも支えなくてはならない。(26~27ページより引用)

第1章は「社会性とビジネスのサードウェイ」とつけられています。原点にあるのは、バングラデシュの人の暮らしを良くしたいという著者の思い。根底に社会貢献という理想があると言えるでしょう。

しかし、いくら社会的な思いがあっても、プロダクトとしての魅力を発信し、勝ち続けていかないことにはビジネスとして成立しません。

社会性とビジネスの成立という相反する概念を、いかに共存させて互いに高めていくか。ポイントは、ゴールの設定の仕方にあるようです。

本著では、ビジョンとして掲げている大きなゴールに進むためには、ゴールと現在地の間に「小分けしたゴール」を準備することが重要であると伝えています。それは、多くの企業でいうところの中期目標に近いのかもしれません。

ビジョンともいうべき大きなゴールは揺るぎなく設置しておいて、小分けしたゴールにたどり着くための方法は状況に合わせながら柔軟に修正する。このことはモチベーションの維持も含めて、着実に物事をクリアしていくために必要な考え方なのかもしれません。