ビジネス社会において女性も男性と同様に活躍できるようになってきたとはいえ、男性に比べるとどうしても制約が多いのが実情です。それは起業というステージでも変わりません。ただ、制約が多くとも支援制度を上手に活用すれば、事業を軌道に乗せることができます。

女性起業家の特徴は「低所得・小規模・ノウハウ不足」

2012年に中小企業庁が公表した中小企業白書では、女性起業家の特徴として次の3点が挙げられています。

  • 女性起業家の7割が所得100万円未満
  • 女性起業家の9割が一人で仕事をしている(従業員がいない)
  • ビジネスに対する知識や経験が浅い この背景には、妊娠や出産・育児、さらに家事や介護といった日常生活の負荷が女性にかかりやすいことがあるとみられています。事実、「起業時の課題」の一つとして挙げられた「家事・育児・介護との両立」という項目については、男性の回答率が4.9%にすぎないのに対し、女性の回答率は18.1%で男性の3倍以上となっています。

    女性は男性に比べ、仕事に充てる時間に制約がかかりがちです。男性は生活時間の多くを仕事に充てやすい環境にある一方、女性は子どもの送迎や親の介護で仕事の時間を短縮せざるを得ないのです。結果、経験や知識、人脈を培う機会が減ったり、事業資金を貯めにくくなったりします。ゆえに女性が起業した場合、「低所得・小規模・ノウハウ不足」にならざるを得ないのです。

    女性起業家が成功するには支援が必要

    だからといって、女性起業家が成功できないわけではありません。やり方次第で事業を軌道に乗せることができます。その一つが「支援制度の活用」です。最近は、国や地方自治体が起業支援に積極的であるため、公的な起業支援を活用しながら事業の安定化や拡大に必要な要素を補えるようになりました。

    女性だからこそ活用したい支援制度~その1.お金編~

    男性起業家と同様、起業に資金繰りの課題は付きものです。事業を軌道に乗せるならお金の支援制度の活用は欠かせません。起業時の資金援助として活用したいのが「補助金・助成金」と「融資」です。

    「補助金・助成金」と「融資」の違い

    「補助金・助成金と融資ってどう違うの?」と疑問を持つ人もいるかもしれません。これらは事業者を経済面で支援するという点で共通していますが、いくつかの違いがあります。ここで、具体的な補助金・助成金や融資制度の特徴を解説します。

    補助金・助成金

    補助金や助成金は、主に国や地方自治体などの公共機関が、地方活性化などを目的として事業者に投資して資金繰りを支援する制度です。出資のようなもので、事業者に返済義務はありません。

    ただし、国や地方自治体が提示する要件を満たす必要があり、申請時に審査が行われますが、一般的には補助金のほうが助成金よりも厳しいといわれています。また、採択された後も、適正にお金を事業に充てているかどうかのチェックが入ります。

    中小企業基盤整備機構の「地域中小企業応援ファンド」や厚生労働省の「雇用関係助成金」など性別を問わず活用できる制度のほかにも、東京都の「若手・女性リーダー応援プログラム助成制度」など女性起業家に特化した支援制度もあるので、自治体に問い合わせるなどして積極的に調べてみましょう。

    融資

    融資は金融機関や公的機関から、事業者へ〝お金を貸す〟支援制度です。こちらは借金であり、事業者は利息をつけて返済しなくてはなりません。また、無条件で融資を受けられるわけではなく、審査があります。事業に関連する財務諸表や事業計画書などだけでなく、起業家本人の信用情報、つまり日常生活での支払状況なども審査の対象となります。

    女性起業家向けの融資制度として日本政策金融公庫の「女性、若者/シニア起業家支援資金」があります。開業7年以内の女性起業家ならば年齢に関係なく事業資金の融資が受けられます。