日本は、女性の管理職割合が著しく低いと言われています。報道などで耳にしたことがある人は多いと思いますが、「それはそれとして、そのことの何が問題なの?」と疑問を持つ人もいるかもしれません。女性の管理職割合が低いと何が問題なのか。上昇すると何が変わるのか。日本の現状と課題を概説します。

日本の女性管理職割合はどのくらい?

女性の管理職は10%そこそこの数値

内閣府による2018年『政策・方針決定過程への女性の参画状況』によると、民間企業における女性管理職の割合は、課長相当職で10.9%、部長相当職は6.3%、上場企業の役員ではそれぞれ3.7%という数値です。政府は2010年、『第3次男女共同参画基本計画』において「社会のあらゆる分野において、2020年までの指導的地位に女性が占める割合を少なくとも30%にする」という目標を盛り込みましたが、達成にはほど遠い数値と言わざるを得ません。

国際的に見ても最下位レベルの数字

日本の女性管理職割合は、国際的に見ても低い数値です。独立行政法人労働政策研究・研修機構がまとめた『データブック国際労働比較2018』によると、2016年の女性管理職割合は12.9%。アメリカ(43.8%)、スウェーデン(39.3%)、フランス(32.9%)など欧米諸国と比べても、フィリピン(48.9%)、シンガポール(35.2%)などアジア諸国と比べても、低い水準に留まっています。

女性管理職割合を上げるメリットとは?

生産性や競争力がアップする

女性管理職割合の高さが起こすポジティブな効果は、第一に企業の業績を上げることです。社会学者の山口一男氏は著書『働き方の男女不平等-理論と実証分析-』(2017年、日本経済新聞社)で、女性管理職割合の高い企業では女性正社員の大卒度が高い生産性や競争力に結びついていること、女性の管理職登用機会の大きい企業ほど生産性や競争力が高いことを、統計的に実証しました。

意思決定の多様性が生まれ、イノベーションを起こす

女性の管理職登用など人材の多様化を図るダイバーシティのプラス効果は、『情報・意思決定理論』(国際ビジネス研究学会誌第1巻第2号・谷口真美氏)で説明されます。多様性のあるグループはより多くの情報ネットワークを持ち、新しい情報を得る際に有利となるので、イノベーティブな問題解決や意思決定においてプラスに働く、というものです。女性のニーズをすくった製品開発ができるなど、より市場を熟知した人材によるマーケティング上の優位も、人材多様性のメリットです。

日本の働き方を変えるカギになる

女性の管理職昇進をもっとも妨げる要素は、長時間労働と転居を伴う異動です(労働政策研究報告書No.192『育児・介護と職業キャリア-女性活躍と男性の家庭生活-』2017年、労働政策研究・研修機構)。長時間労働や転勤は、いまや女性だけの問題ではありません。女性が管理職に登用されやすい労働環境が実現すれば、男性を含めた日本全体の働き方も大きく変わることでしょう。