近年、働き方改革で副業が当たり前になりつつありますが、なかには「複業」として小遣い稼ぎ以上の規模で複数の事業を営む人もいます。ここで気になるのが税金の話。「複業」となると、小遣い稼ぎレベルの副業ほど単純ではないからです。

複業が当たり前の時代に……課題は「確定申告」

本業以外で副収入を得る仕事を「副業」といいます。しかし、近年では本業における収入の伸び悩みを懸念し「少しでも生活の足しに」と副業を持つ人が増えてきました。最近では「(多額収入の)本業+(少額収入の)副業」だけでなく、多額収入の事業を複数かけもつ「パラレルワーク」も見受けられます。

注意したいのが、確定申告です。「本業+副業」の場合、副業は基本的に雑所得(株式売買などは譲渡所得)で申告することになりますが、本業以外に多額の収入源がある「複業」の場合、次の3つに注意する必要があります。

  1. 給与所得かどうか
  2. その所得の事業規模が税法上「事業的規模」と言えるかどうか
  3. 生活の糧をどこから得ているか 今回は、複業の形をざっくりと2種類に分け、それぞれにおける確定申告のパターンについて解説します。

    「正社員+副業」の確定申告の方法

    正社員の副業収入が「生活の足し」程度ならば、正社員(本業)の収入は「給与所得」、副業での所得は「雑所得」あるいは「譲渡所得」として申告するのが一般的です。ちなみに、副業収入における年間所得額(総収入額ー必要経費)が20万円以下ならば、所得税での確定申告は必要ありません。

    問題は「副業の規模が大きくなった場合」です。事業の内容や規模によって、確定申告をする際に所得の種類が変わってきます。

    稼ぎ方によって所得の種類が異なる

    副業の規模が大きくなった場合に検討される所得の種類は次の2つです。

    1.事業所得

    事業所得には、農業や漁業、小売業や飲食店など、モノやサービスを提供する事業によって得た所得としてイメージされることが多いのですが、これ以外にも株やFXのデイトレーディングなどが該当する可能性もあります。事業所得で申告すると次のような節税メリットがあります。

  4. 赤字が発生した場合、他の所得と損益通算が可能
    ※雑所得では赤字は「0円」となり、節税効果はない
     
  5. 青色申告を行うとより節税効果が高くなる
    (例)赤字が出ると損失の繰越控除や繰戻還付ができる、黒字でも最大65万円の特別控除ができるなど ただし、事業所得として申告する場合には、その事業が「事業と呼べるだけの規模であるかどうか」を問われます。

    具体的には、「その事業による収入が生活の糧になっているか」「人材や時間、労力をどれだけ投入してその事業を『事業』たらしめているか」などといった条件を満たすことが必要です。

    「平日は正社員として働き、夜間や週末にアフィリエイトや販売、執筆や講師業で稼いでいる」といったケースでは、正社員としての給与所得が生活の糧となっているため、副業が事業所得として認められるのは難しくなります。すべてがダメとは言い切れませんが、「本業が独立自営の講師業だけれども、食べていけないので正社員としても給与所得を得ている」というくらいが安全な目安になるかと思われます。

    2.不動産所得

    複業の一つとして不動産投資を行う人もいます。賃貸物件の貸し出し(民泊を含む)は不動産所得、自宅の貸し出しは雑所得として取り扱います。それぞれが副業レベル以上のものになった場合、次のように所得区分が変わる可能性があります。

    (1)自宅の貸し出しは「雑所得」から「事業所得」に変更

    (2)自宅以外の賃貸物件の貸し出しは「不動産所得(青色申告の控除額10万円)」から「不動産所得(青色申告の控除額65万円)」に変更(※白色申告の場合は変更ありません)

    青色申告の特別控除額の判断は次のように分かれます。

    「5棟10室(※)」の要件を満たす事業規模の場合……65万円控除
    上記以外の事業規模の場合……10万円控除

    ※「5棟10室」……家屋の貸付ならば5棟以上、アパートなどの部屋貸しならば10室以上が事業的規模の基準という目安

    住民税には要注意

    正社員の複業で注意したいのが、身バレリスクです。副業禁止を就業規則に定めている勤務先に正社員以外の仕事をしていることがバレる可能性があります。なぜかというと、正社員の場合、住民税の納付書が勤務先に届くからです。住民税額が前年の給与所得などと比較して過度に多い場合あるいは過度に少ない場合、副業が疑われる可能性があります。

    身バレしにくい方法として、例年3月15日までの所得税の確定申告書作成の際、「住民税の納付方法」について「普通徴収(自分で納付)」を選択するという方法がありますが、「完全にバレない」という保証はできません。