日々、働くうえで健康はとても大切なことです。しかし、私たちが健やかに働く環境を脅かしかねない存在に「クラッシャー上司」がいます。

今回は「クラッシャー上司」の定義や特徴、対処方法を紹介します。

クラッシャー上司とは?

(写真=J Walters/Shutterstock.com)

「クラッシャー上司」とは、東京慈恵会医科大学名誉教授の牛島定信氏と筑波大学大学院教授の松崎一葉氏が名付けた概念で、労働問題にまつわる用語の一つ。

NHK解説アーカイブス「クラッシャー上司にご注意を」(2017年4月7日掲載)によると、クラッシャー上司とは、気分の浮き沈みが激しく、部下のミスを執拗に責め暴言を吐いたりして次々と部下をうつや休職、退職に追い込んで潰してしまう上司のことをいうそうです。

一般的には、ひどいパワハラがあれば、社内のコンプライアンス規則に従って処分・是正されるはずですが、クラッシャー上司と呼ばれる人たちは、能力が大変高く仕事上で高い成果を上げる人たちです。その結果、会社は厳しく処分することができずに、パワハラが黙認されて部下たちがパワハラの被害を受けて精神的に追い込まれて潰れていきます。

クラッシャー上司の特徴

(写真=Elnur/Shutterstock.com)

クラッシャー上司の名付け親である松崎一葉氏は著書『クラッシャー上司 平気で部下を追いつめる人たち』(PHP新書)のなかで、クラッシャー上司の特徴を、

  • つきっきりの指導
  • 悪意はないが、鈍感
  • 皆の前で「指導」
  • 休む間を与えない
  • とんとん拍子に出世
  • 安易な「幼児的万能感」
  • 歪んだ自己愛
  • 他者に共感できない と述べています。

    クラッシャー上司は、仕事ができる人たちであるがゆえ、自分ができる仕事と同水準のものを部下にも求めて精神的に追いつめてしまいます。しかし、悪意がなく、鈍感なので自分が無理な要求を部下に求めていることがわかっていません。

    クラッシャー上司から身を守るための12の方法

(写真=GiorgioMagini/Shutterstock.com)

クラッシャー上司から身を守るためにはいくつかの方法がありますが、大きく分けると(1)クラッシャー上司の部下になった場合の対処方法、(2)クラッシャー上司から攻撃されたときの対処方法・心構え、(3)攻撃された後の対処方法の3つになります。

1.クラッシャー上司の部下になった場合の対処方法

クラッシャー上司の部下になってしまった場合には以下の対処方法が考えられます。

 (a)そもそもクラッシャー上司から、文句を言われないような非の打ち所がない仕事を心がける
 (b)自分の成長に必要なことだと割り切る
 (c)同じ部署の同僚や同期と気持ちを分かち合う
 (d)異動願いを出す
 (e)クラッシャー上司から攻撃を受けた場合の対応マニュアルを作成する

この段階ではまだ攻撃を受けていないので、対処方法にはいくつかの選択肢があります。また、実際に攻撃を受けてしまった後、次に攻撃されないため、あるいは気持ちを整理するためにこれらの対処を行うこともあると思います。

2.クラッシャー上司から攻撃されたときの対処方法・心構え

クラッシャー上司から執拗に攻撃を受けるようになってしまったときは、以下のような対処方法が考えられます。
 
 (a)人の気持ちがわからない人なのだと一歩引いた目線で見る
 (b)暴言などは聞き流し気に留めないようにする
 (c)その場ではイエスマンを演じる

すでにクラッシャー上司から暴言などの攻撃を受けている段階なので、攻撃を受けた場合にどういう心持ちで接したら良いのかなどがメインになってきます。

3.攻撃された後の対処方法

クラッシャー上司から攻撃を受けてしまった場合、どのように対処したら良いのでしょうか。対処法としては以下のようなことが考えられます。

 (a)家族などの職場外の人に相談する
 (b)職場の同僚に相談する
 (c)上司の上司や人事部に相談する
 (d)労働基準監督署や都道府県労働局の窓口に相談する
 (e)休職や転職を検討する

クラッシャー上司から攻撃を受けてしまった後は、実際に相談を行うべきなのか、それとも心を壊すぐらいなら異動や休職、転職を検討するべきなのかと、実際に行動を起こすことを検討する段階になってきます。

クラッシャーを生む企業構造は現在社会に通用しない?

(写真=nd3000/Shutterstock.com)

クラッシャー上司は仕事で高い成果を上げるがゆえに企業は厳しい処罰を行うことができませんでした。

しかし、現在の日本の雇用環境を考えるとクラッシャー上司を生む企業構造は通用しなくなってきています。

なぜなら、働く人たちの意識はワークライフバランスを重視するようになってきているからです。働き方も多様になってきており、企業に属するという意識ではなく、自身の持っている専門スキルを活かしての「ジョブ型雇用」が多くなってきています。クラッシャー上司を生むような企業構造では優秀な人も集まらなくなるでしょう。

企業が長期的に成長するためには、短期的に成果を上げる「クラッシャー上司」を守るよりも、優秀な若手社員がのびのびと働ける環境を整えた方が良いのです。

文・田中祥太(中小企業診断士)

【こちらの記事もおすすめ】
「デキる!」と言われる幹事が外さない3つのポイント
そろそろ次を考えたい…転職にベストな年齢って?
どっちが幸せ?「正社員女子」」VS「契約社員女子」