(本記事は、冨田和成氏の著書『稼ぐ人が実践している お金のPDCA』KADOKAWA、2018年5月26日刊の中から一部を抜粋・編集しています)

なぜ年収1000万円が損なのか?

年収が1000万円に到達したら、ひとまず自らの稼ぎ力がうまく発揮できていると考えていいでしょう。

一般的に言って、年収が1000万円に達すると、「お金持ち」と見られることが多くなります。マネー誌などの特集でも「年収1000万円」をテーマにしたものを頻繁に見かけるのは、ここが「お金持ち」とそうでない人の分岐点だと思われているからでしょう。

ところが、P/Lの費用という観点から見ると、年収1000万円の人たちは最も”割を食っている”と言えるのです。

この数式は何を表しているでしょうか。

〈1000万円-600万円=250万円〉

計算が合いませんよね。

実は、年収600万円の人が、400万円アップの年収1000万円になっても、手取りで増えるのは約250万円にしかすぎないという事実を表しているのです。

収入が上がると、社会保障関連の税金や年金の掛け金も増加するので、額面どおりに現金を手にすることはできないのです。

詳しい計算は省きますが、42歳男性(専業主婦の妻、高校生の息子、2歳の息子の4人家族)の場合、世帯年収が1000万円のときの手取り年収は約750万円です。同じ42歳男性の年収が600万円のときの手取り年収は約500万円。

つまり、年収が400万円増えても、実質250万円しか増えないのです。

税金の最適化をするのであれば、1人で1000万円稼ぐより、夫婦で働いて世帯収入を1000万円にするほうが得策です。

こうすることで、限りなく額面に近いお金を手に入れられます。たとえば、夫婦で年収約910万円の地点にラインがあり、この金額を超えると子どもの高等学校等就学支援金制度(高校授業料無償化)の枠から外されます。

また、年収960万円を超えると、児童手当も減額の対象になります。

なにより累進課税を導入している日本では、年収が上がれば上がるほど税負担が大きくなります。

したがって、年収が1500万円を超え、2000万円、3000万円に達するようになったら、高額の税金を払う覚悟をしなければなりません。たとえば、年収が4000万円を超えると、所得税45%、住民税10%となり、最高税率の55%が課せられます。

これだけの税金を支払うので、国や地域への貢献度は高まりますが、P/LとB/Sの概念をベースにした財政管理という観点からは効率的とは言えません。

自分の年収が1000万円を超え、税率が20%を超えたら、金融所得(キャピタルゲインやインカムゲイン)を増やすことを考えるほうが利回りは高くなっていきます。

金融所得に対する税率は一律20.315%のため、現在の税制においては、いくら稼いでも20.315%というわけです。

稼ぐ人が子どもの教育に投資する本当の理由

いわゆる富裕層や稼ぐ人は、自分の子どもの教育に莫大な投資をすることを惜しみません。

なぜ稼ぐ人は教育に熱心なのでしょうか?答えをひと言で表現すると、「頭脳に税金はかけられないから」です。

資産が膨らんでいくと当然、最後に多くの相続税を納める必要があります。

日本の相続税率は最高で55%。世界的に見ても高い水準にあり、ときには相続破産という悲劇が起こっています。仮に相続税が払えたとしても、子どもや孫に自ら稼ぐ能力がないと資産は3代で食いつぶされると言われています。

せっかく努力して財をなしたからには、自分の子どもたちが食べていけるようにしたい。それこそ親心です。

だから子どもの教育にはできる限りお金をかけ、稼ぐための能力を身に付けさせようとするのです。

実のところ、最終的に相続税として資産を取られてしまうことを考えれば、子どもが小さいときに教育費を払うことは最高の資産移転となります。

富裕層の親たちは、名門学校での英才教育やインターナショナルスクール、ボーディングスクール、MBAなどの環境を子どもに与えます。

また、そうした学校に行くための一流講師による個別指導もつける。子どもの教育に平気で数千万円を投じることも珍しくありません。子どもの育つ環境を重視して住む場所を変えることすらあります。

小さいときからそのような教育環境を与えられた子どもたちは、富裕層や成功者のネットワークの中に入ることで、将来につながる貴重な人脈を手に入れることができます。

また、グローバルな教育を受けることによって子どもたちはさまざまな価値観を学び、思考力や問題解決力を身に付けていきます。すなわち、稼ぎ力が身に付くので、最悪1円も資産移転できなかったとしても、その子ども本人は十分に稼ぐことができるかもしれません。