「外貨預金」を最終投資目的とした、海外投資を考えている方も多いでしょう。海外投資では必ずと言ってよいほど、「為替」が絡みます。為替の性質やどのようなタイミングを見計らって外貨に投資すべきかなどを学んでいきましょう。

(本記事は、諸星 きぼう氏の著書『お金は週末に殖やしなさい』=クロスメディア・パブリッシング/インプレス、2010年10月11日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)

外貨預金やFX取引は、短期債券という考え方

海外投資を考えるとき、どうしても為替が絡んできます。円ベースでのリターンを考えている人であれば、為替水準というものが“決定的”に重要になってきます。

新興国株式への投資についての節でも、為替水準を考えて投資をすることを述べました。単純にいえば、円高のときに投資し、円安のときに回収する、つまり円に戻すことが円ベースでの利回りを最大化することになります。

とはいえ、新興国株式などへ投資する絶好のタイミングは選べない場合もあります。そこで外貨という形での投資資金の保持、つまりは外貨への投資をしておき、いつでも最終目的投資先へ投資できるようにしておくという考え方が良いでしょう。

外貨への投資というと思い浮かべるのが、「外貨預金」でしょう。これが最終投資目的先という方が多いでしょうが、海外株式や海外債券、はたまた海外不動産などへの投資の準備資金としての位置付けとして考えてもいいですね。

リーマンショック時に豪ドル円が円付近まで下落したとき、豪ドルに投資できた人はあまりいなかったようです。FXで投資している人たちの中には、既存のポジションの評価損が膨らみ動けないという事情があった人も多いと思いますが、キャッシュで買う人であれば、お金さえ持っていれば買うことができたはずです。

でもなかなか買えないというのは、どこまで下がるかわからないという恐怖心が先にたったのでしょうが、キャッシュで買うのであれば評価損など気にせず、過去15年での底値圏であることを知っていれば買うことができたでしょう。

仮に40円まで下落していったとしても、長い目で見れば円付近であればかなりの安値圏であり、円ベースでの利回りを考えるにしても十分でした。

ですから、長期のチャートで見て安値圏にあるときに、今後投資したい通貨を仕込んでおくということが大切だと思います。

当該通貨が安値圏にあるということは、当該国の景気が悪いことが多く、金利は最低水準にあることが多いでしょう。ですから、長期債券や長期の預金をするタイミングではありません。

為替リスクとの付き合い方

外貨への投資、海外投資というと、常に“為替リスク”がつきまとうかのごとくいわれています。では、この為替リスクとは何でしょうか?

為替リスクは、たった1つのケースしか起こりえないと私は思っています。それは、外貨資金を円転して日本国内で何かを購入しなければならないケースです。こうしたケースのとき、円高になっていると外貨を円転した場合の円貨が少なくなってしまうからです。

しかし、こうしたケースは稀だと思っています。日本国内で買い物をするための資金を外貨にしていること自体が投資スタンスとして違っていると感じます。

なぜなら、国内での消費のための資金は、流動性として保持している資金か、給料のような毎月のキャッシュインフローで賄うべきものだからです。

仮に、将来不動産といった大きな買い物をするために外貨で運用していたとしても、その購入タイミングは選択できるはずです。つまり、為替も含めて運用益が十分になったところで円転し、その後不動産購入のタイミングを計るべきだということです。

現状のような日本のデフレが続き、仮にデフレを克服したとしても、円金利は世界的に低水準が続くと思われ、円キャリートレードは続くと思われます。ちなみに円キャリートレードは1980年代から行われてきています。

こうした状況下では、不動産の絶好の購入タイミング、つまり不動産価格が下落しているときは世界的に景気が悪いことが多く、投資家のリスク回避行動から円高になっていることが多くなるでしょう。ですから、外貨を円転するには最悪のタイミングと重なってしまうのです。

従って、円転は好況期の円安のときに行っておく必要があるのです。外貨への投資や海外投資は、通常は普段使う必要のない資金で投資しておくことが基本です。

為替の動きも、少なくても年というスパンでは、波のように“行っては返し”の循環ですから、円転をするならば円安のタイミングを見計らって行うのが良いでしょう。

外貨預金のリスク説明で、満期になったときに円高になっていると、当初預金した円金額よりも少なくなっていることがある、といった説明がありますが、何も円高になっているときに円転する必要はなく、外貨のまま保持すれば良いだけです。

金融庁を怖れたリスク説明なのか、円転、購入を繰り返させて手数料を稼ごうという魂胆なのか、誤解を招く説明がなされていることが気になって仕方ありません。

外貨定期預金の期日に円高になっていたら、元利金共に継続すればいいだけです。まさか、その期日後にすぐに何かを購入する資金ではないですよね。

ただし、30年といった長期のスパンで考えるときは、別の考え方が必要です。米ドルを見たらよくわかると思いますが、1971年のニクソンショック以来、10年スパンくらいで見ると上昇している期間もありますが、米ドルの価値は下がり続けています。こういった通貨には、そもそも投資してはいけないのです。

通貨価値が上昇するであろう通貨は、どんな国の通貨でしょうか?それは、その国の経済規模が一定規模以上になっていて、経済力がどんどん強くなっていくような国の通貨です。今でいえば、中国の人民元のような通貨です。

インド・ルピーやブラジル・レアルといった通貨もその候補ではありますが、通貨価値にとっての大敵であるインフレ率がまだ高く、それを制御できるかは未知数です。

人民元にしても、まだ資本自由化されておらず自由に売買できないので、通貨としてはまだ投資対象になりえないのが現状です。

外貨投資に、為替リスクは存在しない

長期で考えたとき、今の私たち日本人にとって外貨投資に為替リスクは存在しないと、2つの意味から私は考えています。

一つ目は、現状、日本の為政者のリーダーとしての資質を考えたとき、莫大な財政赤字を解消する、もしくは財政破綻を回避する手立てとしては、インフレを起こすしかないと考えています。

人為的にマイルドにインフレを起こしていくことが望ましいのですが、日本銀行は自らの責任を問われるのが怖いらしく、金融緩和に対して消極的です。ポイントオブノーリターンの時が刻一刻と近づいています。

自力で行わないならば、どこかの時点でマーケットが暴力的に行うことになるでしょう。それは“円売り”が起き円安となることによって引き起こされます。または資源・食糧輸入国である日本は、資源・食料価格の急騰によって、インフレが起き円安になるかもしれません。

更には、輸入物価の高騰で経常収支が悪化し、円安になるというパターンも考えられます。従って、長期的に必ず円安になるので、外貨投資は円の手取り額を増やす方向に働くので、為替リスクは存在しないといえるのです。

もう一つの考え方は、円高になっても円安になっても、外貨投資を行っている投資家にとってはフェーバーだという考え方です。

外貨投資をするにしても全資産を、外貨へ投資するわけではないでしょう。円資産と外貨資産をバランスよく保有しているはずです。

円安になれば外貨資産の円評価額が上昇しフェーバーですし、円高になれば円資産の評価額が上昇します。ですから、円での評価額を考えている人にとっては、円高は目減りしたと考えられるかもしれませんが、本当の資産評価は違うのです。

これだけグローバル化した時代に、少なくても長期の資産運用という観点からは、円での評価だけを考えても無意味だと思います。確かに国内においては円で取引していますが、その元となるコストは円だけで構成されているわけではないからです。

私たちは一人日本で鎖国して暮らしているわけではありません。世界がグローバル化していく中で、ヒト、モノ、カネがどんどん自由に出入りする世界で暮らしているのです。

長期の資産運用を考えるときは、ご自身の資産が世界的に増えたかどうかを考えるべきなのです。まずは、発想の転換が求められるのです。