キャリアアップで重要な「交渉術」は、たとえセールスのような短期的な交渉でも相手と信頼関係を築き、ポジティブな影響を与える上で欠かせない。

人と人との関係に焦点を当て、相手の心を動かすことに重点を置いた、元FBIのトップ・ネゴシエーター(交渉人)クリス・ボス氏の交渉術は、ビジネスや私生活でも役立ちそうだ。

交渉・説得・紛争に役立つ3つの感情的知能とは?

ボス氏はFBI時代に、誘拐交渉人として15年間のキャリアを積んだ。手掛けた交渉件数は150を上回り、世界中に何千人もいるFBIエージェントの中でトップクラスの誘拐交渉人だった。

ボス氏のように人質の交渉をする機会は日常的に訪れるものではないが、ビジネスシーンや私生活において周囲と交渉する機会は誰にでも訪れる。「新規の顧客を獲得する」「大口の契約をとる」「昇給や休暇を得る」「10ゲームばかりしたがる子どもに勉強をさせる」など、交渉の内容は様々だろう。

著作『EQ Applied』の中でボス氏の経験やテクニックについて解説しているジャスティン・バーリソン氏 いわく、影響力のある関係を管理するためには、「自己認識」「自己管理」「社会意識」の3つの感情的知能が必要となる。これらのスキルは、異なる状況下での交渉、説得、紛争の管理に役立つ。

交渉成功の鍵は「影響力」

交渉を成功させる上で重要なカギを握るのは「影響力 」だ。強制あるいは命令する素振りを見せず、相手の心を動かすほど大きな影響を与えることが出来るかどうかで、結果が決まる。

どうすれば相手に影響を与えられるのか?たとえセールスのような短期的な交渉の場だとしても、「interaction(互いに影響し合う)」を通して人間関係を築くことを意識しよう。

あらゆる人間関係には、「助ける・助けられる」「害を与える・受ける」といったポジティブまたはネガティブな影響が潜んでいる。自分が相手に影響を与える能力、相手が自分に影響を与える能力次第で、人間関係は左右される。気の弱いセールスマンと有無をいわせぬ独裁的な交渉相手では、最初から交渉相手が優勢な立場にいるように思えるが、形勢を逆転させることは可能だ。