誰でも一度は、仕事をしていて「転職したい」と考えたことがあるのではないでしょうか。実際に転職に向けて行動する人は一部かもしれませんが、もし本気で転職を目指すなら、さまざまな準備が必要です。

特にお金の備えは重要。次の職場へ就職するまでに無職期間があることを考慮すれば、貯金は必須になりますし、生活費の見直しによる節約も大切です。不安のない就職活動をするためには一体どれほどのお金が必要なのか、そして、前もって何をしておくべきかを見ていきましょう。

転職するには貯金はいくら必要?

転職活動中は何にお金がかかるのか

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安心して転職活動をするには、お金をしっかり備えておく必要があります。では、転職するにはどのくらいの貯金があればいいのでしょうか。今の職場で働きながら転職活動できれば問題ないかもしれませんが、退職して転職活動に専念するとなれば、それなりの蓄えをしておくことが重要になります。

まず、転職活動にかかるお金には、どのようなものがあるのか考えてみましょう。

生活費はもちろんですが、転職活動で主にかかるのは、面接のための「交通費」です。他の業種や職種への転職も選択肢に入れている場合は、多くの企業に足を運ぶ可能性が出てきます。その他にも、スーツや靴など、転職活動に向いた身だしなみのための衣類や小物を買い足す必要があるかもしれません。

また、転職先の分野に関する勉強をするなら「学習費」もかかりそうです。そして、外に出る機会が増えるため、外食が増えることも考慮しておいたほうがよいでしょう。

自己都合退職だと失業保険はすぐにもらえない

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なかには、「退職したら、しばらくは失業保険がもらえるから大丈夫」とゆったり構えている人もいるかもしれません。けれども、実はそうとも言い切れないのです。

失業保険、正式には「雇用保険の基本手当」と言いますが、給付される日数や金額はどのような理由で退職したかによって変わります。

特に、転職活動を理由とする退職は「(正当な理由のない)自己都合による退職」と見なされることに注意しましょう。その場合、失業保険をもらえるのは、ハローワークで受給手続きをした日から数えて原則7日間の待機期間に加え、さらにその翌日から3カ月間の給付制限期間を経てからです。

そして、自己都合退職の場合、失業保険はどのくらいもらえるのでしょうか。失業保険の給付日数と金額は、退職理由に加えて、雇用保険の被保険者期間でも変わります。

雇用保険の被保険者期間/失業保険給付日数
* 1年以上10年未満:90日
* 10年以上20年未満:120日
* 20年以上:150日

60歳未満の場合、1日当たりの給付額は、退職日前6カ月の賃金日額のおおよそ5~8割です。

なお、退職理由が転職なら、退職前に失業保険を受給できるかを確認しておきましょう。正当な理由のない自己都合退職の場合、失業保険をもらうには「離職した日から過去2年間の間に、雇用保険の加入期間が通算12カ月以上であること」という条件を満たしている必要があります。この条件をクリアしていないと、会社を辞めても失業保険は受け取れることはできません。

転職活動期間に必要な貯金額を計算する

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失業手当がもらえることを前提にすると、転職に必要な貯金額はどのように計算すればいいのでしょうか。そこで考えなければいけないのが、転職活動がどのくらいの期間になるかです。

半年程度と見ておきたいかもしれませんが、長引くことも考慮して、できれば1年間で見積もっておくのが安心でしょう。つまり、転職するのに必要な貯金額は

1年間の生活費(転職活動費含む)ー失業保険の受給金額

となります。たとえば、生活費と転職活動費が合計で毎月20万円かかるとし、転職活動の期間を1年間と仮定します。給付される失業保険手当が60万円だとすれば、転職に必要な貯金額は「20万円✕12カ月ー60万円」で180万円ですね。

意外とお金がかかると感じた人が多いのではないでしょうか。1年間分の生活費を貯めるのが厳しければ、最低でも半年分の生活費は貯めておきましょう。理想を言えば、いざというときの費用として2割程度上乗せできるとさらに安心です。

転職までにしっかり貯金しておく必要があると強調するのは、転職活動期間の生活費をまかなうためはもちろんですが、精神的な不安を少しでも和らげる意味合いもあります。

無職の期間というのは、それだけで気持ちが不安定になりやすいもの。ギリギリの貯金を切り崩して生活していては、転職に対する焦りが増し、正確な判断ができなくなってしまう危険もあるでしょう。

とにかく就職しなければ……と急いで転職した先が自分に合わない会社だったら、また転職を繰り返すという事態にもなりかねません。落ち着いて転職活動を行うためには、事前にしっかり蓄えておきたいですね。