自然と光が照らしてしまう男

 しかもなぜか、必ず山瀬の顔には光が差している。

 第1話では特別応接室で清掃する山瀬に昼下がりの外光が差して、麻理鈴を見つめる優しい表情を縁取っていた。第2話では、麻理鈴と手分けしてリストラ候補者リストを探しまわるときのなにげない表情を、やっぱり窓から差し込む光が引立たせる。それから第4話では、社屋の外でちょうど西日を受けた柔らかな表情がたまらなく美しかった。

 登場のタイミングといい、光の差し加減といい、やっぱり天才的な高橋。ぷにぷになほっぺたを柔らかくぷくっと膨らませて、きれいな輪郭の唇はゆるく結ぶ。視線は、相手にはっきりと向けきらずに、曖昧に漂わせる。

 ネクストブレイクを経たイケメン俳優の中で、これだけ自分の見せ方にこだわり、徹底するなんて、あざといというか、意外にストイックだなと思う。そんな彼を自然と光が照らしてしまう男として際立たせる本作の演出は、秀逸そのものだ。

「文哉目線」の繊細な心の動き

 第6話から山瀬は、清掃員のアルバイトを終えて、新年度の新卒社員として麻理鈴と同じ営業四課に配属される。2年目にして初めての後輩ができてやる気十分な麻理鈴に対して、山瀬の気持ちはどんどん盛り上がっている。外回りのあと、すれ違った男性社員たちが「TOB」(株式公開買付)と話すのについ反応してしまう麻理鈴を見て、こんなモノローグを漏らす。

「T.O、つまり、タダシオノ。好きな人をイニシャルで呼ぶ奥ゆかしさ。悲しいけれど、素敵でもあります」と言って伏し目がちに短くため息をつくのを見て、いやいやむしろ高橋君、あなたが一番奥ゆかしく、美しい! と筆者は思わず叫んでしまったのだけれど。

 伏し目がちといったらいいのか、それとも流し目といったらいいのか、とにかく高橋独特の視線の流し方がある。名付けて、「文哉目線」! それがモノローグにとけ合いながら、繊細な心の動きを語る。あまりに美しい。しかも文学的。文哉目線に心打たれたこちらが思わずため息をもらしてしまうほどだ。