香川県西部の山間にある「豊稔池ダム」。中世ヨーロッパの古城を思わすそのたたずまいは、美しいだけでは無く、その力強さや迫力も魅力となっています。最近では、フォトジェニックな写真が撮影できると人気スポットに!毎年夏に行われるユルヌキ(放流)風景は季節の風物詩として沢山の人が訪れる人気イベントです!
日本で唯一!石積式マルチプルアーチダム
阿讃山脈を分け入る柞田川上流に「豊稔池ダム」はあります。雨風にさらされた石積の堰堤は、まるで中世ヨーロッパの古城の様!美しさと風格を兼ね備えたダムです。
ダム好きなら一度は訪れてみたい!と言われるダムですが、最近ではその風格あるたたずまいから、フォトジェニックな写真が撮影できると幅広い層の方に人気です。
堤長145.5m、堤高30.4mのコンクリート造溜池堰堤で、外面の一部を石積みで仕上げています。5連のアーチと6個の扶壁(バットレス)からなるマルチプルアーチ式で、宮城県の「大倉ダム」も同じ様式で造られていますが、石積と5連のアーチとなると、日本で唯一、この豊稔池ダムだけになります。
「豊(ゆたか)」に「稔(みのり)」をもたらす豊稔池堰堤(えんてい)
さて、この美しいダムはなぜ造られたのでしょうか。実は、そこには農民達の切なる願いが込められていました。
ご存知の通り、香川県は水不足になる事があり、ここ大野原町も例外ではなく、干ばつに苦しむこともしばしば。水不足を解消しようと農民達が力を合わせて、この豊稔池ダムを完成させました。
大正時代の大干ばつをきっかけに、国に掛け合い、ダムの築造が始まります。工事には池の下流に住む農民達も参加し、3年8ヵ月の工事を経て、1929年(昭和4年)に完成しました。
外観の美しさだけでは無く、希少な構造形式、昭和前期における堰堤建設の技術的達成度などから、平成18年12月19日に重要文化財に指定されました。
もとは地名に因んで「田野々池」と呼ばれていましたが、昭和4年5月に三土忠造大蔵大臣が現地視察をした際に「豊稔池」と命名されました。地域に「豊」な「稔」をもたらす「池」と願いが込められていたのだと思います。