用水路に落ちてずぶ濡れに
移住先は環境もよく、時間の流れが穏やかで、自分の決断に概ね満足していた梨乃さん。ところがある日、梨乃さんにまたも災難がふりかかりました。保育園に向かうのどかな農道を自転車で通勤中に、前から来た車を避けようとしてバランスを崩し、農道脇の用水路に落ちてしまったのです。
「一瞬何が起こったのかすぐに把握できませんでした。どーん、というショックで気がついたら周りはコンクリートの壁でした。とりあえず、腕と膝はすりむいて少し出血していたんですが、手足は動いたので少しホットしました。でも、腰の下までずぶ濡れになりました」
ただ、用水路は思ったより深く、簡単に這い上がることもできません。携帯も水没してしまい絶望していたところ、たまたま近くを軽四で通った農家の人が気づいてくれ、なんと梨乃さんを近所の診療所まで乗せていってくれたそうです。
スタッフは年配の看護師が一人だけ
農家の人に連れられた場所は、まるで一軒家のような小さな診療所でした。
中へ入ると、木曜日の午前中だったため、スタッフは年配の看護師が一人だけ。とりあえず傷の消毒を行い、打撲していることも伝えると「あすの午後なら先生が居るから、もう一度来てほしい」と言われ帰宅した梨乃さん。
命の恩人である農家の人は、診察中も梨乃さんを待っていてくれて、その後自宅まで送ってくれたそう。
「つくづく田舎の人は親切だな、と感じました。それだけでも傷は癒えそうで、ほんと感謝しかありません」と語る梨乃さん。
一晩安静にしていた梨乃さん。幾分打撲の痛みは減ったので、翌日は自宅からタクシーに乗って診療所に出向き、殺風景な入り口のドアを開けて中へ入った梨乃さんは一瞬息を飲み込んだそう。