トラウマに一生捉われることはないと思いたい
――先生に関しては、最終話のセリフについても相当悩まれたとか。
おかざき:学校で起きた事件について考えると、今の価値観で言うと先生って完全なる被害者じゃないですか。その一方で、17歳の何も考えていない子供が加害者になっている。でも、その構図だけで終わらせたくなくて。全てが通過点であり、先生は別に負けても勝ってもいない。事件によって先生のすべてが失われたわけではないんだよ、としたくて、先生のセリフを足しました。
燃え殻:そこは、おかざきさんと僕の間でもいろいろ話をしたところで、おかざきさんが描いた結論をすごくおもしろいと思いました。僕は常々、いま思っていることや感じていること、おもしろいことも悲しいことも全て通過点と思うことによってやりすごせると思っているんです。この作品でいうと、先生にとっては深いトラウマになるようなことが起こる。でも、人にはいろんなトラウマがあると思うんですけど、そのトラウマに一生捉われるわけではないって、思いたい。
おかざき:1話につき1冊分くらいは描けそうな物語を、10話で1冊にぎゅっとまとめたので、私が今までに描いた漫画の中でも圧倒的に濃密な1冊になっていると思いますので、ぜひ手に取ってみてほしいです!
(C)HJホールディングス
Huluオリジナル『あなたに聴かせたい歌があるんだ』あらすじ
あの時、17歳だった僕らは27歳の大人を冷めた目で見ていた。17歳は、どんな夢も叶うと信じていた無敵で最強の時期だったけれど、時間は誰にでも平等に流れている。僕らはあの時の大人と同じ27歳になった。役者になる夢を諦めきれずにもがく荻野智史(成田凌)、アイドルになりたかった前田ゆか(伊藤沙莉)、小説家志望の片桐晃(藤原季節)、売れないバンド人生に区切りをつけラーメン屋を継ぐ中澤悠斗(上杉柊平)、人気アイドルのモノマネに活路を見出した島田まさみ(前田敦子)、そして17歳だった彼らに27歳という年齢を刻んだ元英語教師の望月かおり(田中麗奈)。27歳だった先生と27歳になった生徒たちの運命が10年の歳月を経て再び交わろうとしていた。
<取材・文/山脇麻生 撮影/増永綾子>
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