役柄をとおして“バレない”くらいが理想
――今回の大学生役のように新たな役柄に挑めることは、俳優業の楽しみなのではないですか？
鈴木：そうですね。演じているのは自分なのに、違う人の人生を思い描いて、その人に自分がなるわけなのですが、そこからさらに自分自身を知ることもあるんです。
自分でも気付けなかった部分に、役をとおして気付いたりする。あとは作品が残ることもいいですね。僕が写真を好きな理由も同じです。写真も映像も、表現することの一環として捉えています。
――将来的にはどういう俳優になりたいですか？
鈴木：気付かれないくらいでいいかなと。役柄をとおしてバレないくらいの感じが理想なんです。「あの人、鈴木がやってたんだ」と思われたいです。
――それはなぜですか？
鈴木：役柄は自分ではないからです。たとえば作品の放送が終わって「この人だったのか！」と驚かれるくらいその人になり切れるって、素晴らしいことだと思うんです。
でも、気付いてもらいたいとも思うんですよね（笑）。それはみんなが思っていることだと思います。自分自身の印象が強いことも必要だし、それで世間に注目してもらえるとは思うのですが、やはりいろいろなお仕事を経験してくなかで、根本的には役柄をとおして“バレない”くらいの感じが理想だなと思うようになってきました。
“自分の意外な一面”に気づいた役柄も
――「自分でも気付けなかった部分に、役を通して気付いたりする」とのことですが、今までで一番の体験は何でしょうか？
鈴木：デビューして2作品目の『花のち晴れ〜花男 Next Season〜』というドラマに出たとき、かなり明るく「女の子が大好き」みたいな役でした。僕自身はそういうものに触れてこなかった人生なので、明るくふるまうことについて考えたし、周りの人をよく観察しました。
でも初めの頃は、“やっている風”になってしまったんですよね。「つかみどころがないな」と思っていたので、監督と話したりしながら工夫して演じるようにしました。
そのとき、自分でも意外な一面を感じたんです。もっと明るく人生を過ごしていれば、違う方向になっていたかもしれないと思いました（笑）。自分の声色の幅も知りました。お芝居は自分のコンディションも影響するので、面白い仕事だなとその時思いましたね。
――現在の課題や、伸ばしたいところは何ですか？
鈴木：会話劇ですかね。会話で回すような芝居をしたいです。より普段に近いようなしゃべり方をお芝居でしたことがないので、今後やってみたいです。作品ごとにさまざまな演じ方を学んでいかないといけないので、そういうところが課題だなと思っています。
――プライベートを含め、この先の人生設計についてはいかがですか？
鈴木：難しいですね（笑）。ずっとこれで行くと決めているわけではないですし、自分の今やるべきことをやっている段階かもしれません。今の仕事を続けたいし、モデルとしても活動したいし、服が好きなので服も作ってみたいし、写真が好きだから写真も撮りたいです。スタッフさんを通じて仕事を見ているので、裏方にも興味はあります。
何になりたいかというよりは、「いろいろなものに興味を持つ」ということをずっと続けたいなと思っています。
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＜取材・文／トキタタカシ＞ トキタタカシ 映画とディズニーを主に追うライター。「映画生活（現ぴあ映画生活）」初代編集長を経てフリーに。故・水野晴郎氏の反戦娯楽作『シベリア超特急』シリーズに造詣が深い。主な出演作に『シベリア超特急5』(05)、『トランスフォーマー/リベンジ』(09)（特典映像「ベイさんとの1日」）などがある。現地取材の際、インスタグラムにて写真レポートを行うことも。
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