偏差値の差が経済力で決まるのはおかしい
――哲夫さんが低価格の学習塾を始めようと思ったきっかけは何だったのでしょうか?
哲夫:学力の目安として偏差値が30とか75とかありますけど、「その差が家庭環境によって起こるのはおかしいやろ」とずっと思っていたんです。塾に行って勉強したいと思っても、今は大手の塾代が月に6万円とか7万円とかかかると聞きます。それだとある程度、経済的に余裕のある家庭の子しか通えません。それでは変だから「いろいろな所得の家庭の子どもが行ける塾があって然るべきや」と思ってるだけなんです。
僕自身はそういうものを打破した人間だと思ってます。県で1番偏差値の高い公立高校である奈良高校を出ましたけど、実家は全然お金持ちじゃありません。中流よりやや下くらいだったと思います。「そんなにお金をかけなくても偏差値の高い学校に行くことは可能なんや」と証明したかったんです。
――学校の先生もクラス全員の学力をフォローすることが難しいので、低価格で通える塾があるのは嬉しいと思います。
哲夫:塾に行かずに親に勉強を教えてもらえばいいかというと、共働き家庭が多いのでなかなか時間が取れないと思います。そこで親代わりになって、しかも喋りが面白い人間が教えるのが、子どもが賢くなるためにはいい環境だと思っています。
それともう1つ、僕が小学生のときに通っていた近所の塾が原点になっています。塾代が月3000円くらいで近所のおばあちゃん先生が教えてくれて、授業をするというよりは分からないところを教えてくれる場所でした。そういう地域密着型で、料金が安くて、「勉強の仕方」を教えてくれる塾ができたらいいなという思いがありました。
――塾の指導に手応えを感じていますか?
哲夫:進学実績には自信があります。子どもたちが志望した学校にちゃんと進むことができていると思います。うちは先生がみんな気さくだし、生徒との距離が近くて志望校の話もしやすいんじゃないでしょうか。
僕はいつも受験前には塾の黒板に「試験の心構え」を書きに行くんです。1つは「受験日は早起きしてココアを飲みなさい」。朝からココアを飲むとすごく頭が働くと聞いたことがあって、僕もやっています。それに早起きは絶対に大事です。目覚めて2時間後よりも、5時間後のほうが頭が働きますから。それから「空欄は絶対に埋める」とか、「受験が終わったら思いっきり遊ぶ」とか書いています。
勉強の面白さが分かれば子どもは伸びる
――塾の指導ではどんなことを大切にしているのでしょうか?
哲夫:勉強の面白さを教えてあげることです。様子を見に行くとみんな楽しそうに勉強してくれているので、そこをちゃんと教えてくれているなと実感します。
――子どもに勉強の面白さを教えるためにはどうしたらいいのでしょうか?
哲夫:勉強に対して「何をやったらいいのか分からん」という子には、一番最初に勉強のやり方を教えてあげるんです。ちょっと教えていると、その子の苦手なところが分かります。そこで立ち止まって、先生がその子の苦手な問題をさっと手書きで作って「これやってみて」と解かせてみます。簡単な部分から逆算しながら取り組ませてあげたら、段々とできるようになってくるんです。それができるようになったら「さっき分からなかった問題もう1回やってみよう」と言ってやってみると、できるようになっていきます。
それから子どもに説明するときは、ひたすら面白い例えを出します。「これは勉強だ、試験で間違えたら点数が悪くなる」と思うからしんどいんです。
でも数学の角度問題をクイズだと思って考えたらすごく面白いし、国語の読解もオモロイ物語だと思えたらいいんです。先生も芸人として生徒に説明するときに、「分かりやすく伝える力」と「笑かす力」を鍛えてもらえたらいいなと思ってます。