現地時間3月27日に米ロサンゼルスで開催されたアカデミー賞授賞式。俳優のウィル・スミスが司会者であるコメディアンのクリス・ロックを平手打ちするという事態が起こった。妻であるジェイダ・ピンケット・スミスを侮辱されたからだ。
ウィル・スミス(左)とジェイダ・ピンケット・スミス(右)
ジェイダは脱毛症に苦しんでおり、ここ数年はそれを公にして丸刈り姿で当日も出席していた。
クリス・ロックはジェイダに向かって「『G.I.ジェーン』の続編を楽しみにしている」と軽口を叩く。『G.I.ジェーン』は丸刈りの女性兵士が過酷な訓練に挑む姿を描いた’97年の映画だ。これを聞いたジェイダは目を伏せて不快そうな表情を浮かべる。その直後、ウィル・スミスは壇上に歩いていき、クリスに平手打ちをくわせたのだ。
クリス・ロックの芸風はああいうものだと擁護する声もあるが、その後、アメリカでは暴力に対する批判が巻き起こっている。
「ウィル・スミス、かっこいい」ばかりの反応に違和感
最初にそのニュースに対して私が見たSNSは「ウィル・スミス、かっこいい」「妻を守った」というものばかりで、非常に違和感を覚えた。
ウィル・スミス
確かに病気で苦しんでいる妻を揶揄(やゆ)されたら、夫として腹が立つのはわかる。だが、脊髄反射(せきずいはんしゃ)的に怒りをもってわざわざ壇上へ行き、司会者を殴ることに何か意味があるのだろうか。
「殴りたいほど怒っているが、暴力はふるわない。その代わり、きみが表現の自由だと思って発した言葉が、どれだけ病気と苦しむ人たちを傷つけているか考えてみてほしい」 そんなふうに言ったら、もっと場の雰囲気は変わったのではないだろうか。
アメリカの文化、アカデミー賞受賞式での慣習がわからないので、そんな「マジレス」をしたらしらけるのかもしれないが、それでも暴力をふるうよりは共感を得られたはず。