山形と秋田の県境にそびえる鳥海山は、その自然のパワーで人々の生活にたくさんの恵みをもたらしてきた山です。また古くから信仰の山として崇められ、山麓に住む人々に長い間大切にされてきました。今回は山形県側の麓にあたる庄内地方から、鳥海山のパワーを五感で感じられる6つのスポットをご紹介します。
鳥海山（ちょうかいさん、ちょうかいざん）ってどんな山？
庄内地方のシンボルともいえる鳥海山は、山形県で最高峰（2,236メートル）の山。日本百名山にも数えられ、その美しい山容から「出羽富士」とも呼ばれています。山頂に鎮座する「鳥海山大物忌（ちょうかいざんおおものいみ）神社」は1400年以上もの歴史があり、長きにわたって人々の篤い信仰を集めてきました。
海までその裾野を広げる鳥海山。山上から見下ろす雄大な日本海はまさに絶景。鳥海山に蓄えられた栄養豊かな水は湧き水となって海へと流れ込み、多くの恵みをもたらします。それは麓に広がる庄内平野にとっても同様。まさに鳥海山は人々の食や暮らしになくてはならない母なる山といえるでしょう。
今回はこの鳥海山のパワーを存分に感じられるとっておきのスポットをご紹介します。鳥海山の雄大な姿を見ながら、のんびりドライブで巡るのがおすすめです！
【1】エメラルドグリーンの水が幻想的な「丸池様」
「丸池様」は鳥海山からの湧き水だけを水源とする小さな池です。周囲はぐるりと原生林に囲まれており、エメラルドグリーンの水はとても不思議で神秘的な色。眺めているだけでなんだか神聖な気持ちになります。丸池様自体がご神体とされ、決して魚などを獲ってはならないといわれてきました、
湧き水がとても冷たいので、池の中の倒木はなかなか朽ちることがなく、まるで龍のように水の中に沈んでいます。ちなみに丸池様は、鳥海山の7合目にある「鳥海湖」と地下水脈でつながっている、なんていう伝説もあるそうですよ。
【2】小さな白い水中花に癒される「牛渡川（うしわたりがわ）」
丸池様に歩いていく途中に流れている小さな「牛渡川」。こちらも鳥海山の湧き水が水源なのですが、そのあまりの透明度の高さに驚かされます。牛渡川では湧き水を利用した鮭の孵化事業が行われており、秋から冬にかけ、たくさんの鮭がこの川に戻ってきます。
夏の時期には梅花藻（バイカモ）という水草が川の中に小さな花を咲かせます。梅花藻は涼しい清流でしか育たないため、全国でも生育場所は限られています。清らかな水の流れにたゆたう白い花は本当に涼しげで、いつまででも見ていたいくらい。川のせせらぎを聞きながら水辺を散歩するのも、とっても気持ちがいいですよ！
【3】長い歴史をもつ「鳥海山大物忌神社 吹浦口ノ宮（ふくらくちのみや）」
鳥海山の山頂には「鳥海山大物忌神社」の本社が鎮座しています。この神社は長く「出羽国（現在の山形県と秋田県）の一之宮（その地域で最も格式の高い神社）」として敬われてきました。山の麓には「口ノ宮」と呼ばれるふたつの里宮があり、そのひとつがこちらでご紹介する「吹浦口ノ宮」です。
中世には鳥海山の修験者たちが山麓周辺に修験集落をつくり、近世以降はそこが鳥海山参りの拠点（登拝口）となりました。当時は吹浦の集落に住む修験世帯の人々が、現在の「吹浦口ノ宮」で鳥海山祭祀を行ったのだとか。そしてそれらの修験道の年中行事は、少し形を変えつつも現在に至るまで受け継がれています。
鳥海山山頂の本社まで登って参拝するのはなかなか至難の業。それならば「鳥海山大物忌神社」の長い歴史の一端を、麓にある「吹浦口ノ宮」やもうひとつの里宮である「蕨岡口ノ宮」で感じてみてはいかがでしょう？
【4】思わず足を入れたくなる！「釜磯」の湧水
鳥海山の麓にある「釜磯」は、夏になると海水浴場として地元の人たちでにぎわう場所です。じつはここにはちょっと変わった体験ができるスポットがあるんです。なんと海岸のあちらこちらに鳥海山からの伏流水が湧き出ているのです。
湧き水エリアにはこんな看板が立てられています。
何しろ、うっかり足を踏み入れてしまったら大変ですからね！でもそうはいっても、怖いもの見たさでついつい手や足をいれたくなるのが人間というもの。足を一歩湧き水の中に入れるとズブズブと沈んでいき、一瞬「え、底なし？？」と焦ってしまうかも？！
地下から湧き出す水はとても冷たいので、ずっと入っているのはちょっとムリですが、子どもだけでなく大人もついつい夢中になって遊んじゃいますよ♪
この海水浴場には岩場もあるので磯遊びもできるのですが、水中に鋭い岩が隠れている場所もあるので、くれぐれもケガには気をつけてくださいね。
またここは、海水浴を楽しみながら列車が通過するのを目の前で見られる絶好のポイントでもあります。鉄道好きにとってもたまらないスポット！
