’18年のアカデミー賞で作品賞を含む4部門を制した『シェイプ・オブ・ウォーター』で、巨匠の仲間入りをしたギレルモ・デル・トロ監督。オスカーを手にしたら、好きなものをなんでも作れるチケットを手に入れたようなもの。そんな彼が完成させたのは『ナイトメア・アリー』。’46年に出版された同名小説が原作で、『悪魔の往く街』(’47)として一度映画化されている作品だ。

過去の寓話ではない。真実とウソの見分けが難しい時代を映す鏡

アカデミー賞ノミネート作品監督の意外な一面「日本のアニメや特撮が大好き」
(画像=『女子SPA!』より引用)
写真/REX/アフロ  「オスカーの後、『ピノキオ』や『忘れられた巨人』など、僕が好きな名作を脚本化していたんだ。そのなかでもこの作品は、真っ先に映画化を願っていた」と監督は話す。 「アメリカンドリームの明暗と倫理観を描いているけど、これは過去の寓話(ぐうわ)としてだけでなく、現代社会を見つめるのにうってつけだった。今、僕らは真実とウソを見分けるのがとてつもなく難しい時代に生きている。空虚な名声に対する野心のためにSNSを駆使する人が大勢いる一方で、一瞬ですべてを失うかも、という不安も同時に抱えているだろ? それを具現化したキャラクターがスタンだ」  ハンサムで人当たりのいい青年スタンは、あるカーニバルの一座に入り読心術を習得。何者でもなかった彼が、その技ひとつで一座の窮地を救ったことをきっかけに、野心をむき出しにしていく。スタンを演じたのは世界の恋人、ブラッドリー・クーパー。なぜ彼を選んだかと聞くと「超ハンサムで芝居が上手でないとこの役はできないんだ」と、内幕を教えてくれた。 「スタンが死体を引きずって家ごと燃やす冒頭のシーンからして、このイケメンは信用ならん男だと思わせるんだ。でも、それがブラッドリーだと、何を隠しているのか気になって見続けていたいと思わせる魔法がかかるんだよね。じつは最初、レオナルド・ディカプリオをオファーして進めていたんだけど、スケジュールが合わなかったみたいでね(笑)。でも、ブラッドリーでよかったよ。彼はスイートでいてクレイジーで、人を惹きつける力を持っていることを証明してくれた」  変更点はもう一つ。パンデミックの影響で撮影が中断している間に、脚本を書き直していたのだとか。 「中断中に僕一人だけトロントに残って、スタンが味わう転落をドラマチックにするため、脚本を前半のラブ要素をより甘くしたり改稿してたんだ。このパンデミックによって、我欲とその代償がどういうものかを誰もが思い知ることになった。当初の脚本時点では、そんな時代が来るなんて思ってなかったから、より物語の明暗を際立たせたんだよ。前作のときも予期せずトランプが大統領になってテーマがタイムリーだって言われたけど、今回も時代を映す鏡のような作品になった」  いつ撮影を再開できるかわからないなかで、世界を俯瞰でとらえ、社会問題を物語に落とし込んでいく。彼が稀代のストーリーテラーと呼ばれる理由はここにあるのだろう。  その一方、日本のアニメや特撮の大ファンで、オタクの神とも呼ばれる一面もある。 「思うように往来できないからこそ、早く日本に行きたい!(笑)またジブリ美術館に行きたいし、アイスクリームとしゃぶしゃぶを食べたいな。中野ブロードウェイにももちろん行きたい……けど、見てよ僕の後ろ。(フィギュアが溢れる自室を指さし)物が増えて困ってるんだ(笑)」  コロナの収束が待ち遠しい。
アカデミー賞ノミネート作品監督の意外な一面「日本のアニメや特撮が大好き」
(画像=『女子SPA!』より引用)

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●ナイトメア・アリー 配給/ウォルト・ディズニー・ジャパン 3月25日(金)TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー

【ギレルモ・デル・トロ】 ’64年、メキシコ生まれ。『パンズ・ラビリンス』でアカデミー脚本賞に初ノミネート。’17年の『シェイプ・オブ・ウォーター』ではアカデミー作品賞・監督賞を含む4部門を受賞した。『ギレルモ・デル・トロのピノッキオ』もNetflixにて12月配信予定

<取材・文/よしひろまさみち> よしひろまさみち

提供・女子SPA!



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