「人生100年時代」や「老後2,000万円問題」など年金にまつわる情報に注目が集まっています。そんな中、年金制度が2020年に改正され、2022年4月から施行されるということをご存じでしょうか。そこで今回は、2020年の年金制度改正法における「在職定時改定」について詳しく紹介します。
在職定時改定とは、そもそもどのような制度で、何がどう変わるのか、注意するポイントなどを確認していきましょう。
そもそも在職定時改定とは?
今回の年金制度改正法(令和2年法律第40号)は、高齢化に伴いこれまでよりも長期間働く人が増え、働き方も多様化することを想定して、長くなる高齢期の経済基盤を充実させる目的で行われました。改正されたポイントはいくつかありますが、「在職定時改定」は、今回新設された制度です。
この制度は、在職中である65歳以上の老齢厚生年金受給者が対象となります。年金額を毎年10月に改定することによって、それまで納めてきた年金保険料が受け取る年金額に随時反映されるしくみです。
2022年から何がどう変わるの?
これまでは、退職などによって厚生年金の支払い義務がなくならなければ、納めた保険料は反映されず、老齢厚生年金の額は変わりませんでした。それが、毎年改定することで就労を継続して得られる効果を退職まで待たずに、得られるようになります。
早期に金額に反映されることで、高齢者の就労意欲を高めるメリットがあるといえるでしょう。こういった取り組みにより、人材不足の解消や高齢者の就労支援をする目的もあります。
また、現行法では、働きながら年金を受け取ることは可能ですが、賃金と年金月額の合計金額が一定以上になると、年金の支給が停止する場合があります。今回の改正ではこの在職中の年金受給のあり方も見直され、年金支給停止基準額は現行の28万円から47万円に緩和されました。
結果いくら増えるの?
それでは、実際にどのくらいの金額が増えるのかを見ていきましょう。厚生労働省が公表している計算によると、標準報酬月額20万円で1年間働いた場合、年間に1万3,000円ほど年金が増えます。月で考えると、約1,100円の増加です。
法改正前であれば、この増えた分は退職などにより厚生年金被保険者の資格を喪失したあとでなければ受け取れませんでした。ところが、2022年4月からは、毎月10月に年金額が見直され、増えた分を随時受け取れるようになります。
毎月で考えるとわずかな増加かもしれません。とはいえ、65歳の方が70歳まで働いた場合、毎年改定される方が働いた恩恵を早めに受け取れるため、家計の足しにもなり就労意欲の向上にもつながると考えられるでしょう。
在職定時改定に潜む落とし穴とは?
ただ、在職定時改定にはデメリットがあります。それは、賃金と年金月額の合計金額が年金支給停止基準額に近い方にとっては、より影響を受けやすくなることです。
在職定時改定が新設されたことで、高齢になっても働き続けて厚生年金保険料を支払えば、受け取る年金が増えます。しかし受け取る年金が増えることで、年金支給停止基準額をオーバーしてしまい、支給額の一部または全部が支給停止になる可能性があるのです。
さらに、カットされた分はあとから支給されるわけではありません。年金支給停止基準額近くの金額を受け取っている方は、注意が必要でしょう。
法改正ポイントを把握して落とし穴を回避しよう
「老後はまだまだ先のこと……」と思っている方もいるでしょう。しかし、今から情報収集する習慣を身につけておかなければ、該当する年齢になったときに、必要な情報を見落としてしまうかもしれません。
今回ご紹介した在職定時改定にも、メリットがある反面、デメリットも存在します。法改正のポイントをしっかり把握して、裏に潜んでいる落とし穴に落ちないように注意したいものですね。
文・山村望愛
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