あの有名サスペンスドラマシリーズに岩ちゃん降臨!
旅情ミステリー作家・内田康夫の原作による大人気サスペンスドラマ「浅見光彦」シリーズは、国広富之主演の第一作「後鳥羽伝説殺人事件」(1982、TBS系)が放送されて以来、今年2022年で40周年を迎えた。
先日2月28日(月)にテレビ東京系で放送された記念すべき「軽井沢殺人事件」で令和版・浅見光彦を演じたのは、EXILEや三代目 J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBEのパフォーマーだけでなく、2021年末ソロデビューを果たし、俳優活動でもますます注目が集まる岩田剛典だ。
なお、本作はParavi、Tver、GYAO!で見逃し配信がされている(期間限定配信のサイトもあるため要確認です)。
今回は、「LDH」と「浅見光彦シリーズ」をこよなく愛する筆者・加賀谷健が、岩田扮する「令和版・浅見光彦」の魅力を余すところなく解説していきたいと思う。
※以下、物語上の重要な場面の描写を含みます
令和版・浅見光彦の魅力
冒頭でつい「降臨」とすこし大袈裟な表現をしたのは、岩田が浅見光彦俳優として、堂々たる初登場っぷりだったからだ。ルポライターである浅見が取材に来た軽井沢の一面雪景色の中、カシャリとカメラのシャッターを切り、ファインダーをのぞく眼が大きく接写される斬新な演出が、岩田の存在感を引立てる。
雪景色を丁寧に写真に収め、満足げに辺りを眺める浅見が白い息を吐くと、冬の軽井沢で起こる因縁の殺人事件ミステリーが何とも快調に幕を開ける。
令和版の浅見は、実家の家政婦さんに「坊ちゃま」 と呼ばれ、やりずらそうにふるまう。だが、それを演じる岩田自身、経営者の父を持ち、中学受験を経て慶應ボーイとなった“筋金入りのお坊ちゃま”なのだから、何の違和感もない。
さらに全シリーズでは名物場面となる実は警察庁刑事局長の「弟君」だったことが判明するお決まりのくだりでは、岩田のさりげない表情も清々しく映った。
素の部分を上手く取り込んだ岩田らしい令和版・浅見光彦は、こうしてお坊ちゃまスタイルを地で行くようなふんわりと心地よい雰囲気が大きな魅力だ。
歴代俳優の系譜と岩田剛典の“離れ業”
浅見光彦シリーズ「高千穂伝説殺人事件」※TBSチャンネルより
ここで歴代の浅見光彦俳優を振り返ってみよう。
本シリーズは、各キー局でそれぞれ放送されてきた伝統あるドラマ作品だが、なかでもTBS系列で1994年に放送された「高千穂伝説殺人事件」で連続ドラマシリーズとして初代浅見光彦を演じた辰巳琢郎の印象が多くのファンに強く残っていることだろう。京都大学出身でクイズ番組などでも活躍する辰巳は、博覧強記なインテリキャラで、落ち着きのある名演を見せた。
2001年放送のシリーズ第14作からは、沢村一樹が2代目を務め、辰巳から引き継ぐインテリ感は残しつつ、持ち前の茶目っ気によってコミカルな浅見光彦像を印象づける。このあと、3代目に速水もこみち、4代目に平岡祐太とイケメン俳優が続き、他局シリーズでも、原作者イチ押しで他シリーズで刑事局長役を演じた榎木孝明(「軽井沢殺人事件」ではミステリー作家に扮しての出演!)や水谷豊らベテラン俳優の名演もある。
浅見光彦ドラマはテレビ東京では初めて放送されるが、これまで各局の歴代俳優版に親しんできた浅見光彦ファンの筆者からすると、正直なところ、わずかな不安を感じたのは確かだった(もちろん、テレ東で岩ちゃん配役での新シリーズはたまらなく嬉しかった!)。
歴代俳優の系譜からすると岩田が演じる浅見光彦は、岩ちゃんスマイル満載でとにかく爽やかだ。事件の舞台となる別荘で開かれている大原会長(大和田伸也)の誕生日会に潜入する場面での謎めいた雰囲気は、岩田が2018年に主演したドラマ『崖っぷちホテル!』(日本テレビ系)の宇海副支配人をどこか思わせ、ミステリアスな雰囲気を醸し出すつかみはバッチリだ。
あるいは、逃走途中で事故死した平山(長田成哉)が死の間際に婚約者に残した「仏のおでこ」というメッセージを紐解くヒントを見つける場面では、蕎麦屋の壁に横向きにかけられた絵を縦に見ようと首を傾げ、こんな超絶可愛い仕草をやってのけた浅見光彦俳優がこれまでいただろうかと驚いた。これはやっぱり岩ちゃんにしか出来ない“離れ業”の演技だなと思った次第だ。