山あいにひっそりと佇み、今もなお大正時代の面影を残す銀山温泉。ノスタルジックな町並みは、季節を問わず訪れる人々の郷愁に語りかけてきます。大正ロマンの世界が広がる銀山温泉の魅力と見どころ、グルメや駐車場情報もお伝えします。
銀山温泉の歴史
銀山温泉は、山形県の北東部、尾花沢(おばなざわ)市の山あいにある小さな温泉街。1456年に銀山が発見されて以来、200年ほどは「延沢(のべさわ)銀山」として栄えていましたが、1689年には全山廃山となります。
それから温泉地として繁栄した時もありましたが、人口の流出、銀山川の氾濫や湧出量の不足などに悩まされてきました。しかし昭和に入り源泉のボーリングで高温多量の温泉が湧きだした事をきっかけに、道路も整備され今日の繁栄に至ります。
銀山温泉の人気の秘密
銀山温泉の魅力について語る上で、忘れてはいけないことが2つ。1つは、30年以上前に放映された国民的ドラマ『おしん』です。主人公の少女が苦労を重ね、けなげに逞しく成長していくドラマに涙した方も多いはず。その中で少女の母親が出稼ぎに来ていた温泉地が銀山温泉でした。このドラマは、その後も各国で放映され続け、世界中にファンが多くいる事でも有名です。
もう一つは、ジブリ映画『千と千尋の神隠し』。異世界に迷い込んだ少女が、神々が入りに来る湯屋で働きながら成長する長編アニメです。その湯屋が銀山温泉をモデルにしているのではないかと言われています。どこの旅館が具体的なモデル、ということはないのですが、例えば写真の「能登屋旅館」。見あげれば、思わず「ここだぁ!」とテンションアップすること間違いありません!
銀山温泉の見どころ
「古山閣」の鏝絵(こてえ)
歴史ある各旅館の佇まいは、どこも素晴らしいのですが、古山閣の軒下などにある鏝絵もご覧いただきたいものの一つ。今でいうレリーフは、左官職人が描く漆喰(しっくい)装飾で、昔は全国各地で、財をなした豪商などが富の象徴として飾ったそうです。江戸中期から盛んでしたが、今では左官職人の衰退とともに、あまり見かけなくなっています。古山閣の絵は、見ていて楽しくなるような季節の行事が描かれています。
白銀公園&白銀の滝
温泉街の清流沿いを奥に進むと白銀公園の入り口です。左手に進めば銀山坑道と白銀公園へ。右手の川原に下りると、白銀の滝があります。滝の目の前にある山道からも公園内につながるルートがあります。白銀の滝は、約22mの高さから、ほぼ直線的に落下し、滝つぼまで行けるのも魅力。温泉街の散策ついでに見られる滝で、夏は涼を求めて、冬は氷瀑見物としてもおすすめです。
滝までは下駄でも歩けますが、ここから先の公園内は、歩きやすい靴がおすすめです。銀山跡地に広がる白銀公園には、斎藤茂吉の歌碑やこうもり穴などの見どころもいくつかあります。白銀公園は、1時間ほどの散策コースとなります。
延沢(のべさわ)銀坑道
季節を問わず楽しめる銀山温泉ですが、冬場は立ち入り禁止になる場所があります。それが延沢銀山の跡地「延沢銀坑道」。真夏でも洞内は20度以下の一定温度が保たれているのでひんやり。照明設備も整い、見学用の遊歩道も整備されているので、夏にこそ訪れて自然のクーラー体験をしてください。
延沢銀山の採掘方法は薪木や木炭を燃やして表面を加熱し、水によって急冷し、母岩から鉱床を剥ぎ取るように鉱石だけ採掘する「焼き掘り」と呼ばれる独特な採鉱法だったそうです。坑内のあちこちに残る焼け跡から、当時の苦労がしのばれることでしょう。
銀山温泉の和楽足湯
銀山温泉は、慢性消化器疾患、各種切り傷など効能豊かで、源泉かけ流しの温泉が人気です。ほんのり硫黄の香りがする無色透明の温泉で、温度が熱めなのが特徴。これは、銀山温泉の源泉温度が高いからだそうです。
日帰り入浴を楽しめる宿もありますが、お出かけの際は、事前に各宿へお問い合わせください。温泉街には、共同浴場が1軒と貸し切り風呂専用施設が1軒ありますが、もっと気楽に楽しめるのが、無料の和楽足湯。足湯につかりながら、川の流れや温泉街の景色、銀山グルメを味わいながらの語らいも楽しめます。
おすすめはライトアップされる夜
緑がまぶしく、川のせせらぎが嬉しい夏、山が赤や黄色に染まる秋、しんしんと雪がふる冬と、時間や季節ごとに移ろいゆく、別の顔を見せてくれる銀山温泉ですが、銀山温泉の魅力にふれるには、やはり宿泊をお勧めします。風情ある町並みの中、昼間の散策も楽しいのですが、夕方になると、ガス燈や旅館の各部屋に明かりが灯り、暗闇に浮かび上がる町並みは、昼間のそれとはまったく違う世界。
レトロな町並みが、一斉にライトアップされて輝きを放つような、幻想的な雰囲気に包まれるのです。日中は人ごみの絶えない温泉街ですが、夜になると、人影も減り、川沿いのベンチで腰を下ろしたり、足湯につかりながら夜景を楽しんだり、落ち着いた夜をすごせます。