元TBSアナウンサーの宇垣美里さん。大のアニメ好きで知られていますが、映画愛が深い一面も。
そんな宇垣さんが映画『ライダーズ・オブ・ジャスティス』についての思いを綴ります。
映画『ライダーズ・オブ・ジャスティス』
●作品あらすじ:妻が列車事故で亡くなったという報せを受け、軍人のマークス(マッツ・ミケルセン)はアフガニスタンでの任務を離れ娘の下へ帰国します。悲しみに暮れる娘を前に無力感にさいなまれるマークスですが、彼の下を二人の男が訪ねてきました。
その中の一人、妻と同じ列車に乗っていたという数学者のオットーは、事故は“ライダーズ・オブ・ジャスティス”と言う犯罪組織が、殺人事件の重要な証人を暗殺するために周到に計画された事件だとマークスに告げます。
怒りに打ち震えるマークスは妻の無念を晴らすため、オットーらの協力を得て復讐に身を投じてゆきますが、事態は思わぬ方向に…。
“北欧の至宝”と呼ばれ、ハリウッドでの活躍中のマッツ・ミケルセン主演映画を宇垣さんはどのように見たのでしょうか?(以下、宇垣美里さんの寄稿です。)
復讐をきっかけに出会ったちぐはぐな彼らが結ぶ信頼関係
『ライダーズ・オブ・ジャスティス』より
どうして人は皆、死に何かしらの意味を求めてしまうのだろう。理由がなければその人たちが浮かばれないと思っているかのように。大切な人ならばなおのこと。
妻を列車事故で亡くした軍人のマークスも、妻の不在からくるあまりの喪失感に耐え切れなかった。そこに数学者のオットーが現れ「これはある犯罪組織に仕組まれた事件だ」と彼に告げる。不運を偶然とは思いきれなかったマークスは復讐の鬼と化し破滅的な道を突き進んでゆく。彼の寂しさの処理の仕方は間違いだらけで痛々しい。
物事を暴力でしか解決できないマークスの見事なまでの殺しっぷりはもはや清々しさを感じるほどで、その背後でやんやと騒ぐそれぞれに問題を抱える3人の天才とのとぼけたやり取りがオフビートな笑いを誘う。復讐をきっかけに出会ったちぐはぐな彼らは、やがてマークスの娘や娘の彼氏、ウクライナ人の青年も巻き込んで奇妙な信頼関係を結んでいく。
何かの思惑があるのではと邪推してしまうほどの出会い
『ライダーズ・オブ・ジャスティス』より
傷ついた者同士が互いを理解し合い、許し合い癒やし合う様子に、だからこそ人は人と共に生きていかずにはいられないのだと胸がいっぱいになった。
たとえきっかけの死に理由があろうとなかろうと、結果生まれたこの関係性に意味がないなどと誰が言えようか。生きることに意味などないし、死ぬことに理由はない。けれど、けれど出会えたことに何かの思惑があるのではと、そう邪推してしまうほどの出会いが人生にはある。