濱口監督がスピッツを?
――面白いですね。河井さんは何を歌われたのですか?
『偶然と想像』より
河井「私は恥ずかしすぎて、『三百六十五歩のマーチ』を一節だけ歌って『ありがとうございました』と(苦笑)。でも一曲歌うだけでも、ちゃんと最初から最後まで歌う人もいれば、選曲にもその人が表れたりして面白いんですよね」
――濱口監督も歌われたのですか?
河井「濱ちゃんは一番最初に。『言い出しっぺなので僕が最初に歌います』と、スピッツさんの曲を歌っていました」
――それは聴いてみたいですね。濱口監督は、特に近年、海外で立て続けに賞を取られています。長くご一緒している河井さんは、何か変化を感じますか?
河井「色々な経験を経て、それこそ海外での賞も取られたりして、すごく変わっているかと思いきや、やっぱり本質的には変わってないですね。変わらなくてすごいなと思います」
「心燃え立つものがもう何もないの」
――第3話『もう一度』は、高校時代の友人と再会するところから始まり、早い段階で、実は他人だったことが判明します。本作が面白いのは、そこから物語が展開していくことです。
『偶然と想像』より
河井「濱ちゃん節だなと思いましたね。とにかくセリフの量が多くて(笑)。ずっと喋っている感じ。でも物語が進んでいくうちに、こうなっていくんだと驚きがあって。人違いだったというところで終わらずに、その先にすごい展開が待っている。脚本を読むだけで感動しました」
――まさに偶然から始まり、ステキなラストに向かっていきます。
河井「ああいうことって、何か本当にありそうで、なさそうで。絶妙なところですよね。途中、私が演じたあやが『心燃え立つものがもう何もないの』と告白するんですけど、あの言葉遣い自体は、すごく濱ちゃんっぽいと思いましたが、そこまで強く思っていなかったとしても、『これは自分のことかも』と感じる人は結構多いんじゃないかと思います」