多様性が尊重されるようになり、“結婚しない自由”も徐々に浸透しています。とは言え、「結婚しない人はヤバイやつ」「恋愛感情を抱かないなんて普通じゃない」という意識は、まだ多くの人に根強く残っています。
画像:ドラマ『恋せぬふたり』公式サイトより
この空気感を変え、恋愛至上主義の現代社会に一石を投じるかもしれないドラマ『恋せぬふたり』(NHK、月曜夜10時45分~)が1月10日から始まりました。今回は、同作に対する期待を語ります。
『恋せぬふたり』は「ふつう」を疑う機会をくれる
本作は、他者に恋愛感情も性的欲求も抱かない恋愛的指向、アロマンティック・アセクシュアルの兒玉咲子(岸井ゆきの)と高橋羽(高橋一生)が、恋愛至上主義の風潮に悪戦苦闘しながらも自分らしく生きる姿を描いたコメディです。登場人物のテンポの良いやり取りがとてもキャッチーで、気軽な気持ちで観られます。
ですが、咲子がルームシェアを約束していた親友・千鶴から「元カレとよりを戻した」という理由から、ルームシェアの話をなしにされるシーンは非常に切なかった。咲子も千鶴もどちらも悪くない。ただ、普通という価値観が知らず知らずのうちに誰かを傷つけるリスクを絶妙に表現しており、同作を通して笑顔だけでなく“普通”を疑う機会を与えてくれそうです。
今までのドラマは、恋愛に興味がない主人公も「最後は恋愛」
「恋愛に興味はない」という価値観だった登場人物が、途中から恋愛・結婚に走る……という展開のドラマは非常に多いです。2021年秋に放送された『婚姻届に判を捺しただけですが』(TBS系)の主人公・大加戸明葉(清野菜名)は、序盤こそ仕事を頑張りたい」「恋愛は興味ない」というスタンスでした。しかし、偽装結婚生活を続けていく中で、百瀬柊(坂口健太郎)に徐々に惹かれ、最終的には両想いになって無事に“ハッピーエンド”。
画像:TBSテレビ「火曜ドラマ『婚姻届に判を捺しただけですが』」公式サイトより
「恋愛は必要ない」と前面に押し出していたドラマでいうと『結婚できない男』(フジテレビ系)が挙げられますが、独身貴族を満喫していた桑野信介(阿部寛)も最終的には早坂夏美(夏川結衣)に告白。続編の『まだ結婚できない男』(同)では、桑野と早坂は交際したものの破局したことがわかりました。
頑なに結婚や恋愛に関心のない登場人物であっても徐々にトキメキを感じており、結局は「結婚(恋愛)は良いものだ」という選択を肯定するパターンが、今までに多いパターンでした。