『ミッドサマー』は異色のホラー映画です。一見するとホラーらしからぬ明るい雰囲気ですが、本作には確かな恐怖感があります。本作で監督を務めたのは『ヘレディタリー/継承』で有名なアリ・アスター氏です。この記事では不思議な魅力を持つ『ミッドサマー』のあらすじや見どころを解説します。ぜひ最後までお付き合いください。

映画『ミッドサマー』とは

【ネタバレ】映画『ミッドサマー』あらすじや隠された真実を解説!
(画像=映画.com、Sorte Plusより引用)

映画『ミッドサマー』は、明るい雰囲気のホラー映画です。舞台となるホルガ村の人々が陽気で明るいことや、白夜の気候で明るい昼間のシーンが大半となってます。

それでもホラー映画にカテゴライズされている理由は、確かな恐怖が体感できることにあります。異色の雰囲気を放つ「怪奇祭典物語(フェスティバルスリラー)」を鑑賞してみましょう!

ミッドサマーのモデルは日本映画?

『ミッドサマー』で監督を務めたのは、アリ・アスター氏です。彼は本作に関するインタビューを受けた際に1983年に公開された日本映画『楢山節考(ならやまぶしこう)』からインスピレーションを得たと語っています。彼は、日本人の慣習へ向ける姿勢やこだわりに着目しました。

『楢山節考(ならやまぶしこう)』は、姥捨山伝説をテーマにした小説が原作です。口減らしや古くから伝わる慣習のために高齢の母親を真冬の楢山へ捨てにゆく物語ですが、悲惨な境遇や親子の絆を描いてます。

『楢山節考(ならやまぶしこう)』は批評家からの評価も高く、1983年のカンヌ国際映画祭でパルム・ドールを獲得しました。

ミッドサマーのあらすじ【ネタバレなし】

大学生のダニーは、不安定なメンタルを持っています。そのため、恋人のクリスチャンに頼る日々を送っていました。ある日、ダニーと同じく精神疾患を持っている彼女の妹が両親を巻き込んで一家心中をして亡くなってしまいます。

この出来事から、ダニーの精神はさらに不安定になりました。クリスチャンは精神状態が安定しないダニーに疲弊しており、別れたい気持ちがありました。しかしなかなか別れを切り出すことができません。そんなある日、彼は友達のペレにホルガ村への旅行に誘われます。

彼らの目的はホルガ村で行われる90年に一度の夏至祭を論文にするためでした。ダニーには旅行へ行く報告をしていませんでしたが、彼女も同行する流れになります。ホルガ村に到着すると、学生たちは陽気で親切な村人たちに歓迎されました。徐々に明らかになる狂気に満ちた夏至祭(ミッドサマー)に恐怖します。

ミッドサマーのあらすじ【ネタバレあり】

【ネタバレ】映画『ミッドサマー』あらすじや隠された真実を解説!
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ここからは内容のネタバレを含む詳しいあらすじを解説します。まだ観ていない方は、作品を楽しんでから内容を整理するためにお役立てください。

あらすじ【ネタバレあり】①不安定なダニー

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ダニーは精神状態が不安定な大学生です。彼女にはクリスチャンという恋人がいましたが、彼はダニーの精神が不安定なことに疲弊していました。そのため、クリスチャンは1年以上前から別れを切り出す機会を窺っています。

ダニーは精神状態が不安定になるとクリスチャンに電話をかけていましたが、それでもなかなか落ち着かず、精神安定剤を服用する日々が続きます。そんなある日、ダニーの妹が両親を巻き込んで一家心中をしました。

この事件は、ダニーの精神状態をさらに追い詰めます。彼女に疲弊していたクリスチャンも、事件には驚きを隠せません。クリスチャンは、結局彼女に別れを言い出せませんでした。

ある日クリスチャンの友人のペレは、クリスチャンを旅行に誘いました。旅行の目的は、スウェーデンの村で行われる90年に一度の夏至祭です。クリスチャンはダニーに知らせていませんでした。

あらすじ【ネタバレあり】②スウェーデンの謎の伝統行事

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ダニーが旅行のことを知ってしまったことや、ダニーの誕生日と被っていることから一緒に行くことになります。その後、ダニーとクリスチャン、それからクリスチャンの友人のマーク、ジョシュ、ペレの5人はストックホルムに到着しました。

5人は夏至祭が行われるホルガ村へは車で向かいます。途中でイギリスから来たサイモン、コニーたちと合流しました。村に着いた彼らは、幻覚作用があるマッシュルームを食べます。スウェーデンは白夜で、夜9時になっても昼間のように明るく彼らは不思議に思いました。

ダニーが立ち上がったとき、村人たちが自分のことを嘲笑しているように錯覚して、酷く動揺します。トイレへ入ったものの、幻覚が見えて気分が悪いままです。その後ダニーは、外の森で6時間も気を失っていました。

あらすじ【ネタバレあり】③笑顔と青空の下で繰り広げられる恐怖

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村人は学生たちを温かく迎え入れました。夏至祭は9日間です。食事の取り方に独特の決まりがあり、上座に座る初老の男女2人が食事を始めないと食べてはいけないというものです。

ダニーたちは村のルールに従って食事をとりました。食事が終わると村人たちは一斉に崖へ向かいます。学生たちは、村人たちのあとを追いました。崖の上には、食事のときに上座に居た女性が立っています。

全員が視線を浴びながら女性は崖から飛び降り、上座に座っていた男性も続いて身を投げました。驚きを隠せない学生たちでしたが、恐怖はさらに続きます。男性が死んでいないことが確認されると、村人たちが鈍器で男性の顔を潰し始めたのです。

村長は年老いて弱って死ぬよりも、幸福な結末だと言いました。サイモンとコニーは命はかけがえのないものだと抗議をします。翌日コニーが村を出ようとすると、サイモンの姿が消えていました。

あらすじ【ネタバレあり】④狂気の儀式で起こる異変

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サイモンに続いて、妹のコニーも姿を消しました。後にコニーは溺死した状態で発見されます。この事態に身の危険を感じた学生たちですが、90年に一度という貴重な夏至祭の論文を書きたいジョシュが村に留まるように皆を説得しました。村は変わらず夏至祭のムードが続きます。

ある時、村人が神木と崇める木にマークが用を足し、マークは、ダニーたちに秘密で村人たちに処刑されました。続いてジョシュも、ホルガ村に伝わる聖書を盗み見して、村人に見つかり撲殺されました。

残る生存者はダニーとクリスチャンの二人です。ダニーはホルガ村で行われる大きなダンス大会に出場することになり、複雑なダンスを最後まで踊ることができたダニーは見事に優勝してクイーンになります。

クリスチャンはその光景を眺めていましたが、薬を飲まされて意識が朦朧となり、村の娘たちが居る小屋に連れて行かれました。その場に居た娘たちは全裸で、精力剤を飲まされたクリスチャンは娘たちの中心で性交することになります。

あらすじ【ネタバレあり】⑤狂気の儀式の結末

ダニーはクリスチャンが村の娘と性交している光景を覗いてしまい、嘔吐しました。クリスチャンは性交が終わって、小屋から逃げます。全裸で村を走る途中には、ジョシュとサイモンの死体を目撃しました。村人に謎の粉をかけられたクリスチャンは、その場で倒れます。

村では生贄を選ぶ儀式が始まりました。9人の生贄が必要とのことで、4人は村人から選ばれます。残りは殺された学生たちが捧げられるようでしたが、9人にするには1人足りません。儀式を行うリーダーがクイーンとなったダニーに、村人かクリスチャンのいずれかを生贄として選ぶよう迫られます。

ダニーが選んだ生贄は、クリスチャンです。クリスチャンを含む生贄たちは、小屋に運ばれました。小屋は村人たちによって燃やされます。生贄とともに燃える小屋を見て、村人たちは狂ったように盛り上がりました。一人生き残ったダニーは、なぜか微笑みを浮かべていました。

ミッドサマーの見どころ

【ネタバレ】映画『ミッドサマー』あらすじや隠された真実を解説!
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明るく美しい光景に恐怖演出が加わった異色のホラー映画『ミッドサマー』。こちらでは本作の見どころを解説します。

鑑賞ポイント①主人公ダニーは監督自身

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主人公ダニーは孤独と悲惨な境遇の最中にいて、精神安定剤が手放せません。彼女は恋人のクリスチャンが自分のことを愛していないことに気付いています。それでも心の拠り所として、彼を頼るほどに追い詰められていました。

彼らがアメリカにいるシーンは、ダニーの精神状態を表現するかのように、アリ・アスター監督の前作『へレディタリー/継承』を彷彿させる重苦しい映像が続きます。しかしスウェーデンに到着すると、明るい自然の光景や白装束の村人たちなどで映像が一気に明るくなりました。

鑑賞ポイント②フォーク・ホラーの形をした恋愛映画

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『ミッドサマー』は、恋愛の終わりと再生にフォーク・ホラーを加えたことも斬新な映画です。フォーク・ホラーとは、民族的なホラーを意味します。恋愛部分は、アリ・アスター監督の経験も加えられました。

主人公のダニーを女性にして監督自身からは離れた存在にすることで、自分語りにならない物語としての魅力を確立しています。クリスチャンに依存していたダニーはクリスチャンと決別しますが、これは新たな旅立ちといったポジティブな意味ではありません。

ダニーにとっては、ホルガという新しい心の依存先見つけたというだけです。さらなる波乱を予期させる描写も鑑賞者の想像力を膨らませて、恐怖感を煽ります。

鑑賞ポイント③隠された5つの真実

【ネタバレ】映画『ミッドサマー』あらすじや隠された真実を解説!
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『ミッドサマー』には意味深な描写が度々登場します。序盤に登場する不気味なタペストリーがその一つ目です。タペストリーの絵には本作の大筋が表されています。クリスチャンに求愛した女性や精神状態が不安定なダニーなども、描かれていました。

二つ目は近親相姦を示唆させる描写です。村で近親交配が繰り返され、外部のDNAを欲していたことが暗示されてます。三つ目は、恐怖の飛び降り儀式です。こちらはスウェーデンで実際に行われており、アッテストゥパンという儀式がベースになっています。

四つ目は、度々登場する熊の意味です。熊は北欧で子孫繁栄など、縁起の良いものとして崇拝されます。五つ目は、夏至祭は9日間と紹介されますが、物語では9日も経過していないという点です。夏至祭はまだ続くのであれば、生き残ったダニーの身にも何か起こるのかもしれません。

鑑賞ポイント④性の儀式の裏側

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学生たちがホルガ村に到着したとき、印象的なタペストリーが映りました。恋をした女性が意中の男性にまじないをかけると、男性と愛を育むことができるという内容です。

クリスチャンは村での食事の場面で、まじないの効能があるパイを食べました。まじないの正体はタペストリーの絵でダイレクトに示されています。

鑑賞ポイント⑤村人の統一感の恐怖

【ネタバレ】映画『ミッドサマー』あらすじや隠された真実を解説!
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ホルガ村に住む村人たちは、笑顔で学生たちを迎えました。一見すると温かい雰囲気ですが、しばらく鑑賞していると村人たちの一体感は異様な光景に映ります。村人全員が同じ衣装を着用し、全員統一した動きの踊りや歌を歌い、食事にも決まり事がありました。