第71回カンヌ国際映画祭で最高賞のパルムドールを受賞し、一躍話題となった是枝監督による映画「万引き家族」。アットホームながら日本社会のリアルな問題などが描かれ、日本のみならず世界中で映画を観た方の心を打っています。ここでは、そんな映画「万引き家族」のあらすじや家族構成を徹底解説していきます。"家族を超えた絆”を描く衝撃の感動作となっているので、是非チェックしてみて下さい!
映画 万引き家族の概要
『万引き家族』は、2018年6月8日に公開された日本映画です。「三度目の殺人」「そして父になる」を手掛けた是枝裕和監督の作品で、家族ぐるみで軽犯罪を重ねる一家の姿を通して、日本のリアルな社会問題や人と人との繋がりを描いたヒューマンドラマとなっています。
キャストには是枝監督と何度もタッグを組んできたリリー・フランキー、樹木希林をはじめ、安藤サクラ、松岡茉優、オーディションで選出された子役の城桧吏、佐々木みゆらが名を連ねています。
第71回カンヌ国際映画祭で最高賞受賞
『万引き家族』は、第71回カンヌ国際映画祭で最高賞であるパルムドールを受賞し、大きな話題となりました。世界最高峰の映画祭において最高賞にあたる同賞は、1997年の第50回カンヌ国際映画祭にて今村昌平監督作品「うなぎ」が受賞して以来21年振りの快挙となります。
海外メディアからも非常に高い評価を得ており、日本のみならず世界的に大ヒット!中国では実写邦画歴代1位、フランス・パリでは初登場1位、全米では興行収入200万ドルを越え、2018年公開の邦画、外国映画で1位となるなど、世界中で旋風を巻き起こしました。
映画 万引き家族のあらすじをネタバレ!
ここからは、映画『万引き家族』のあらすじをご紹介していきます。ネタバレが含まれているので、まだ映画を観ていない方は注意して下さい。カンヌ映画祭、最高賞のパルムドールを受賞した作品とはどのような内容なのでしょうか。早速見ていきましょう!
万引き家族のネタバレ①貧しい柴田家
東京・下町、高層マンションの谷間に取り残されたように建つ古い平屋に、5人の家族が暮らしています。父・柴田治(リリー・フランキー)、母・信代(安藤サクラ)、息子・祥太(城桧吏)、風俗店で働く信代の妹・亜紀(松岡茉優)、そして家主である祖母・初枝(樹木希林)です。
皆、初枝の年金目当てに共に暮らしていますが、貧しいながらもいつも笑いが絶えず、口は悪くも皆で仲良く過ごしています。どこにでもいるような普通の家族に見えますが、実はこの一家、初枝の年金で足りない生活費は「万引き」で稼ぐという手段をとっているのです。
この日もいつものように、父・治と息子の祥太がスーパーに訪れ、目と目で合図をしながら手慣れた様子で、次々の店の商品をリュックの中に入れ、万引きを繰り返していました。
凍えるような冬の夜、万引きを終えた2人が大量の商品を持って家路に着きますが、ふと、とあるアパートの1階角部屋のバルコニーで震えているに小さな女の子を見つけます。中からは男女の言い争う声が聞こえ、見かねた2人は可哀想に思い女の子を家に連れて帰ります。
家には、祖母の初枝の他に、妻の信代、信代の妹、亜紀が2人の帰りを待っていました。初枝が女の子に名を訪ねると「ゆり」と名乗り、腕には火傷、他にも傷があることに気付きます。信代と亜紀は、ゆりを早く家に戻すように言いながらも世話を焼き、結局その日は初枝と一緒に眠りにつくのでした。
翌日、治はゆりをおんぶして、信代と共に連れて帰ったアパートに送り届けようとしますが、部屋の中からは昨日と同じように、またもや両親の争う声が聞こえます。その隙に治はベランダにゆりを戻そうとしますが、母親と思われる女性の声で「産みたくて産んだんじゃない」と言う声を耳にするのです。
信代はそれを聞き「連れて帰ろう」と言い、2人は再びゆりを連れて自宅に戻ります。ゆりも家には帰りたがらず、「脅迫も身代金要求もしていないんだから誘拐じゃない」と言う治の言葉で、ゆりは柴田家の子供としてそのまま一緒に暮らし始めます。
万引き家族のネタバレ②凛
信代は勤めているクリーニング店で、客がポケットに入れっぱなしのアクセサリーをくすねる、亜紀は、女子高生のコスプレや下着になってポーズをする性風俗店で働く、これが柴田家のいつもの生活でした。
ゆりが来てからも家族はそれぞれいつも通りに過ごし、月日が経っていきます。祥太はゆりを連れて近所をうろついては、駄菓子屋やスーパーで万引きを繰り返す日々を過ごしていました。
ある日、治が松葉杖をついて帰ってきました。仕事現場で脚を骨折してしまったのです。「事故だから労災保険が降りる。働けなくても大丈夫」という治でしたが、結果労災は下りず生活はどんどん困窮していきます。
そんな時、少女が行方不明で両親が2ヶ月間も捜索願いを出していなかったというニュースが流れ、世間を騒がします。人々は少女の両親に疑いの目を向け、家には報道陣が押し寄せていました。それは冬の夜にゆりを見つけた、あのアパートでした。
テレビにはゆりの顔写真が大きく写し出され、治たちはそこで初めてその少女がゆりではなく「じゅり」と言う名であることを知ります。
両親から虐待を受けていることを確信している一家は、後ろめたさを感じつつも、じゅりであることをバレないよう、長い髪を短く切り「凛」と名付けます。「似合うよ」と皆に褒められて笑顔を見せる凛、凛はもうすっかり柴田家の一員になっていたのです。
万引き家族のネタバレ③初枝の死
クリーニング店で働く信代でしたが、不況の煽りを受けて信代ともう1人、どちらかが辞めなければいけない状況に陥ってしまいます。
2人とも譲りませんでしたが、もう1人の女性から「ニュースで報道されていた女の子のこと知ってる」と脅されます。信代は「そのことを喋ったら殺す」と言い残し、自ら去っていくのでした。
年金の他、パチンコ店で他の客の玉を盗むこと以外収入がないはずの初枝でしたが、「慰謝料」と呼ぶ謎の収入がありました。初枝には離婚歴があり、昔初枝を捨てて別の女性と家庭を持ちました。
元夫もその後妻も亡くなった今、元夫の月命日に後妻との間にできた息子夫婦の元に訪れ、定期的にお金をもらっていたのです。そしてこの息子夫婦は、亜紀の実の両親であることが、ここで明かされます。
ある夏の日、一家は海に行き、泳いだり波際で皆でジャンプしたりと楽しんでいます。その仲睦まじい姿を目を細めながら眺め「ありがとうございました…」と呟きます。
その翌日、眠っていた初枝が目を覚ましません。眠ったまま亡くなったことに気付き、初枝に懐いていた亜紀は激しく動揺します。初枝は1人暮らしをしていることになっている、死亡すると年金がもらえない、そして凛のこともあって葬式ができない、これらの理由がら死亡届は出さず、治は家の床下を掘って遺体を埋めるのでした。
万引き家族のネタバレ④家族ばらばらに
ある日、祥太は凛を連れて駄菓子屋に行き、いつものように万引きをします。すると、店の主人に呼び止められ、「妹にはさせるなよ」とゼリーを2つ手渡されます。この件で、祥太は万引きに対して疑問を抱くようになります。
そしてついに事件が起こります。祥太が万引きしようとしたスーパーで、凛が見よう見真似でお菓子を盗もうとしてしまうのです。祥太はとっさに囮となってミカンを盗み逃げ出しますが、追いかけてきた店員に捕まりそうになり、橋の上から飛び降りケガをして病院に運ばれます。
このままでは全てがバレてしまう…と思った治は、一家で夜逃げをしようとしますが、結局警察に捕まってしまいます。家族はそれぞれ警察から事情聴取を受けることになりますが、ここで衝撃の事実が次々と明らかになりました。
夫の裏切りで独り身となった初枝、ホステスだった信代とその客だった治、初枝の元旦那と後妻の息子夫婦の娘の亜紀、そして祥太は凛と同じように、両親の育児放棄から拾ってきた子でした。一家は凛だけでなく、誰一人血縁関係がなかったのです。
また、信代は昔DV夫を殺害し埋めていたことも判明、治も共犯者でした。警察から全てを聞かされた亜紀は動揺し、家に初枝が埋められていることも話してしまいます。信代は自ら全ての罪を被って懲役5年、治は執行猶予付きの判決が下りました。
万引き家族のネタバレ⑤翔太と治の別れ
祥太は退院後、施設暮らしとなり、そこから学校にも通えるようになりました。釈放された治は、祥太を連れて信代の面会に訪れます。お互いの近況報告をした後、信代は祥太に、松戸のパチンコ店で車に放置された祥太を連れ去ったこと、車の車種や色など、誘拐した時の状況を伝えます。
そして「その気になれば両親を探せる」と残し、面会室を後にするのでした。その日は1人暮らしを始めた治の家に泊まり、夜、治は入院中の祥太を置いて夜逃げしようとしたことを告白します。そして「父ではなくおじさんに戻る」と伝えます。
翌朝、祥太は施設に戻るためバスに乗ろうしますが、別れ際に「自分はわざと捕まった」と打ち明けます。走り出すバス、治は思わず祥太の名前を叫びながら追いかけますが、治を切なそうに見つめる祥太を乗せたまま走り去るのでした。
一方亜紀は、初枝が亜紀の家族からお金をもらっていたと知り、自分と一緒にいたのはお金の為だったのか…と苦悩するようになります。しかし、初枝が亡くなった今、確かめるすべもありません。皆で楽しく過ごした家に行ってみるも、もう誰もいるはずもなく、空虚をただただ見つめるだけなのでした。
気になる凛ですが、実の両親の元に返され「じゅり」としての生活に戻りました。しかし、柴田家の皆のようにかまってくれるわけでもなく、ベランダに追いやられてしまいます。そして踏み台に乗り、まるでまた誰かが迎えに来ることを待っているかのように、ベランダから外を眺めるシーンで物語は幕を閉じました。
映画 万引き家族の家族構成とキャスト
- 初枝(樹木希林) : 身寄りのない独り身
- 治(リリー・フランキー) : 初枝の実の息子の名前
- 信代(安藤サクラ) : 初枝の実の息子の嫁の名前
- 亜紀(松岡茉優) : 初枝の亡くなった元旦那と後妻の息子夫婦の娘
- 祥太(城桧吏) : 治の本名”榎勝太”の”しょうた”
- 凛(佐々木みゆ) : 信代の小さい頃の親友の名前
柴田家は、互いの孤独を埋めるための初枝を中心とした疑似家族で、名前も本名ではありませんでした。名前の由来を見ても、初枝の願望や欲求が垣間見れるでしょう。