NHKの連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」でヒロイン・安子の夫“稔さん”を演じた松村北斗さん(SixTONES)。美しくて、やさしくて……その鮮烈な印象に心奪われた人は、少なくありません。 悲しい運命にからめとられた彼ですが、「いや、稔さんは死んでない」「絶対、還ってくる!」と信じて疑わない人もまた、あまたいます。 マント姿もりりしい紳士ぶりと、実母の圧にも屈しない新生児のようなひたむきさ。今回は大人女性の胸を切なくしめつける稔さんの魅力を、役名と松村さんの名前から解いていきたいと思います。
“稔”は、誠実な生き方、発展への願いが込められた名前
“稔”という名前は、安子が彼と出会った1939年(昭和14年)に、「男の子の名前ランキング」(※)で8位にランクイン。“安子編”の時代にも重なる1931年~1956年の間は、何度もベストテンに入っていました。同年の女の子の名前1位は“和子”です。ちなみに、稔の弟“勇”の名前はたびたび1位になっています。 戦時中ゆえ、勇ましさや国の豊穣を思わせる言葉は、特に人気が高かったのでしょう。 “稔”の文字をくわしく見てみると、穀物の実りや物事を成就させるための努力、誠実な生き方、発展への願いといった意味が読み取れます。 稔は地元の有名企業・雉真繊維の跡取り息子で、自社の製品を欧米と商取引できるようにすべく英語の勉強に励んでいました。一方でジャズを愛し、心の豊かさを養うことも忘れなかった彼は、安子の知的好奇心を引き出し、彼女の往く道を照らす道標にもなったのです。 (※)明治安田生命「名前ランキング 生まれ年別ベスト10」より。明治45・大正1(1912)年~昭和63(1988)年のベスト10については、昭和64・平成1(1989)年時点における加入者を対象に調査を行なったものです。
“北斗”の名前の由来に重なる“稔”の人生
そして、道標といえば松村さんのお名前の由来でもある“北斗七星”が浮かびます。旅人が夜空に北極星の姿を探すとき、手がかりとなるのが北斗七星です。 松村さんはご両親の「北斗七星のように、人の道標となるような人間に育ってほしい」との願いそのままに、稔役を通して私たちに前に進む健気さを教えてくれたのだと思います。 「どの瞬間も自分が演じる役に入り込み、全力でその役を生きる、そんな居方を目指したい」という松村さんの真摯な演技は、稔さんというキャラクターを忘れ得ぬ人として見る者に刻みつけました。