本を通して恋愛や結婚について学ぶ本連載の第7回では、国際結婚カップルの日常を描いたコミックエッセイ「ダーリンは外国人」について書きました。外国人と結婚した日本人女性の視点から、ふたりのストーリーが微笑ましく語られており、読み進むうちに「結婚」についてふと考えさせてくれる一冊です。

国際結婚カップルのストーリー

「ダーリンは外国人」は、漫画家の小栗左多里さんが、パートナーのトニーさんとの日常について書いたコミックエッセイです。

国際結婚をテーマにしたこのジャンルでの草分け的存在でもあり、「ダーリンは外国人」を読んで国際結婚をより身近に感じたという人も多いのではないでしょうか。

続編も出版されており、2010年には同タイトルで映画にもなりました。

国際恋愛カップルなら「あるある」のエピソードに共感し、国際結婚には無縁・・という人でも、外国人がパートナーだと、こんなことで苦労があるということが垣間見られるのではないでしょうか。

結婚は、ふたりの「違い」が生むドラマ
(画像=ダーリンは外国人 まるっとベルリン3年め
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小栗左多里/トニー・ラズロ KADOKAWA 2016年01月19日、『DRESS』より引用)

期限切れのクーポン事件

パートナーが外国人であるということを如実に感じるときというのは、往々にして「相手が日本人だったらこうはならないよね」という瞬間だったりします。

本書はそういったエピソードが随所にちりばめられていますが、そのひとつが「期限切れのクーポン事件」。

レストランで食事をすることになり、期限が切れてしまった割引券を前に「これは使えないな」とあきらめかけた小栗さんに対し、「交渉してみる」とトニーさん。

見事に交渉が成功し、期限が切れていても使えるようにしてもらえました。

このくだりを読みながら、これはトニーさんが日本語が堪能だからこうスムーズにいくのだよね‥と思っておりました。

というのは、先日、我が家でも同様の「期限切れクーポン事件」があったのです。レストランではなく、近所のスーパー銭湯のような施設のものだったのですが、アメリカ人の夫はトニーさんのように「期限が過ぎているけど、使わせてもらえないか聞いてみよう」と提案。

ここまではいいのですが、日本語ができない夫は私に電話をしてくれと頼みました。私は普通の日本人の感覚として、大企業の経営するチェーンの施設ではそういった融通は利かないだろうから、したくない、というと、図らずも議論に発展してしまったのです。

私たち一家が12年のアメリカ生活を経て日本に移住して3年半になります。

日本に帰って来たばかりだったら、私もアメリカ人的な感覚で普通に電話をしていたかもしれませんが、今となっては「絶対に答えはNOなのだし、そもそもそういうことを厚かましくお願いする人だと思われるのが嫌」という気持ちが先に立っている自分に気が付きました。

もしアメリカに住んでいたらすぐに電話したんだけど…と思いつつ気が付くと、その場合は彼が自分でさっさと電話して聞いていたでしょう。

日本語がそれほどできない外国人のパートナーと日本に住むことのデメリットを感じた瞬間でした(笑)

考え方の違いを超えて

「ダーリンは外国人」には、文化や考え方が違うふたりがうまくやっていくコツについても触れられています。

小栗さんとトニーさんのカップルにとっては、その最大のコツは「相手に干渉しすぎない」こと。

相手の言動をみて、なんだかな~と思うことがあっても、あれこれと気をまわして口出しをしたりせず、「認めて」「許す」ことができれば、モメ事は減る・・と書かれています。

これは、パートナーが外国人でも日本人でも同じではないでしょうか。

パートナーが外国人だと、ふたりの間に「違い」があることが最初から明白です。そして、その違いの幅が日本人同士のカップルよりも極端に大きい可能性があることも。

でも、日本人同士だって、全てにおいてまったく同じ考え方をするふたりはいません。

その意味で、家族のように一緒に多くの時間を過ごしていれば、どうしても相手の言動が気になることは避けられないとも言えます。

そんなとき、いちいち目くじらを立て、血圧をあげながら喧嘩腰になるのか? それとも、小栗さんのように「まあいいか、自分も許されているのだし」と考えをシフトできるかどうか。

このあたりに、夫婦関係がハッピーに長く続く秘訣がありそうです。

日本からドイツへ、国際結婚カップルのその後

「ダーリンは外国人」が出版されたのは2002年。出産を経て家族が3人になった小栗さんファミリーは、数年前にベルリンに移住されていました。

以前から、トニーさんはいずれ日本ではない別の国で住もうと提案しており、お子さんの小学校が始まるタイミングで、10か国ほどの中から移住先の国を選んだそうです。

現在のドイツでの生活や、多言語教育についても著書やメディアなどで情報発信されています。

国際結婚家庭でなくても、幼少期から英語を習わせたいと考える人が増えています。最近、多言語環境で子どもを育てることに関しておふたりのインタビューを目にしたのですが、このテーマについて、カップルの間での考え方の違いも垣間見られました。

海外移住やバイリンガル・マルチリンガル教育など、グローバルな視点での家族のあり方に興味がある人にとっても、とても参考になるモデルケースのようなファミリーです。

そのおふたりの原点とも言える「ダーリンは外国人」。読書はちょっと苦手…という方にもお薦めの一冊です。

結婚は、ふたりの「違い」が生むドラマ
(画像=国際結婚一年生
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塚越悦子 主婦の友社 2011年01月、『DRESS』より引用)


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