“背負うものがある男”役で、綾野剛の右に出るものはいない
前述した通り、羽生(綾野)には自分の判断ミスによって大切な先輩と仲間を失ったという過去があります。そんな十字架を背負い失墜したところから、再び自分の正義を取り戻し前を向いて進んでいく人間の再生を、第5話で見事に演じた綾野剛。これまでも数多く陰のある役を演じてきた綾野の真骨頂ともいえるでしょう。表面的には熱血漢だったり温厚だったりする役でも、当然に何かを抱えているという人間の性(さが)をこんなにも自然に、リアルに演じられる稀少な役者。
綾野剛の演じた役で印象深かった人物の一人が、大ヒットドラマ『コウノドリ』(TBS系)の主人公、優しくて使命感のある産科医・鴻鳥サクラです。実はサクラには、父はおらず、母も生まれてすぐに亡くしていたという生い立ちがあります。ここでも綾野は、優しい微笑みのなかに、出自ゆえの淋しさやせつなさを表現していました。 そんな繊細な演技を披露する綾野だからこそ、はじめ飄々として見えた羽生からも、過去に何かあった感……一度失望してから再度手に入れた正義への想いの強さを、第1話から感じさせてくれました。そこには、ただ何かを抱えている青年ではなく……抱えてきたものを武骨な男の魅力へと昇華させた色気さえもおぼえずにはいられません。 もちろん、キレのあるかっこいいアクションも見どころ!『アバランチ』は、綾野剛という役者に魅了される一作ともいえます。
綾野剛VS渡部篤郎の展開にも注目
正義の味方から一転、容疑者として指名手配されることとなった羽生を、ますます磨きがかかった男の色気で綾野剛がどう演じるのか。男としての円熟味が最高潮ともいえる渡部篤郎がどう対峙していくのか……『アバランチ』後半戦でじっくり楽しみたいと思います。 <文/鈴木まこと(tricle.llc)>
鈴木まこと(tricle.llc)
雑誌編集プロダクション、広告制作会社勤務を経て、編集者/ライター/広告ディレクターとして活動。日本のドラマ・映画をこよなく愛し、年間ドラマ50本、映画30本以上を鑑賞。Instagram:@makoto_s.1213
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