しっかりとした足取りで、軽やかに歩くその姿は、まるで私たちに生きる楽しさや旅の美しさを教えてくれているよう。彼女と六本木の街を歩きながら、そう思いました。これまで約40カ国、100以上の都市を旅してきた伊佐知美さんに、旅の持つ力と、週末におすすめしたい旅行先についてインタビュー。どうぞ最後までお付き合いください。

旅するように暮らし、暮らすように旅をする。

毎日のように違う景色を見て、違う体験を積み重ねていく。

窮屈な場所から離れて、広い世界で自分の欲求のまま生きていくことができたら。

旅に出ると「人生は自由だな」って感じて幸せになる
(画像=伊佐知美さん、『DRESS』より引用)

そんな自身の願いを実現し、今も世界中を旅するように歩き回っている伊佐知美さん。

コラムニストとして文章を書いたり、フォトグラファーとして写真を撮ったりしながら、これまで約40カ国、100都市を旅してきました。

2016年4月から2017年末までは、念願だった世界一周旅行へ。帰国後しばらくは、家を持たない暮らしを続け、現在(2018年3月15日時点)は三軒茶屋に一軒家を借りて住まいながら、旅人が集まるシェアハウス「えいとびたー」を共同運営しています。

今回は、「週末ふらり旅」特集に合わせて、旅が日常となった伊佐さんに、旅が私たちに与えてくれることやその魅力、楽しみについて伺いました。

■旅と写真と文章が好き。 “好き”でつくるワーク&ライフスタイル

「30代を過ぎて、疲れやすくなってきました(笑)。旅行中もけっこう疲れることはあります。でも、旅はやっぱり楽しいから、やめられない。旅するように暮らすスタイルを永遠に続けるつもりはないですが、もう2〜3年は今みたいな暮らしをしたいなと思っています」

旅が楽しい、というのは旅好きならもちろん共感するところ。詳しく聞こうとすると、伊佐さんは「私はひねくれものなので……(笑)」といたずらっぽい笑みを浮かべて言葉を続けます。

旅に出ると「人生は自由だな」って感じて幸せになる
(画像=『DRESS』より引用)

「たとえば、ニューヨークに行ったことがないと、私の中では『ニューヨークという街があるらしい』って感覚なんです(笑)。行って、自分の目で見るまで、本当にあるかなんてわからない、って思ってます」

見たことがないものを見たい。歩いたことがないところを歩きたい――。五感を通して、まだ感じていない感覚を味わいたい、と伊佐さんは瞳を輝かせながら話します。

旅に興味を持ったのは幼少期。父親の転勤で幼いころ、上海に住んでいたこともありました。当時から本が好きで、旅にまつわる本もたくさん読んでいたといいます。

旅しながら仕事をするのに憧れを持ったのは10代のころ。村上春樹さんの『遠い太鼓』に出会い、世界を旅しながら文章を書いて暮らすワークスタイルを知ったのがきっかけでした。

旅に出ると「人生は自由だな」って感じて幸せになる
(画像=写真提供:伊佐知美、『DRESS』より引用)

■異国の地を歩いていると、書きたい文章が降ってくる

かつて憧れたワーク&ライフスタイルを手にした伊佐さんは、旅という経験そのものが特別なパワーを持っていると語ります。

「旅に出ると、“文章が降ってくる”感覚があるんです。日本を発つときから降ってくることもありますよ。異国の地で過ごしていると、ほんとに気持ちいいくらい、五感がパッと全部開くんです。自分が書きたい文章を書けるんですよ。知らない街を歩いているだけで、ひらめくアイデアもたくさんあります。物理的な移動をするだけで、自分のなかから出てくるものが、ここまで違うのかと驚くほどです」

旅に出ると「人生は自由だな」って感じて幸せになる
(画像=写真提供:伊佐知美、『DRESS』より引用)

新しいカメラを買ってからは、旅先で写真を撮るのもとても楽しくなり、写真の腕を上げようとカメラの勉強も始めました。

さまざまな媒体への寄稿文やnoteなど、伊佐さんが綴る文章の間を埋める写真からは、現地の匂いや空気、湿度までもがいきいきと立ち上ってくるよう。

臨場感や温度感あふれる写真を、心から楽しみながら撮る伊佐さんの姿が想像できます。

旅に出ると「人生は自由だな」って感じて幸せになる
(画像=写真提供:伊佐知美、『DRESS』より引用)

「旅に出ると人生は自由だな、って思うんです。場所や人、何にも縛られないのが旅。日本で普通に暮らしていると、帰る家という“定点”があります。でも、旅先にあるのは自分という点だけ。帰らないといけない場所もなければ、行かないといけない場所もない。極端な話、まるい地球の360度、どこに行ってもいいし、行かなくてもいいんです。こんな自由、他にありますかね(笑)」

カフェで隣り合った人から誘われて、ホームパーティーに参加し、新たな出会いを楽しむこともあるといいます。偶然の出会いが未知の世界の扉を開き、新しい可能性を運んできてくれる。人生において、旅がそんな役割を果たすことも。

■国内外・週末旅行先、伊佐知美さんのおすすめは?

今年はどこを旅するんですか? そんな問いに伊佐さんは「先の予定を決めるのが苦手で、まだ構想段階なんですけど」と切り出し、なんとなく予定している旅先を挙げてくれました。

旅に出ると「人生は自由だな」って感じて幸せになる
(画像=『DRESS』より引用)

ロンドンやマイアミなど世界各地にある、居住スペースと共有スペースを持つ「コーリビング(Co-living)」を巡ったり、ユーラシア大陸を横断したり、旅行会社と組んでモロッコツアーを開催したり、中南米を回ったり、マルタ留学をしたり――。

その合間に、週末ふらっと、国内を旅するなら……?

「12月に2泊3日で訪れた青森は良かったです。行きは青森空港、帰りは三沢空港(八戸)を利用しました。移動はクルマで、大自然にふれながらのドライブはとても気持ちよかったです」

青森県立美術館や十和田市現代美術館を巡ってアートを楽しみ、温泉に入り、豊かな自然にふれ……と、コンテンツが豊富な街だといいます。

また、週末・海外旅で伊佐さんがすすめるのは、フライト時間が短めで、電車が発達している国。

「台湾や香港だと沖縄に行くくらいの、『近い』感覚があると思います。それよりもフライト時間は長いですが、タイのバンコクやシンガポールは空港到着後、街中まですぐにアクセスできます」

今ではどこへ行くにも、機内持ち込みできる35リットルの小さいスーツケースで移動する伊佐さん。洋服2着程度とPC、スマホ、カメラ、お金、パスポートさえあればOK。消耗品は現地調達するため、荷造りにかかる手間もほとんどなし。思い立ったときに身軽に旅できるというわけです。

旅に出ると「人生は自由だな」って感じて幸せになる
(画像=写真提供:伊佐知美、『DRESS』より引用)

「スーツケースを機内持ち込みするようになってから、電車や飛行機の違いを意識しなくなりました(笑)。京都に行くのも、ベトナムに行くのも、私にとっては同じ感覚です。コスメやスキンケアアイテム、服も現地で買うのがおすすめ。現地のものを着ていると話しかけられることも多く、新しいコミュニケーションが生まれるのも楽しいですよ」

良くも悪くも思っていたようには進んでいかないのが人生。旅もそれと似ています。

伊佐さん自身も、素敵なことも、びっくりすることも、大変なこともあった、と振り返ります。旅に出続ける限り、これからもいろいろなことに遭遇するでしょう。

だから、人生も旅も味わい深い。

少し気分を変えたいとき、「旅に出る」のもひとつの面白い選択肢になるはずです。

伊佐知美さんプロフィール

ライター、エディター、フォトグラファー。『灯台もと暮らし』編集長。数々の媒体に旅にまつわる記事を寄稿。著書に『移住女子』(新潮社)がある。オンラインSlackコミュニティ「#旅と写真と文章と」立ち上げ人。主にTwitterとnoteで情報発信中。


提供・DRESS(「人生を守る知恵、未来を歩く地図」となる言葉や人物、文化を伝えるウェブメディア)

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