「佐々部監督にひと言伝えられるなら?」

俳優・升毅、急死した監督への思いを胸に、“漂流ポスト3.11”を訪れ感じたこと
(画像=『女子SPA!』より引用)

――升さんは、ナビゲーターであると同時に、大切な人(佐々部監督)を亡くした当事者でもあるわけですが、途中、「佐々部監督にひと言伝えられるなら?」と聞かれて、かなり時間を置いてから口を開かれました。拝見しながら自分に置き換えて考えていたのですが、自分が考えていた言葉とまったく同じことを升さんが言われました。 升「そうですか。まずあの言葉が出て来たんです。でも、もっと他にもあるはず、本当に伝えたいひと言があるはずだと探したんです。考えて、考えて。でも他に見つからなくて、結局あの言葉になったんです。あんなに時間が経っているとは、本編で観るまで自分では気づいていませんでした」

ドキュメンタリーを撮り終えて

――現在、“漂流ポスト”には、東日本大震災に限らず、大切な人を亡くした方からの手紙が届き続けています。升さんも最後に手紙を書こうとされていました。まだ佐々部監督が亡くなられてから時間が経っていませんが、このドキュメンタリーを通じて、悲しみは消えずとも、何か変化はありましたか?

俳優・升毅、急死した監督への思いを胸に、“漂流ポスト3.11”を訪れ感じたこと
(画像=『女子SPA!』より引用)

『歩きはじめる言葉たち 漂流ポスト3・11をたずねて』より

升「『亡くなったことを受け入れて、そのことと自分がどう向き合うかを考えなきゃいけないな』と思っていたんです。考えていたのではなく、『考えなくちゃいけないな』と。実際にいろんな方のお話を聞いたり、監督ゆかりの地に足を運んだりしましたが、結局、より近くに監督を感じてしまって。最終的にこの作品ができた段階で、『やっぱりまだ近くにいるな』と、そこに戻ってしまったというか。本来なら先に進んでいるはずなんですけど、結局進めていないのかもしれません」 ――正直なお気持ちをありがとうございます。 升「僕もこの作品の素材であって、生み出したわけではないので、お客様に対して、ここを観て欲しいとか、そういう気持ちにはなれないんですよね。客観的な立場にないので。ただ、観ていただきたい作品であることは間違いないです」