東京は大久保にある「Oh!キッチンN (オーキッチンエン)」という韓国料理を味わえるお店へと足を運ぶ。女性からの支持率が高いと評判のお店。新大久保に数あるダッカルビのお店の中で、ひときわ根強い人気を誇る「Oh!キッチンN」の秘密を探りに行ってきた。
始めて韓国を訪れたのは、今から20年ほど前のことだった。
近場で安く行ける旅行先ということで、特に何も考えずに同じ女子大に通っている同級生ら10人くらいでツアーに申し込んだ。
真冬で、とにかく寒かった。
今ほど韓国料理はメジャーな存在ではなく、当然食べたこともなく、焼肉屋のサイドメニューにあるキムチやビビンバ、冷麺くらいしか、わたしたちは知らなかった。
だから外は氷点下10度だというのに、わざわざランチで冷麺を食べて、身体の芯から冷えたことを印象深く今でも覚えている。これがわたしと韓国料理との最初の出会いだったと思う。
大学を卒業後、最初に就職したのは、新宿の職安通りにある編集プロダクションだった。
この頃、JR大久保、新大久保の駅にかけては、当時からコリアンタウンとして栄えていたし、多くの韓国料理の専門店が点在していたが、同時に危険な雰囲気の街でもあった。
南米の女性が路上で客を引いている姿は日常だったし、新大久保に住んでいた友人は、住み始めてから引っ越すまでの半年の間に、2体もの死体を見たとも言っていた。嘘か本当かは知らないけれど、そういうことを言われても納得できる、治安の悪さがあった。
そうはいっても、会社が近かったせいか、たまに近くの韓国料理店でご飯を食べることも。多くは韓国人のオモニ(お母さん)がやっている店で、丸鶏の中に糯米や朝鮮人参などの薬膳を詰め込んだサムゲタンや、インスタントラーメンを入れて食べるプデチゲといった「焼肉屋にはない韓国料理」を初めて知った。
大久保がガラリと変わったのは、2000年代初頭の頃だったと思う。
冬のソナタのヨン様ブームで中年女性たちがこぞって訪れるようになった。どんな薄暗い路地にも大声でしゃべりながら突っ込んでいく彼女たちのお陰……かどうかはわからないけれど、おそらくは街ぐるみの努力もあって、治安は一気に良くなった。
その後、K-POPブームが起きて若者がどっと増え、そして今に至る。
わずか20年の間で、驚くほど大久保の街は変わった。中でもここ数年で、驚くほど増えたのは、鉄板の上で溶けたモッツァレラとチェダーを、甘辛いタレで炒めた鳥肉(タッカルビ/ダッカルビ)にトッピングして食べる、「チーズタッカルビ」を出す店が増えたことだ。いま大久保の街を歩いていると、1メートルごとに赤いチキンに黄色いチーズの看板を見かける。
女子中学生(JC)、女子高生(JK)のトレンドをランキング化した「JC・JK流行語大賞2017」も受賞し、まさにブーム絶好調のチーズタッカルビだけれど、実際にどこの店で食べればいいのかと考えると悩ましい。
■トロリとしたチーズ、甘辛のダッカルビ。そしてマッコリの爽快感をどうぞ
発祥とされている『市場タッカルビ』は安心だけれども、せっかくならば、もう少し通っぽいお店……ということで、今回訪れたのは、JR新大久保駅から徒歩2分のところにある『Oh!キッチンN (オーキッチンエン)』だ。
『Oh!キッチンN』がオープンしたのは、チーズタッカルビが大久保で産声を上げた、2016年1月からおおよそ9カ月後の、同年10月16日。その頃から現在に至るまで店長を務めるキムさんは、以前は『市場タッカルビ』で働いていて、チーズタッカルビの開発にも携わったという。
「うちのお母さんは韓国の春川(チュンチョン)でタッカルビ屋をやっていて、それでチーズをトッピングするメニューがあったんです。『市場タッカルビ』で新しいメニューを開発することになった時に、モッツァレラとチェダーを半分ずつ鉄板に乗せたチーズタッカルビを作るアイデアになりました。」
けれども『Oh!キッチンN』名物のチーズダッカルビには、他店とは大きく違った点がある。
通常のチーズタッカルビのチーズはチェダーとモッツァレラの2種が使われていることが多い。しかし『Oh!キッチンN』では、そこにラクレットチーズが加わる。ラクレットチーズは、『アルプスの少女ハイジ』の中で登場する、あの食欲を刺激する、とろとろのチーズとして知られている。
最近は、ラクレットチーズの断面を温めて、溶けたところをナイフで削いで皿に盛ったじゃがいもソーセージなどに掛けたものが食べられるバーやバルが増えているが、チーズタッカルビに掛けるのは、おそらく『Oh!キッチンN』だけではないだろうか。
せっかくならば、2種類食べてみたいと思い、甘辛ダッカルビ、てりマヨダッカルビ、低温熟成サムギョプサルの中からふたつが選べる『ラクレットチーズ ハーフ&ハーフ(2人前 2680円)』をオーダーした。
すると間もなくして、甘辛ダッカルビとサムギョプサルが盛り合わさった鉄板がすぐに出てきた。
すでに具材の肉類には火が通っているので、後はチーズを溶かすのみ。
みるみるうちにトロリとしてくる。溶け切って川のようになったところで、キムさんが店内のカウンターの上で温めてあったラクレットチーズを持って登場。
ナイフで削り、これでもかと滝のように流し込む。その様子は、とにかくドインパクトの一言だ(下画像参照)。
まずはチーズだけを味わう。塩気が最も控えめだというモッツァレラは優しいミルクの味がする。
チェダーはコクがあり芳醇、ラクレットは匂いが強く、塩気のパンチがもっとも利いている。
それぞれのチーズの個性を味わった後は、ダッカルビにディッピン。甘辛いソースにまろやかなチーズがものすごくマッチする。1種類もしくは数種類のチーズをブレンドして食べると、自分好みの配合を見つけ出す楽しさも味わえる。
サムギョプサルは低温熟成させてあるせいか、しっとりと柔らか。ごま油に塩を入れたものや、スイートチリソース、サムジャンという甘辛い味噌で味つけて、好みで焼いたキムチやエリンギ、いんげん、プチトマトなどと一緒にサンチュで巻いて食べる。
韓国のお酒といえばマッコリ。米を主体とする日本でいうどぶろくだが、乳酸の味が強くて爽やかで飲みやすい。さまざまなフルーツフレーバーがここ近年多く発売されている。
今回はオススメだという「ざくろマッコリ」(480円)と「巨峰マッコリ」(480円)、それに「クリームチーズマッコリ」(480円)をいただいた。
美肌に効果があるというざくろマッコリはさっぱり爽やか、巨峰マッコリは甘めで見た目にもグラデーションが美しい。クリームチーズマッコリは、チーズケーキのようなまったりとした風味と乳酸菌が特徴。どれも最初に「驚き」を感じられるのが楽しい。
おおかた食べ終えた後は、そのままの鉄板で締めの「チャーハンオムライス(500円)」を作ってくれる。
残ったチーズを甘辛ソース味付けた韓国海苔入りのご飯に混ぜ込んで、鉄板で炒めつつ、可愛らしいハート形に成形した後、周囲に卵液を流し込んで完成。
ふと気づけば女性客で満席のテーブルのあちらこちらから、賑やかに盛り上がる声と写メのシャッター音が響いている。
イケメン揃いの店員さんも慣れたもので、写真が撮りやすいように「カメラの用意はいいですか?」とフレンドリーに手助けまでしてくれる。
女子中学生、女子高校生たちにブームだというのは本当らしく、制服姿の少女が入ってきて浮足立った様子でチーズタッカルビを注文し、目の前に現れた鉄板に黄色い声をあげる。
変化しゆく新大久保の今を目にしっかりと焼き付けながら、チーズが混ぜ込まれたごはんを頬張った。
取材協力/「Oh!キッチンN (オーキッチンエン)」
住所:東京都新宿区百人町2-3-20 英泰ビル1F
電話番号:03-6886-8706
定休日:なし
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