奈良県天理市にある長岳寺は、広い境内で四季折々の花が楽しめる寺院です。特に11月中旬頃からは、美しい紅葉が楽しめ、多くの人が訪れます。周辺にはランチが味わえるお店、古墳も点在しており、ハイキングにも適しています。
長岳寺とは
長岳寺(ちょうがくじ)は、奈良県天理市にある、高野山真言宗の寺院です。天長元年(824年)に、淳和天皇の勅命により、弘法大師空海が開いたと伝わる、歴史のあるお寺になります。ご本尊として、阿弥陀三尊像が祀られています。
かつては大きなお寺であった長岳寺は、戦火や廃仏毀釈により衰退しましたが、平安時代の鐘楼門、江戸時代の延命殿といった建築物が残っています。また、広い境内には庭園もあり、春のサクラ、ツツジ、初夏のアジサイ、夏のスイフヨウ、秋のモミジ・カエデなど、四季折々の花や紅葉が楽しめる寺として知られています。
長岳寺の紅葉を鑑賞しよう
長岳寺では、例年11月中旬から12月上旬頃にかけて、境内で紅葉が楽しめます。特に本堂前の庭園で、真っ赤に色付くモミジは大変美しく、全国紅葉100選にも選ばれています。
こちらが庭園の紅葉です。イロハモミジ、ノムラモミジ、カエデといった木々が多数植えられており、朝晩の寒暖差の大きい奈良盆地の気候が、それらを真っ赤に染めていきます。
庭園の池には、周囲の紅葉や本堂がきれいに写ります。筆者が訪れた際には、この様子を写真に撮っている人も見られました。
本堂からは、庭園の紅葉が一望できるので、絶好の撮影スポットとなっています。しかし、出入りされる参拝者は多いです。混雑時を避けたり、人が立ち去ってから撮影するなど、工夫してみてください。
これらの写真は、11月中旬に撮影したもので、まだ真っ赤というわけではありません。ここからさらに深い色合いになるので、こまめに紅葉情報をチェックして、最盛期に訪れるのがおすすめです。
なお、駐車場はさほど広くないため、シーズンの週末などには満車となり、入場に待ち時間が発生することがあります。平日に訪れたり、公共交通機関を利用することも検討してください。
古い建築物や迫力の地獄図も!境内の文化財を見てみよう
鐘楼門
長岳寺の駐車場より、参道を歩いてくると、このような楼門が見られます。この門の上層には、鐘を吊った遺構があるため、鐘楼門(しょうろうもん)と呼ばれています。建築は平安時代とされ、重要文化財にも指定されています。
本堂
鐘楼門をくぐって少し進むと、左手に本堂が見えてきます。天明3年(1783年)に再建されたもので、お寺の規模に比べると小じんまりとしているようにも感じますが、大きな瓦屋根が特徴となっています。こちらには、ご本尊の阿弥陀如来三尊や増長天などの仏像が安置されています。
大地獄図
大地獄図は、長岳寺に伝わる地獄図です。安土桃山時代から江戸時代初期の絵師「狩野山楽」によって描かれたもので、大きさは、縦3.5メートル、横11メートルあります。全部で9つの掛け軸となっていますが、それらを合わせて1枚の絵となっています。
地獄図とは、簡単に言いますと、仏教における人の死後の世界について描かれたものです。現世とあの世を隔てる境目にある「三途の川」を渡った人々は、閻魔大王によって善悪を裁かれ、極楽に行くか地獄に堕ちるか決まるという話を、聞いたことがある人は多いでしょう。こちらには、その様子が細かく描かれているのです。
この地獄図は、毎年10月23日から11月30日まで本堂に掛けられ、一般に公開されます。週末などには、お寺の住職が解説してくれることもあるので、是非鑑賞してみてください。
旧地蔵院
旧地蔵院は、長岳寺に多数あった塔頭(たっちゅう)のうち、唯一残った建築物です。江戸時代の建築で、現在は寺院の庫裏(くり)として使われています。庫裏とは、寺院の中にある、調理や事務、住居などに使用される建物のことです。
建物の南側には、庭園がありますが、こちらも同時代に造られたものとされています。小さなものですが、よく手入れされており、風情があります。お寺の拝観料を支払った方は、旧地蔵院の建物、庭園を見学できるので、忘れずに立ち寄ってください。
弥勒大石棺仏
長岳寺の境内の山中には、鎌倉時代から江戸時代の石仏が、多数残っています。こちらは、そのなかでも比較的大きな弥勒大石棺仏です。弥勒菩薩は、兜率天(とそつてん)という浄土で、現在も修行を続けておられ、未来には、仏となってこの世に下り、私たちの魂を救ってくださると言われています。急な階段を登った場所にあるので、あまり観光客の姿は見られませんが、静かに手を合わせてみるもの良いでしょう。