大学進学を左右する、年に一度の全国共通試験

専門学校・短大を含む大学進学率が80%台という高学歴社会の韓国。教育熱も高く、受験戦争の厳しさは日本以上とも言われます。

その片鱗を伺えるのが、毎年11月中旬の木曜日に行なわれる「大学修学能力試験」、通称「修能(スヌン)」です。

修能は言わば日本の大学入試センター試験(大学入学共通テスト)に当たり、大学進学に向けた最初の登竜門。各大学では修能終了後に面接や小論文などの2次試験も実施されますが、受験生たちが最も本腰を入れて取り組むのが修能です。

学修学能力試験(スヌン)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)
学修学能力試験(スヌン)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)
学修学能力試験(スヌン)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

韓国では修能の得点次第で志望大学に行けるかどうかはもちろん、将来まで決まるとも言われるほど。韓国の受験生たちは、高校時代の3年間を修能本番の1日にかけている、と言っても過言ではありません。

問題作成過程はスパイ大作戦さながら

学修学能力試験(スヌン)
(画像=もしかしてこの中で…?、『韓国旅行コネスト』より引用)

1994年にスタートした大学入試制度に伴い導入された修能。その問題作成、用紙の印刷、採点など主要業務を担うのが、「韓国教育課程評価院」という機関です。同日・同時刻に全国一斉に実施される重要な試験だけに、特に問題の作成は徹底した管理下で行なわれます。

大学教授や高校教諭で構成された約300名の出題委員は、何と修能終了までの約1カ月間を合宿所内でのみ過ごさなければなりません。その間、電話・Eメール・ファックス・郵便など外部との連絡、インターネットへのアクセスは一切禁止。外出もやむを得ない場合のみ保安要員・警察同行の上、許可されます。 因みに、出題委員の日当は30万~35万ウォン(2019年)程度。

さらに合宿所の建物はそれと分からぬよう「内部修理中」の看板が掲げられるなどカモフラージュが施されるとか。かなり自由が制限された状況ですが、全ては問題流出という不測の事態を未然に防ぐための措置なのです。

天変地異、流行病で試験日が変更に

学修学能力試験(スヌン)
(画像=新型コロナの影響で登校できない日が続いた。COPYRIGHTⓒ YONHAP NEWS、『韓国旅行コネスト』より引用)

修能を前日に控えた2017年11月15日、慶尚北道(キョンサンプッド)浦項(ポハン)でマグニチュード5.4の地震が発生。試験会場に被害があり、安全点検などのために、1週間延期となりました。災害のために試験が延期されたのは修能開始以来、はじめて。 翌年からはこうした事態に備えて試験問題を2種類作成することとなり、出題委員の合宿期間は約1か月半に延長されています。

さらに、2020年には新型コロナウイルス感染拡大のため、通常は2月に始まる新学期が4月にずれ込んだため、修能も12月に実施されることとなりました。

受験シーズン名物!韓国の縁起担ぎアイテム

修能が実施される11月に入ると、韓国の街では合格祈願グッズを販売する店が増え始めます。

中でもよく目に付くのが、餅や飴。「付く」という意味の韓国語「붙다(プッタ)」には「合格する」という意味もあり、粘り気があって張り付くものを「志望校に受かるように」との願いを込めて贈ります。

学修学能力試験(スヌン)
(画像=餅と伝統飴(ヨッ)の贈り物セット、『韓国旅行コネスト』より引用)
学修学能力試験(スヌン)
(画像=修能期間限定販売!餅入りあんまん、『韓国旅行コネスト』より引用)
学修学能力試験(スヌン)
(画像=応援メッセージが書けるファンタ、こちらも限定アイテム、『韓国旅行コネスト』より引用)

また、フォークも定番。修能はマークシート方式のため、こちらは「찍다(チッタ、刺す)」とかけ、「正しい答えを刺せ!」という意味が込められています。

他にも雑貨ショップなどにはアイディアに富んだユニーク商品が満載。思わず噴き出してしまうグッズをもらえば、勉強のストレスもしばし吹き飛びそうです。

学修学能力試験(スヌン)
(画像=これで食べたら受かりそう?!合格フォーク、『韓国旅行コネスト』より引用)
学修学能力試験(スヌン)
(画像=「運(うん)を掴め!」ということでう○ち型の飴、『韓国旅行コネスト』より引用)
学修学能力試験(スヌン)
(画像=答えがぴったり合うようにと 体にフィットする下着、『韓国旅行コネスト』より引用)
学修学能力試験(スヌン)
(画像=「チャパゲティ」をもじったお菓子「合格パーティー(ハッキョッパティ)」、『韓国旅行コネスト』より引用)
学修学能力試験(スヌン)
(画像=「マルボロ」ならぬ「ジャルボラ(잘보라)」は「試験がんばれ」の意味、『韓国旅行コネスト』より引用)
学修学能力試験(スヌン)
(画像=切符に書かれた行き先は… 「合格駅」! 、『韓国旅行コネスト』より引用)

修能(スヌン)前に食べない「禁忌フード」は?

学修学能力試験(スヌン)
(画像=わかめのツルっとした食感が「すべる」を連想、『韓国旅行コネスト』より引用)

日本では試験日が近づくと、失敗を意味する「すべる」「落ちる」などの言葉は使わないように気をつける人が多いですが、韓国も同様!

そういった意識は食べ物にも表れており、家庭の食卓では「わかめスープ(ミヨックッ)」が避けられます。

届け、切なる母の思い

学修学能力試験(スヌン)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)
学修学能力試験(スヌン)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)
学修学能力試験(スヌン)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)
学修学能力試験(スヌン)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)
学修学能力試験(スヌン)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)
学修学能力試験(スヌン)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

街では応援ムードが高まる一方、受験生を一番そばで見守る親たちもじっとしてはいられません。各自が信仰する宗教に合わせ教会や寺院に行き、わが子の受験成功を祈ります。

写真入りの受験票を傍らに置き、熱心に手を合わせる姿には驚かされますが、子どもの安泰な未来を心から願う親の愛情を感じずにはいられません。

いよいよ天王山!当日は社会全体でバックアップ

学修学能力試験(スヌン)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

「修能冷え(スヌンチュウィ)」という言葉もあるほど、例年冷え込みが厳しくなることで知られる修能当日。しかし試験会場となる学校の校門前では、早朝から活気あふれる光景が見られます。 先輩の健闘を願い、後輩たちが応援に駆けつけるのです!簡単な朝食を準備して待つ後輩もいれば、ドンドンと太鼓を鳴らし大声で元気づける後輩も。「ウトウトせずに集中!」「○○高ファイティン!」などと書かれた大きなプラカードも目立ちます。

学修学能力試験(スヌン)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)
学修学能力試験(スヌン)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)
学修学能力試験(スヌン)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)
学修学能力試験(スヌン)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

受験生たちが一世一代の勝負に安心して臨めるよう、この日は韓国社会が一丸となってバックアップします。受験生が渋滞に巻き込まれないよう市内バスが増便されたり、通勤ラッシュと重ならないよう一部企業で出勤時間を1時間遅らせたりするのがその一例。

また、パトカーや白バイに乗った警察官も、この日は受験生のためのスーパーマン!遅刻しそうな受験生を発見したら、即座に会場まで送り届けてくれます。

学修学能力試験(スヌン)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)
学修学能力試験(スヌン)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

さらに、ヒアリング試験が実施される時間には、試験会場周辺のバスや列車は徐行運転、クラクションも禁止、飛行機は離着陸時間が調整されるなど、世界でも類を見ない光景が繰り広げられます。

学修学能力試験(スヌン)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)
学修学能力試験(スヌン)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

ケータイをうっかり持ち込むと失格?!

試験とは切っても切れないカンニング(不正行為)問題。発覚した場合、試験の結果はもちろん無効、翌年の受験資格も剥奪となります。

修能史上もっとも大規模な不正として知られるのが、2004年に起きた携帯電話による集団カンニング事件。この事件では374人が関与、翌年から携帯電話の持ち込みが禁止される事態となりました。

学修学能力試験(スヌン)
(画像=持ち込みOKの修能専用時計。 現在時刻の下に各科目の残り時間が表示される、『韓国旅行コネスト』より引用)
学修学能力試験(スヌン)
(画像=試験会場の教室に用意された 携帯電話の回収箱、『韓国旅行コネスト』より引用)

しかし、電子機器の発達と共に修能での不正行為は年々増加し、通話ができるイヤホンや超小型の盗聴器・無線機を手首や時計に仕込むなど、その手法も進化。管理・監督が厳格になれば、手口も巧妙化するという、いたちごっこが続いています。

修能(スヌン)の長い一日

国語、数学、英語、韓国史、探求(社会/科学/職業から選択)、第2外国語・漢文の計6領域からなる修能。試験開始は早朝8:40、途中休憩や昼休みを挟みながら17:40まで立て続けに試験は行なわれます。

学修学能力試験(スヌン)
(画像=心配そうに見守る家族、『韓国旅行コネスト』より引用)
学修学能力試験(スヌン)
(画像=以前は試験会場の前で祈る親達も、『韓国旅行コネスト』より引用)

すっかり日が暮れ辺りも暗くなった頃、長かった修能との闘いはようやく終了。校門前には家族や後輩たちが大勢待ち構え、騒然とした雰囲気です。校門を背に出てくる受験生たちの表情は、ほっとしていたり、まだ緊張がとけきっていなかったり様々なものの、その達成感は計り知れないことでしょう。

学修学能力試験(スヌン)
(画像=迎えの人たちが詰めかける、『韓国旅行コネスト』より引用)
学修学能力試験(スヌン)
(画像=お疲れさまでした!、『韓国旅行コネスト』より引用)

修能(スヌン)後のお楽しみ!受験票がゴールドチケットに

終了後、そのまま家路につく受験生もいるかと思えば、迎えに来た家族と外食に出かけたり、開放的な気分のままカラオケなどで盛り上がる受験生も。

そんな行動心理を読むように近頃は企業も「修能マーケティング」に余念がありません。遊園地や映画館、美容整形外科まで、受験票を提示すれば割引が受けられるイベントを用意し、受験生たちの労をねぎらいます。

学修学能力試験(スヌン)
(画像=束の間のストレス発散!、『韓国旅行コネスト』より引用)
学修学能力試験(スヌン)
(画像=レストランや美容院では受験生限定の割引イベントも、『韓国旅行コネスト』より引用)

ドキドキの結果は約1カ月後。高2生は早くも受験戦争に突入

学修学能力試験(スヌン)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

修能の結果発表は1カ月後。自己採点から志望校を最終決定し、休む間もなく面接や小論文など2次試験の準備に入ります。

一方、高校2年生たちは、当年度の修能が終わるや否や受験生の仲間入り。学院(ハグォン)と呼ばれる学習塾では、本格的に翌年の入試対策がスタートします。

毎年、多くの受験生が挑む修能。長い努力の成果を十分に発揮し、大学進学に向けた第一関門を無事突破できることを祈っています!

提供・韓国旅行コネスト

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