出産

韓国の出産施設

韓国で出産が可能な施設としては、大学病院、総合病院、個人病院、助産院があります。最新の医療設備を備え緊急時の対応も可能で安心感があるのは、やはり病院。施設も比較的きれいで、検診予約をした場合に確認メールがくるなどサービスも充実していますが、割高な費用がネック。大学病院や総合病院の場合は個人病院よりもさらに高額となります。医師がいなく助産師だけでお産を介助する助産院は、アットホームな雰囲気と個人の出産に対する配慮が充実している点が魅力ですが、緊急時の搬送体制が整っているかどうかを事前に確認しておく必要があります。

分娩スタイル

韓国で迎える妊娠・出産(2)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

産後の回復の速さから自然分娩を希望する人が大半の韓国。しかし帝王切開分娩率も約40%と日本(約20%)に比べると高く、しかも近年は増加傾向にあります。帝王切開というと自然分娩が困難な場合の分娩法として知られますが、痛みなど出産に対し恐怖を感じる場合に選択されることも。また、傷跡が目立たない術法が発達していること、高齢出産が増えていることも増加の背景に挙げられます。自然分娩においては、麻酔により出産時の痛みを緩和する無痛分娩が広く普及。国民健康保険の対象になっており、費用面で負担が少ないため、無痛分娩を選択する人が目立ちます。 新しい出産スタイルとしては、一部の助産院で可能な水中出産(수중출산、スジュンチュルサン)や家庭分娩(가정분만、カジョンブンマン)と呼ばれる自宅出産があり、より自然な出産を望む人たちから注目を集めていますが、まだまだ少数派なのが現状。立ち会い出産は、韓国でも日本同様すでに一般化しており、夫がへその緒を切らせてもらえる病院も多いです。

出産に伴う費用は?

妊娠から出産まで一体いくらぐらいかかるのか、というのは現実的な問題として前もって把握しておきたいところ。日本の場合、検診と出産費用のみで約60万円と大金が必要ですが、公的な補助金が充実しているのが特徴です。一方の韓国は、検診・出産費用自体は日本より安く済みますが、負担が大きいのが産後ケア。韓国では産後の養生が特に重要と考えられており、専門施設を利用する場合は高額の支出が避けられません。

韓国 内訳 日本
約100万ウォン 妊婦検診(1) 約10万円
自然分娩:約40~50万ウォン(帝王切開:約80~120万ウォン) 出産費用(2) 約45~50万円
約250万ウォン(産後調理院、2週間) 産後ケア(3) なし(自宅療養)
50万ウォン(国民幸福カード(旧コウンマムカード)) 支援金(4) 38万円(出産育児一時金)
・出産前後休暇給与(90日間・最大405万ウォン) ・出産奨励金(自治体で異なる) ※ソウル市鍾路(チョンノ)区の場合、第2子出産時50万ウォン、第3子以降は100万ウォン ・医療機関外出産時、出産費支給 ※病院・助産院以外の場所で出産時、25万ウォン支給 その他の主な支援金 ・出産手当金(給料の2/3を98日分) ・育児休業基本給付金(給料の約30%) ・育児休業者職場復帰給付金(給料の約20%) ・妊婦検診補助金(自治体で異なる)
約340~350万ウォン(約30~31万円) 産後ケア含まない場合⇒ 約90~100万ウォン(約8~9万円) 本人負担額 (1+2+3-4) 約17~22万円

出産休暇と休暇中の給与

働くママにとって気になるのが、いつからいつまで会社を休むかという休職期間と給与の問題。韓国の勤労基準法では、女性労働者の出産前後の休養および給与について、以下の通り定めています。

出産前後休暇期間 出産を前後して90日間(ただし産後の休暇は45日以上を確保し、90日間は連続して使用せねばならない)
休暇中の賃金支給 ・通常賃金は休暇スタート時の給与が基準 ・優先支援対象企業(中小企業)は90日間で最大405万ウォン、大企業は30日間で最大135万ウォンを雇用保険から支援 ※優先支援対象企業の勤務者で通常賃金が雇用保険で支援される金額より多い場合、最初の60日間については差額を事業主が支給(その後30日間は最大135万ウォンを支給)
※申請方法や提出書類についての詳細は勤務先の担当者に確認してください ※配偶者出産休暇もあり(出産日から3日間の休暇申請が可能) 不妊に悩む夫婦への支援 身体的な負担だけでなく、高額な費用から経済的な負担も大きい不妊治療。韓国でも不妊治療に臨む夫婦の割合は年々増えており、政府では一定所得水準以下の夫婦に対し助成金を支給しています。
支援内容 支援内容 ・人工受精:1回50万ウォン支援(最大3回) ・体外受精:1回当たり180万ウォン支援(最大4回) ※江南(カンナム)区は5回目まで支援(100万ウォン)
支援対象者 不妊治療に対する医師の診断書提出者 ・法的に婚姻している夫婦で、申請日現在の女性の年齢が満44歳以下 ・全国家計月平均所得が150%以下(共働き夫婦の場合、所得が少ない配偶者の所得は50%のみ合算) ※所得判別基準はホームページ(マウムトハギ政策ポータル)参照
提出書類 ・体外受精/人工受精施術支援申請書 ・不妊診断書(産婦人科・泌尿器科にて発給) ・住民登録謄本1部 ・健康保険カード コピー1部 ・直近の健康保険料納付領収証または納付確認書、給与明細書1部 ・事業者登録証明(共働き夫婦のうち自営業者の場合) ・勤労事実を証明する書類(共働き夫婦のうち学院講師やフリーランサーなど勤労所得の適用を受けない者で健康保険地域加入者の場合)
申請方法 必要書類を持参し、妻の住所地の保健所で手続き。発給された支援決定通知書を治療機関に提出し受診。

出産後

韓国で迎える妊娠・出産(2)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

韓国には古くから産後の母体をケアする「産後調理(サヌチョリ)」という文化があります。「調理」とは韓国語で「体の管理をする」という意味。以前は自宅で行なうのが一般的でしたが、核家族化が進んだり母親の両親世代が高齢化したりと時代の流れとともに難しくなってきました。そこで母親と赤ちゃんのケアを専門的に行なう施設して1990年代後半に登場したのが「産後調理院(サヌチョリウォン)」です。韓国の出産関連費用の大部分を占めるほど高額ながら充実のケア内容が魅力で、近年利用者が激増。産後調理院の数は今では産婦人科の数を超えるまでになっています。

韓国で迎える妊娠・出産(2)
(画像=赤ちゃんは新生児室で 専門スタッフが24時間管理、『韓国旅行コネスト』より引用)
韓国で迎える妊娠・出産(2)
(画像=栄養バランスの取れた食事を毎食提供、『韓国旅行コネスト』より引用)
韓国で迎える妊娠・出産(2)
(画像=お洒落なレストランを思わせる食堂、『韓国旅行コネスト』より引用)

自宅療養派には産後ケア専門のお手伝いさんも人気

韓国で迎える妊娠・出産(2)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

手厚いケアが受けられる産後調理院ですが、一方で高額な費用や赤ちゃんと一緒にいられる時間が少ないといった悩みどころも。そこで人気を集めているのが「出産トウミ(출산도움이、チュルサントウミ)」と呼ばれる産後ケア専門のお手伝いさんです。

韓国で迎える妊娠・出産(2)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

自宅まで来たり、あるいは泊り込みで、掃除や洗濯などの家事、食事作り、赤ちゃんの世話を行なってくれます。費用は2週間で約70~80万ウォン(約6万~7万円)と比較的リーズナブル。住み慣れた自宅で赤ちゃんをそばで見守りながら回復に専念できる点が魅力です。

産後の養生食ナンバーワン!わかめスープ 韓国で出産後によく食べるものといえば、何といってもわかめスープ。ミネラル豊富なわかめには失った栄養を補給し、血液をきれいにする作用があると言われ、出産直後の母親たちの食事に欠かせないものとされています。 出産祝いとしてわかめを贈る習慣があるほか、スーパーで市販されているわかめのパッケージには「産母用」と書かれているものも。韓国では誕生日の朝にわかめスープを食べる習慣がありますが、出産と縁の深い食べ物であるということから来ています。

名づけ

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(画像=街角でよく見かける作名院、『韓国旅行コネスト』より引用)

家族がつける場合と、作名所(チャンミョンソ)または作名院(チャンミョンウォン)と呼ばれる名づけ機関に依頼する場合があります。家族の場合は赤ちゃんの両親はもちろん、一家の長である祖父がつけることが多く、伝統を重視する家系では兄弟やいとこ間で同じ字を用いる「トルリムチャ(回し字)」を考慮して名づけられます。作名所に依頼する場合の費用は5~10万ウォンが相場。四柱推命を元に3つほど名前の候補が提示され、その中から気に入ったものを選択します。 韓国にも漢字が存在するため、名前にも漢字が用いられるのが一般的ですが、最近は「ハヌル(空)」や「ピンナ(光る)」など、漢字を持たず響きや意味の良いハングルで名前を付けるのが流行です。日韓夫婦の場合は、両国で使いやすい名前(漢字・読み方ともに同じ/漢字は同じで読み方が日韓で異なる)を選択する傾向があります。

韓国で人気の名前ランキング(2013年)

性別 女の子 男の子
1位 수현(スヒョン) 지훈(ジフン)
2位 다희(ダヒ) 성민(ソンミン)
3位 지아(ジア) 은성(ウンソン)
4位 소민(ソミン) 명훈(ミョンフン)
5位 다솜(ダソム) 현우(ヒョヌ)

各種お祝いの儀式

日本文化における赤ちゃんにまつわる行事としては、一生食べる物に困らないことを祈願して行なわれる「お食い初め」が有名ですが、韓国にも生後の成長を祝う様々なイベントがあります。

韓国で迎える妊娠・出産(2)
(画像=ペクソルギ、『韓国旅行コネスト』より引用)

100日目のお祝い(ペギルチャンチ) 家族一同が集まって行なわれる100日のお祝い。そこに欠かせないのが、ペクソルギという白い餅です。昔から、純粋・純潔の意味が込められたペクソルギを100人と分け合って食べれば子どもが長生きすると言われ、以前は隣家や親戚などに餅が配られていました。

餅をのせた皿は洗わず、長寿を意味する糸やお金をのせて返したそう。ペギルチャンチに際して餅を配る習慣は大分少なくなりましたが、現在も地域や家系によっては行なわれています。

韓国で迎える妊娠・出産(2)
(画像=大勢の人がつめかける、『韓国旅行コネスト』より引用)

1歳の誕生日(トルチャンチ) トルチャンチは赤ちゃんが生まれて初めて迎える誕生日として、盛大に祝われます。レストランやホールを貸し切り、家族はもちろん友人・知人をたくさん招いてパーティー形式で開かれることも。日本の初誕生日に行なわれる「選び取り」とよく似た「トルジャビ」をメインイベントに、健やかな成長を願って和やかな宴が行なわれます。

積極的な情報集めとストレス発散でハッピーなお産を!

韓国で迎える妊娠・出産(2)
(画像=big_124509.jpg)

少子化に歯止めをかけるべく、2012年にはコウンマムカード(2015年5月より国民幸福カードに名称変更)の支援額引き上げが行なわれたり、保健所の無料サポートが充実したりと妊娠・出産に関する様々な施策が強化されつつある韓国。内外国人問わず利用できる制度が多いので積極的に情報収集して上手に活用できると良いですね。

妊娠中から出産、そして出産後のイベントまで、慣れない海外での病院通いやお産に伴う心配、そして文化の違いによるカルチャーショック…と、ストレスも少なくないと思いますが、抱え込まないのが一番!コネストの総合掲示板コミュニティで妊娠中の在韓ママ友を見つけたり、気になること・困っていることを尋ねてみるのも方法です。

提供・韓国旅行コネスト

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