新型コロナウイルス感染拡大により、通勤型の勤務から在宅勤務を含めたテレワークの導入が急速に進みました。
東京都が調査した「テレワーク導入率調査」(2021年1月発表)によると、東京都内の企業のうち、テレワーク導入率は57.1%。テレワークを実施した社員は平均約5割と、東京都内の会社に勤める人の半数以上がテレワークを経験していることになります。
自宅で仕事ができることで、通勤がなくなり楽になったと感じる人もいれば、テレワークになってストレスが増えたという人や、なんとなく不調を感じているという人も少なくありません。
今回は、テレワークになってから、なんとなくずっと調子が悪い、気分がしずみがちなまま……という状況の時、積極的に取りたい対策について、キャリアカウンセラー・水野順子先生に「テレワークうつ」について伺いました。
これってもしかして「テレワークうつ」?
結婚や出産、進学や転勤、子供の独立など、環境が変わるとき、人はストレスを感じるものです。
大抵の場合はその変化に慣れてきて、ストレスを感じにくくなるものですが、一方でなかなか新しい環境に馴染めなかったり、環境変化に疲れがたまってしまい心身の不調が続くことがあります。
環境が変化した直後であれば、緊張していたり、対応にかかりきりになっているので、まだストレスや疲れを感じにくい状態です。
変化が少し落ち着いて、ほっとした頃に、それまでに溜まった疲れや過剰なストレスが原因で調子を崩すこともあります。
テレワークが導入されたばかりの頃は「とにかく早くテレワークでも仕事ができるようにしなくては!」と夢中で頑張っていた人も、テレワーク生活に慣れてきた頃から、なんだか調子がいまいちになってきた……ということはないですか?
もしかしたら体や心の不調が起きているかもしれません。
•テレワークで起こりがちな不調のサイン
テレワークなどの生活の変化によって起こる不調の出方はさまざまです。
たとえば、
・ずっと疲れが取れない、仕事や家事をする気力がわかない、といった疲労感の問題
・なかなか眠れなくなった、寝ても疲れが取れなくなっった、といった睡眠の問題
・食欲がわかない、もしくは食べすぎてしまう、といった食事に関する問題
・人と話をすることが億劫になった、服を選ぶのが億劫になった、という気力の問題
・理由なく涙が出てしまう、気持ちがずっと沈みがち、といった感情面の問題
などが挙げられます。
これらがずっと続いていてなかなか改善しない…という場合には、意識して、対策をとっていく必要があります。
テレワーク不調時に取りたい5つの対策
では、どのような対策をとっていったら良いでしょうか。すぐにでも生活に取り入れやすい5つの方法をご紹介します。
•オンオフを明確にする
通勤していた頃は <会社では仕事/家はプライベート> と、明確にオン・オフを切り分けることができていました。
自宅で仕事ができるということは、通勤の時間や、遅刻するかもしれないという不安、満員電車に乗らなければいけないなどのストレスがなくなるという良さがある反面、仕事とプライベートの切り替えがなかなかできません。
そのため、頭の中で、ここは仕事場なのか?休む場所なのか?と混乱してしまうという点があります。
本来リラックスする場所である家が仕事をする場所になったことで、常に緊張が続くこともあるでしょう。
これまで会社にいるときは家のことを忘れて仕事に集中できていたけれど、自宅では家のことも気になりながら仕事をしたりしていませんか?
たとえば、家族のご飯の事を考えたり、朝時間がなくて洗い残してしまったお皿や洗濯物のことが頭をよぎったり……
職場であれば「仕方ない!」とあきらめられたことも、自宅という仕事と家庭が混在した環境であることが頭を混乱させてしまう原因となります。
だからこそ、意識してオンオフを切り替えることがテレワークの不調対策には必要です。
•場所を分けよう
そのためには、まず場所を明確に分けること。
家の間取りや家族構成などで難しい面もあるかもしれませんが、仕事をする場所と生活をする場所を分けることで、オン・オフの切り替えがしやすくなり、頭が混乱してしまうことを防げます。
仕事用に別の部屋を用意するのはなかなか難しいかもしれませんが、仕事時に使う机や椅子を別に用意するなど、仕事のための場所を作ったりしてみてはいかがでしょうか。
もしどうしても普段使いの机や椅子で仕事をしなくてはならないという場合でも、オン・オフの切り替えスイッチが入るように、仕事時は机の上にはパソコン以外は置かないようにしたりしてみましょう。
大切なのは、意識して仕事時と普段の環境を変えることです。
•時間を決めよう
また、時間を決めてしっかりと仕事をする、休みを取ることも大切です。
自宅が仕事場になると、いつからが仕事でいつからがプライベートか、曖昧になってしまいがちです。
だからこそ、仕事の時間は仕事に集中して、休憩時間は仕事を忘れるようにしていきましょう。
•体を動かすようにする
テレワークになったことで通勤のために電車に乗ったり歩いたりしていた普段の運動が、全くなくなったという人も多いと思います。
その結果、運動不足に陥って、それが不調の原因の一つになることもあります。
自宅仕事で椅子から立ち上がる機会が減るぶん、意識して運動をすることでテレワーク不調を改善することも大切です。
スマートフォンの歩数計などを活用して、多めに歩くことを生活に取り入れましょう。
オン・オフの切り替えも兼ねて、お昼休みには散歩に行ったり、朝に通勤代わりの散歩やジョギング、サイクリングなどを取り入れてみるのもおすすめです。
•他人と会話する
テレワークだけでなく、感染拡大防止のために人と会うことが一気に減った、という人も多いのではないでしょうか。
職場であれば「お昼何食べる?」「お菓子貰ったんだけど食べる?」といったなにげない会話でもコミュニケーションをとりますが、在宅ではそういった雑談もなくなってしまいがち。
職場の苦手な人と話さなくよくなってストレスが減ったということもあるかもしれませんが、やはり人と全然話さない生活が続くと、気持ちを発散することがなかなかできなくなったり、気分が沈みがちになってきます。
リアルで会うことは難しい状況でもありますが、オンラインを活用したりして、お互いの顔を見て話すことで、毎日の生活に刺激を入れるようにしましょう。
•ゆっくりとお風呂に入る
家で仕事をすることになって、パソコンに向き合う時間が増えた人も多いと思います。
また、プライベートでも、外出が減ったぶんスマホを見る時間が増えていて、目を酷使している生活が続いていませんか?
ずっとパソコンやスマホを見続けていると、同じ姿勢でずっといることで血行が悪くなっていたり、目が乾燥していたりと、体や目のコリが溜まっている可能性もあります。
目の疲れは肩・首などさまざまなところに不調が出やすくなります。
テレワーク時こそ、ゆっくりとお風呂につかって、スマホやパソコンを手放す時間を長めにもち、目や体のコリをほぐしましょう。
•起床・就寝時間を一定にする
毎日ずっとテレワークではなく、週に何日か出社日がある、という働き方の人もいると思います。
テレワークの時は朝はゆっくり寝ていて、出社日は早起きをする、という生活をしていませんか?
起床時間や就寝時間を日によって変えていると、生活リズムも崩れてしまいやすくなり、睡眠不足にもなりやすくなります。
起床と就寝の時間はできるだけ一定にすること、できれば休日も同様にすることで、体の調子を整えるようにしましょう。
テレワークだからこその報・連・相
在宅勤務になってから「仕事について」焦りや不安を感じるときはどんな時でしょうか。たとえば、
・集中力が持続しない
・自分の仕事を評価してもらえているか不安でたまらない
・出社日が多い同僚と情報格差がある気がする
・周りから自分の仕事がどう見られているのか気になる
・優先順位付けが正しいのかわかりにくくストレスが溜まる
・メールやチャットの対応件数が増え、時間がかかってしまい本来の仕事が進まず焦っている
・システムの操作方法や仕事の進め方がわからないが誰に聞けばいいかわからない
など、仕事内容やフロー、チーム体制などによっても悩みはさまざまなところにあると思います。
•早め早めに相談を
これらの不安や心配は、頭に浮かんだ時点で早めに上司や同僚に相談してみましょう。
もし、上司や同僚に話しづらい場合は、話しやすいと思える人に聞いてもらうだけでも良いと思います。もしかしたら、あなただけではなく、他の人も同じような不安や心配を抱えているかもしれません。
また、職場とは違い、顔や様子が見えないぶん、上司や同僚に相談するタイミングが計りづらいものです。
毎朝朝礼を行ったり、定期的にミーティングをしたり、顔を合わせて話す時間をつくっておくと、相談も切り出しやすくなります。もし可能であれば、5分~10分でも、雑談のための時間をオンライン上で設けることも効果的です。
•出勤時より少し細かい報告を
顔が見えなかったり、主なコミュニケーション方法がメールやSNS、チャットなど文章ベースになると、上司や同僚からも仕事の進捗や様子が見えにくくなります。
ここまで細かく報告しなくてもいいかな?と思うくらい、出社時よりも少し細かめに、仕事の経緯や現状を報告しておくことをおすすめします。
まとめ
働き方も生活様式も急激に変化していることに加えて、感染への不安や外出がままならない状況など、ストレスが溜まりやすい状況があります。
だからこそ、意識して心身の調子を整えることが、これまで以上に必要です。
なんとなく調子が悪いなと感じた時は、しっかりと睡眠を取ったり、リラックスする時間を取ったり、人と話してリフレッシュすることを、意図的にやっていきましょう。
もし、それでもなかなか気持ちが沈んだままであったり、何をする気にもならない状況が続いたりした時は、一人で頑張りすぎずに、医師に相談したり専門家の判断を仰ぐようにしてください。
これからはテレワークという働き方が当たり前になっていきます。
職場であれば、誰かが不調に気づいて手を差し伸べてくれることもありますが、自宅で心や体の不調に気づけるのは自分だけです。
テレワークでも自分の力を発揮できるように、そしてよりライフワークバランスをうまくとって時間が有効に活用できるようになるためにも、意識して心身の調子を自分で整えるようにしていきましょう。
今回お話ししてくれたのは…
水野 順子(みずの じゅんこ)/キャリアカウンセラー
キャリアコレクション代表。官公庁、企業人事、人材紹介会社勤務を経て、キャリアカウンセラーとして独立。こころとキャリアの専門家として、女性のキャリアデザイン、ダイバーシティ、女性の働き方を中心に幅広く活動中。著書にキャリアエッセイ『責めない しがみつかない 投げ出さない 自分らしい人生を受け入れ、楽しむ女性になるための48のコツ』、セルフケアエッセイ『3分で感情をリセットする心の整理手帳』。
得意分野は
女性のライフキャリアデザイン/働く人のメンタルヘルス/働きやすい組織づくり/ダイバーシティ/女性活躍推進
提供・しゅふJOBナビ
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